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【コミカライズ連載開始記念SS】コジマさんの朝(ディミトリと出会う前)

いよいよ「コジマさん」のコミカライズがはじまりました!


 私の名前は『コジマさん』。

 本当の名前はもちろん他にあるけど、日々私のことをまともに呼んでくれる唯一の方が『コジマさん』と呼ぶので、もうこれが私の本名のようなものだ。


「おはよう、コジマさん! 今日も早起きだね!」


 それが、こちらのキール坊ちゃん。

 亡き私の最愛のひと、ヴァタル様の優しい面影を残した少年は、このアスラン家の唯一の良心といっても違いないだろう。ちゃんと朝の七時すぎに部屋から出てくるとても良い子である。


 そんな方に、私はわざわざ言わないわ。

 私は朝の四時半には起床している、だなんて。


「おはようございます、キール坊ちゃん。朝食の用意ももうじき終わりますので、顔を洗ってきてください」

「はーい!」


 そして、私はスープを温めなおす。

 当然、朝食などすべてできあがっている。今朝焼いたパンはまだあたたかい。


 キール坊ちゃんが戻ってきたタイミングで、あたかも今できましたと言わんばかりに朝食を並べる。このくらいの気遣い、家政婦ならば当然だ。


「わぁ、今日もおいしそう! コジマさんいつもありがとう!」


 この笑顔のためならば、私はいくらでも働ける。

 さて、私は坊ちゃんの食事の最中に、洗濯物を片づけちゃいましょう……と、庭に向かおうとしたときだ。 


 チリンチリンとベルの音が聞こえる。

 ……これは、奥様ね。人見知りは勝手だけど、もう少し外に出ないとお体に触るわ。食が細いから太ることはないにしろ、もう少し陽の光には浴びてほしい。きっとヴァタル様やお義父様も、そう思っているはず。


 だけど、私の言葉が奥様に届くはずがない。

 だって……私は彼女の大切な息子を汚した女なのだから。


「……はい、ただいま」


 誰に聞こえるわけでないのに、私は罪悪感をこぼして部屋に向かう。

 すると、起きたばかりの奥様はまだぼんやりと大きなくまの人形を抱えていた。

 亡き夫の代わりに、彼女が肌身離さずもっているくまの大きな人形。これが幼女ならかわいいのだけど、若く見えるとはいえ四十に近い女性がずっと抱っこはどうなのかしら?


 と、毎日思わないでもないけれど、そんな個人の趣向は関係ない。

 ただ私の役目は、彼女のいいたいことに気が付くだけ。


「朝のお茶とフルーツをお持ちしたあとで、お風呂にいれておきますね?」


 すると、彼女がこくりと頷く。

 お風呂というのは、人形の修繕のことだ。中のわたを入れ替え、汚れを洗濯、ほつれている箇所は補修。すべてをひっくるめた作業のことを『お風呂』と呼んであげている。めんどくさいなどともう思わない。そんな物言いひとつで癇癪を起さずに済むなら簡単だもの。


 ともあれ、私が再びフルーツを剥くためにキッチンへ戻ると、なんとキール坊ちゃんが自分で食器を洗っているではないか。いい子過ぎる。当然、奥様のフルーツを包丁のゴエモンで切るついでに、ぼっちゃんにもリンゴの飾り切りを贈呈した。伝説の不死鳥を模したものを作ったら「食べられないよ!」と怒られてしまったけれど、まあいいかと私は奥様のもとへお茶と普通に盛り付けた果物を運ぶ。


「さて、次の仕事は……」


 この屋敷の住人は三人である。

 まあ表向きの主人である男が起きる時間はまだまだ先なので、ひとまずペットの世話が優先か。


 といっても、適当に飛んでいる野鳥をゴエモンを投げて撃ち落とし、再びゴエモンで皮だけ剥いてやればいいだけなので、一分もかからない。用意が終わってから口笛を吹いて、部屋を箒のブルーム・ヤザワで三部屋ほど掃除しているあいだにイヌが「わふーん」と到着。あそんでやるついでに鳥をばびゅーんと投げたら、残る部屋の掃除をちゃちゃっと済ませましょう。


 そんなこんなを四十部屋ほど箒で掃除し終えた頃、ようやく主人が起きてくる。


「キサマ、オレを起こさないとは職務怠慢だぞ!」

「それはそれは。大変申し訳ございません」

「本当に悪いと思っているのか!?」


 ……思っているはずがないじゃない。

 こんなバカの相手をしながら、私は今日のスケジュールを組み直す。

 

 そろそろくまさん用の綿を新調したほうがいいはず。だから今日はイヌの散歩のついでに綿花をとりにいかなくては……最近は体調もいいようだし、坊ちゃんを連れていってもいいかも?


 そこまでぼんやり考えていたところで、ようやくバカの喚き声がひと段落。「ではコーヒーを淹れてきますね」と再び台所へと戻る。


 すると、フルーツも食べ終えた坊ちゃんが、今度は自分の薬を自分で煎じていた。

 こないだ教えたばかりだから、まだ手つきが危なっかしい。だけど、今も屋敷のどこかで「ああああ、寝ぐせがなおらーん!」と叫んでいる兄に比べたら、なんていいこなのだろうか。


 そんな感じで、私は腰を落ち着ける暇もなく、今日も働きつづける。

 ……こんな日常はいつまで続くのかしら?



【コミカライズ連載開始記念SS】コジマさんの朝(ディミトリと出会う前) 完

本日2026.7.1より、本作のコミカライズがはじまりました!


挿絵(By みてみん)


漫画は 霧崎秀征 先生 が描いてくださっています。


なんと、男性用として作ってもらっているので……

この画像のとおり、OPPAIが大変麗しく……(笑)

きれいな曲線美も、ほんさくの新しい魅力になったのではないかと思っています!


あとコミカライズを制作していくうえで、ゴエモンやサエコさん以外にもコジマさんの道具に名前が付きました。なのでSSに無理やりねじ込んでみました。


私からはそのくらいかな?

ブックライブやきら星ポータルというサイトで読めるので、ぜひ覗いてみてくださいね!


きら星ポータル

https://kirapo.jp/meteor/titles/kozimasan



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