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結 契約成立

渓谷から這い上がってきた怪物はティフェニその目に捉えると腕を大きく振るう。


『左手を前に出して!』


「にゃぁあ!」


『魔力回路割譲、参式防衛結界!』


外部からあの魔力が入り込み、左手を通じて魔法となり現れる。それは巨大な魔法陣だった。その魔法陣はヒビが入ったが怪物の攻撃を防ぐ。


「防げたにゃ!」


「なななななぜぜぜぜ!」


『私の魔力をティフェニを通じて魔法に変換しているの。つまり、魔力さえあればティフェニも出来るよ』


アピールを忘れないヒナであった。


『わざわざ長期戦する必要はないよ! 次、右手を前に出して!』


指示された通りティフェニが右手を前に出す。防衛結界を張った時よりも膨大な魔力がティフェニの体に注ぎ込まれ、右手を通っていく。


『魔力回路割譲、対怪魔法: ヒガンバナ!』


まるでヒガンバナの花のように魔力弾が複数発射され、怪物へと殺到する。魔力弾一つ一つは1mほどの大きさがあり、怪物の体を抉った。


「これも出来るようになるのかにゃ?」


『頑張ればね。さあ止めよ! 右手を天に掲げて、私が指を鳴らしたら振り下ろして!』


再び右手を魔力が通っていく。怪物はダメージが大きのか動こうとしても力が入っていない。


『完封勝利よ! 重力系統弐式: 流れ星!』


ヒナがパチンと指を鳴らし、ティフェニが手を振り下ろす。すると渓谷の上から巨大な魔力弾が高速で落下してきて、怪物を押しつぶしていく。


やがて、怪物の防御力を上回ったのか怪物の胴を貫通し底へと消えていった。


「しししししぬぬぬ……見事」


怪物はそう言い残し、体は崩壊する。分子レベルまで崩れ、何も残らなかった。


「倒したの……にゃ?」


『ええ、私の魔力を使ったとはいえ貴方が倒したの。そして今の戦いは貴方の未来を示したの』


ヒナがクルクルと踊り浮きながら魔法陣をいくつも出す。


『ティフェニは魔法適性が高いわ。今まで千を越える数の魔法使いを見てきたけど、適正でいったら上位5名に入るわ!さっきは及第点だと思ったけど、優秀な相手よ!』


それは喜びの舞なのか、扇情的な格好で踊っているのかまるで色街でパフォーマンスする人にも見える。だがティフェニは今自分の手から出た魔法に驚きと喜びで一杯で気にもしていなかった。


「あれが出来るように」


『そう! そうなれば魔法使いとしての地位が確立され、社会的にも物理的にも復讐を遂げることが出来る! しかも魔法使いだから名声も手に入れるのも容易になるわ!』


ズズズッズとティフェニに詰め寄ると再び契約を持ちかける。


『さあ、私と契約して。貴方は魔法使いになり、私とティフェニの復讐を果たす。そして私からお礼を貰う。こんなに良い取引なんてないでしょ』


ヒナはこのまま契約できると思った。今も魔法の素晴らしさに震え、自分が魔法使いなることを夢見るティフェニは契約するだろうと。


だけど、そう簡単にはいかなかった。


「それほどの力があっても復讐出来なかったと言う事は、相手はもっと強いのかにゃ? ここに封印したのもその相手にゃ?」


一転、冷静に戻りヒナの復讐相手を考える。怪物を容易に倒すことが出来る力を持ったヒナでさえ敵わなかった相手。それを相手にするということ。


一瞬で冷静に戻ったティフェニに、ヒナは驚きつつも怖がったり、怒ったりしなかった。むしろ思考の切り替えが出来る相手だと、尚更契約したくなった。


『その通り。だからそれ相応の力を手に入れる必要があるの。勿論、その道は示すし貴方が壊れないように全力でサポートする。私がお願いしているからね。でも……貴方が断るメリットとデメリットを比べてみて』


ヒナはティフェニの格好をじっくり観察する。


『見た目からしてスラム暮らし、日々を生きる為に魔物と命のやりとり。いつ終わりが来るか分からない暮らし。ずっと苦しい思いをし続ける。だけど魔法使いになる道に進めば、その道中で暮らしの質は向上し、苦しい思いをしなくて済むようになる。失うもののないスラム暮らしが、わざわざ断るメリットはある?』


「ないにゃ」


ティフェニは一考して即座に答えを出す。その顔は何処か吹っ切れたような感じだ。ここから一歩踏み出す覚悟を決めたような表情だった。


その顔にヒナは満足し、部屋の中央へと誘う。ヒナ自身が封印されている魔法回路、それを壊すことで封印は解かれ、自由に動くことが出来る。


『道は示す。だからティフェニは進み続けること』


「分かったにゃ。先導、お願いするにゃ」


ティフェニが拳で叩き割ると、ヒナの体が一瞬光る。封印が解けたことによる反応だろう。


『きたきた、久しぶりねこの感じは』


嬉しそうに空中を飛び回るヒナ、それを見てティフェニは少なくとも自分に危害を加える悪霊ではなさそうだと判断した。


『じゃあ行きましょうか』


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