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還暦前の挑戦!
蓉子は、約40年ぶりにプールに行った。
”昔も泳げたんだから、泳げるに決まってる”と、高を括っていたのが大間違いだった。
平泳ぎというよりは、カエル泳ぎに近い、自分の泳ぎ。
「でも、全然泳げないよりはマシだと思うわ。」
40年前と言うのは、実に高校三年の夏だ。
今は、58歳。
せめて10年前にしておけばよかったと、後悔してももう遅かった。
”水中で呼吸するって、こんなに難しかったっけ?”
ただただ、顔を上げながら、カエル泳ぎをしている自分にいささか幻滅した。
肺も老化しているに違いない。
ふと、そんな思いが過った。
クロールが出来ない。
実は、最近になって五十肩を病んだ。
それで、水泳をしたら少しは好くなるんじゃなかろうかと思ったことが、水泳再開のきっかけだ。
老体に鞭打ってしなければならないのだろうか。
「そんな、楽しくないのって嫌だわ!」
蓉子は、出来るだけ、楽しい気持ちで水泳がしたかった。