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オ・レンアイ  作者: 迫る騎士シカマル
2/2

イデア佐々木

隣にいるから。

いつも話してるから。

それじゃあ、私は君の思いに気付かない。


藤田:

イデア界における佐々木は、俺のことを好きだけと中々言い出せない恋する乙女なわけ。


大河原:

はい。


藤田:

きっかけとしては、俺と席が隣になったこと。最初のうちは休み時間に話をするだけの関係性だったけど、ある日彼女は俺に恋してることを自覚するわけ。で、それからというもの、好意を伝えるべく色々策を練るんだけど、優しいがゆえに他の人に時間が割かれてしまう。そんなこんなで再び席替えの日を迎えるに至る。


大河原:

はあ。


藤田:

藤田のことを好きになったのはいつだっただろう。


大河原:

おお、どうした。


藤田:

いや、佐々木の気持ちを代弁してるのだが。


大河原:

無駄に女声がうまいのが鼻につくわ。……続けてくれ。


藤田:

いつからだったのかな。うーん、最初からと言われればそうだし、先週からでも納得できるしな。でも、好きであるこの気持ちは変わらないからいいや。明日は席替えか。いつもは楽しみだったのに、今回は憂鬱だな。藤田、私のことどう思ってんだろ、告白なんて考えるだけで緊張してできそうもないし。もう、寝る。


大河原:

席替え前日の夜なわけね。


藤田:

そうそう。で、次の日。


いつもと変わらない席。でも、今日で最後になる席。今日ぐらい早く来てくれたっていいじゃん。


ガラガラ、


「おい、佐々木、宿題写さしてくれ」


「ええ、宿題って、数学のプリントでしょ。1時限目なのに間に合うの」


「頑張ればどうにかなる」


「頑張ればって。まあ、協力はするけどさ。ほら、プリント」


「サンキュー」


全く、好きという感情は恐ろしい。今も私を必要としてくれた、って舞い上がってる。うん、いつも楽しそうに話してくれるところもいいけど、こうして真剣な表情をしてるところもかっこよくて良いな。ま、写してるだけなんだけど。


ジー、


「な、なんだよ。気が散るからやめてくれよ」


「あっ、そう、だね。ごめん」


あー、見すぎだよ私。顔赤くなってないよね。急に目を合わせてくるなんて反則だよ。


「ほい、終わったぜ」


ここで、手と手が触れる。


「あ、ご、ごめん」


「何が?とりあえずよかったわ。これで今日も平穏な生活へと戻れる」


何よ、藤田のやつ。こっちは手が触れてドキドキだってのに我関せずな態度は。ちょっとくらい動揺してくれたっていいじゃん。


と佐々木が考えているとも知らずに、俺は俺で気を紛らせるわけ。こっちからすれば、好きなんだけど相手はみんなに優しい人。だからこうやって宿題を見せてくれることも優しさであり、手と手が触れあっても勘違いするだけ損だと言い聞かせてる。そんななんとも言えない距離感を保ちつつ、席替えの時間を迎えるわけだ。


大河原:

いよいよ本題だな。


藤田:

番号の書かれた紙が入れられた箱を順番に取っていく。


藤田の番号は12番だから、えーと、私は18番を引けばまた隣の席になれる。


「また隣になれたらいいね」


私の本心はただそれだけ。別に藤田が好きになってくれるなんて今は思ってない。でも、少しでも隣にいたい。休み時間に他愛もない話をするだけでいい。


「そうだな」


ち、違う。これは現状維持がいいねって趣旨の発言だ。だけど、少し期待してしまう自分がいる。ねえ、どうして私とまた隣になりたいの。それが聞ければ全てわかるのに。可能性を残したいという弱い心に今回も負ける。


佐々木の番までくじが回ってきました。


18番、18番、18番、18番、お願い18番。


席替え終了。見事に全く正反対の方向へと移動する結果に。意気消沈する佐々木。


もう帰ろう。そうだよ、藤田と隣になれる確率なんてめちゃ低いんだもん。なれないのが当たり前。当たり前なんだけど。あーあ、休み時間に隣同士でしゃべることも、宿題を見せてあげることもできなくなるのか。


さあ、そこに、俺の登場ですわ。


大河原:

おお。


藤田:

「待てよ、佐々木」


「何よ」


期待するな、私。


「席、別々になったな」


「うん」


「なんというか、その、もっと話したいなって思って」


「それって、どういう」


「俺は佐々木のことが好きなんだ。席が離れたから話せなくなるのはやだって思ってる。だから、隣になるの期待してた」


「なんなの、ほんと」


「そうだよな、いきなりこんなこと言われても」


「私だけだと思ってたから隠してきたのに。……好き。あんたより私の方が好きなんだから」


ここで、両者は見つめ、赤面する。


「そんな顔見せてくれなかったじゃん」


「佐々木ってさ、誰にでも優しくしてるからきっと勘違いなんだろうと思って。表情に出さないようにしてた」


「バカ」


で、後日談。他の人が席を変えて欲しいとかなんとかで二人は再び隣の席同士になる。


「いやー、まさかこうなるとはね。変わったのをすぐ伝えてくれれば焦って告白しなかったのに」


「ふーん、そういうこと言うんだ。じゃあ、宿題見せてやんない」


「あ、それはだめ」


「やーだ」


「まじかよ」


「えっへへ」


好きな人が私のことを好きで、隣の席にいる。今はその幸せに酔いしれたい。


~fin~


大河原:

そんな佐々木は、現実だとお前のことは眼中にない彼氏持ちと。


藤田:

まあ、そもそも俺は宿題忘れたことないから、優しくされることもないわ。

席替えで納得したことないわ。

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