1-2 狩人のホーク
あ、ブックマークと評価ついている
え? (二度見)
ありがとうございます!
ホーク・カラはシーザスの防壁内に住む平民の人間の男である。幼馴染と結婚しており、夫婦の間には一人の男の子がいる。
決して稼ぎが多い訳ではないが、金欠になることはなく家族は幸せに暮らしている。妻とは結婚してから暫く時間が経っているが、その熱が冷める気配はない。子どもに向ける愛情も強く、所謂親バカと呼ばれる程だ。
そんな彼の日常は馬に跨り、平野の魔獣を狩る毎日。彼の職業は魔物を狩る狩人である。複数人で魔獣を追い詰め仕掛けに誘導し、掛かった魔獣は食用などとして売っている。
狩猟手段が確立されてから危険は少なくなったとは言え、相手は魔獣。僅かな隙や油断でも有れば狩人の方が魔獣に喰われてしまう。だが、ホークは班長としてこの数年一人も怪我人を出すことなく、狩人協会の中でもトップクラスの実績を持っている。
そんな彼だからこそ、狩人協会から特別な任務が言い渡された。
「スラム街の地下遺跡の探索ですか」
普段通り狩りを終え、愛する家族の元へ帰ろうとするホークを会長が呼び止めた。内容は地下遺跡の調査である。
「そうだ、2日前大きな揺れがあったのは知っているか?」
2日前の揺れとはティフェニが怪物と遭遇し、その怪物が地下遺跡を破壊しながらティフェニを追いかけた時の揺れである。かなり深い層で暴れたとはいえ、地上には大きな揺れとなって伝わっていた。
死者以外に、怪物が現れたことを知っているのはティフェニのみ。会長とホークが話している時に、まだティフェニは地下遺跡を彷徨っている。仮に地上に戻ってきたとしても、誰もスラム暮らしの亜人の話など聞かない。
「ええ、あの揺れのせいで折角捉えた魔獣が脱走しましたから」
「それは災難だったな。その揺れのことなんだが、地下遺跡の崩落が原因と言われている。その確認と調査をして欲しいと領主様からのご依頼だ」
地下遺跡の管理はこの町を治める領主の所有物となっている。その為、勝手に入れないように殆どの入り口は封鎖されている。万が一の為に1箇所。高価な遺物回収に為に1箇所。かつて遺物回収に使われ、殆ど取れなくなったがスラムの住民の稼ぎのために1箇所開けている。
「なるほど……となるとスラムの入り口か、予備の入り口の何方かでしょうか?」
「察しが良いな。今回はスラムの方だ。予備の入り口は別の組織に任せているようだ。稼ぎ口はいつも通りのようだ」
この町の産業は農業と狩猟、そして遺物回収である。
スラムの入り口から入れる範囲に高価な遺物は残っていないが、別の入り口から入ると浅層でも残っている。一度に取りすぎないように開放する場所を一つだけ決め、遺物が取れなくなったら別の入り口から入るようにする。
町として行なっている遺物回収には魔物が襲ってこないように3人の魔法使いを雇い、魔物避けを発動することで安全に回収を行っている。全世界的に貴重な魔法使いであり、長時間魔法を発動出来る優れた人材を3人も雇える程、この町の遺物回収は稼げる。
そのことから、この入り口は稼ぎ口と呼ばれている。
前述の通り魔法使いがいる為、稼ぎ口の調査は直ぐ出来るが他の入り口に割ける程ではない。なので、魔獣を狩ることができり狩猟協会に声がかかったのだ。
「俺たちの力を信用して頂き、非常に嬉しい話なのですが、俺たちは馬を使って追い詰める手段が得意でして、剣を使って殺すのは不向きなのですが」
ホークは地下遺跡の環境と自分達の班の狩猟手段などから話を断ろうとする。
「だがな、ホークの班以外も剣を使った狩猟はもうやっていない。ホークと同じく誘導したり、トラップを仕掛けたりと。剣での戦い方を知っているホークの班だから声をかけたのだ」
断ったホークだったが、会長の言葉から他に任せられる班がいるか考える。会長の言うとおり、これだと言える班がいない。ホーク達は止めを刺す時や緊急事には剣を使う。全くダメという訳ではない。
「話は分かりました。遺跡の魔獣は地上に比べて弱いとは言え、慣れない環境です。班員にも伝えるので出発は2日待っていただけないでしょうか?」
「2日なら問題ない。ちなみに報酬はこの通りだ」
「おお、これは」
領主のサイン付きの依頼書には破格の報酬が書かれていた。班のメンバーはホークを含めて四人。協会への納付金を考慮しても稼ぎの良い依頼だ。
ホークは帰るのを待ってくれていた班員達に声をかけ、3日後にスラムの遺跡に入ると伝える。最初は反対意見も出たが報酬を見せると、掌を返し依頼を受けることに賛同した。
翌日から食量などの調達をする為、狩りを一時休止することを決めホークは帰路についた。依頼達成の報酬のことが考え気分が良いホークは、道中で亜人の物乞いを見かける。
狸の特徴を持つ亜人の目の前に、持っていた小銭を一枚だけ落とす。狸の亜人は何度も礼を言いその小銭に手を伸ばし。
「人間様のお金に触れるんじゃねえ!」
ホークは勢いよく狸の亜人を蹴り飛ばした。一度だけでなく、複数回蹴りを入れる。
「良い仕事が入って上機嫌だったんだよ! なんで人間様の町に化け物が入っているんだ!」
ホークの暴行を止める者はいない。それどころか近くで遊んでいた人間の子ども達も加わって暴行する。
「お、どうした? 化け物に何かされたか?」
「お母さんが、亜人は怖いって言っていた。だからやっつける」
「亜人って化け物なんでしょ。だから倒さないと」
「その通りだ」
ホークは子ども達に蹴り方や殴り方、弱点などを教え、お手本として何度も暴力を振るった。
その後、残されたのは骨が折れ血溜まりを作る亜人の姿だった。
「おかえりなさい、あなた。その血はどうしたの?」
「化け物を倒した時に。全く汚らわしい。人間の町に何故化け物が住む?」
「ふふふ、お疲れね。じゃあ今日はたっぷり癒やしてあげるから」
「パパ、お帰り!」
ホークは幸せである。愛する家族と平和な日常を過ごし、狩人協会ではベテランとして尊敬されている。そしてこの日々が永遠に続くと信じて疑わない。
だが、それもとある亜人に出会うまでの話。
後に、『猫耳の魔法使い』と呼ばれる猫人に会うまでの話だった。
ヒナの復讐相手は物語の最後の方、ティフェニの家族にザマァァァァァァァァァア
とする為にはティフェニの力がまだ足りないので先に方です。