地獄?あと変な人!
この人生に結論づけるとするならば、自分が見えないまま適当に生きた私が、周りが見えなくなりヒステリックになってしまった母に殺された。という単純明快な短文、もっと短く出来そうだがこのぐらいの薄っぺらいものとして幕を閉じた。
家庭環境で外れくじを引いたんだね、と言われたなら「まあ、そう」と頷きはするだろう。
全肯定はしない。
刺した母が最もあくどい人物であり司法に裁かれるべきなのは銃も承知だ。殺された娘としても無期懲役になって臭い飯を食べ続ける人生を送ってもらえたら心の荷物が少なくて済む。
しかしこれは結果論であって娘として適切な関係を築けなかった罪の意識も実はある。
何をしてもやりたいことがなかった私は人生の暇つぶしにやりたくもない母の仕事を尊敬したふりをして手伝い続けてでもしたのだから、最初の数日は良くても「やってあげている」という雰囲気が出てしまったのだろう。
不適切な表現かもしれないが、本来ならば親と子という既存の主従関係のはずが、母の手伝いをしてあげた私と、手伝いをされている母という悲しき逆転が起こってしまったが故の惨禍だろう。
描いている理想と現実のプレッシャーにただでさえ追いやられている母にとって、上記の理由が追撃となったのだろう。
「いつまでやんのオマエ」
チッ、と耳障りな舌打ちと共に聞こえた気怠そうな声。
顔を上げると180ほどの長身が似合わぬ童顔で睨みをきかせている男がいた。
やはり身長が高いと横暴な性格になるのだろうか。
「気持ち悪ぃ偏見をブツブツブツブツ並べてんじゃねぇよ。どうせ完璧にも慣れないくせにいっちょ前にカンペキシュギ?ってやつ気取りやがって」
「昔からの癖なんです。仕方ないでしょ」
思考を読み取れるのだろうか。それとも顔に出ていたのかもしれない。
もはや学校や家のように自身を取り繕う理由なんてないのだから。
「オマエが殺された理由、教えてあげようか?」
「はぁ」
淀みなく彼は言葉を続ける。
「安心しろや。散々オマエが悪いと思っているみたいだけど、そんなことぁない、うん。ない」
散々といほど思っては無いけれど多少たりとも自己反省はしていたつもりだ。反省したところで次に生かせる機会などないので無意味な話だが。
それよりなぜ思考がわかった?
「しょうがねえんだ、オマエは普通の人間とは違って大きく欠けているトコがある。それも生きる上ではヒツヨウフカケツ? なことだ」
常に思考の先を読むのが得意らしい彼は、無邪気だが気味の悪い笑みを浮かべ問いただしてくる。
誰かが作った問いは解くことがあっても自分に問いただされることなど、ほぼないと思っていたので驚きだ。しかも初対面にオマエオマエと断定してくる彼が。
「なんですか、趣味がないとか。感性が他人とズレてるとか、そんな感じでしょ」
ぶっきらぼうな返答に、彼は目を細めると深底つまらなそうな顔でこちらを見る。
理不尽が究極化した彼をどこか遠くへやってくれ。
「今まで生きていて気付かなかったのかよ、もっと根本的なことだよ」
彼は甲高く笑ったかと思うと突然目をギョロリと大きく見開いた。
「オマエはなぁ」
「ーー感情が一切ないロボット人間なんだよ」
なんだそんなことか。
すんなりと今の言葉を肯定できた自分こそが、彼の理論の正しさを後押しした。
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