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オ・レンアイ  作者: 迫る騎士シカマル
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優しい女を信用するな!

君が好きって言ってくれないから、誰にでも優しくする。

君が好きって言ってくれないから、たまに他の男子とおしゃべりする。

君が好きって言ってくれないから、授業中にちょっかいを出す。


私から好きって言うほど優しくはないんだから。




藤田:

どうやら、俺は佐々木のことが好きらしい。


大河原:

またかよ。


藤田:

いいだろ、別に。恋はいくら芽生えてもいいもんだろ。なにか?桜はもう咲かなくていいのか。秋に山々が紅葉しなくていいのか。


大河原:

芽生えることはあっても咲いたことはないだろ。


藤田:

これから咲くんだよ。


大河原:

だったら早く咲かせればいいだろ。お前の桜やら紅葉やらを見せてくれよ。


藤田:

そうしたいところは山々だが、今回に限っては負け試合だ。


大河原:

佐々木だっけ。どうして負け試合になるんだよ。そんなに可愛いのか。


藤田:

いや。


大河原:

頭いいかスポーツができるかのどっちかか。


藤田:

いや


大河原:

じゃあ、なんだよ。


藤田:

分かってないな大河原よ。いいか、佐々木は俺に話しかけてくるんだぞ。クラスで男子以外の人間とは話すことのほとんどない俺とだ。他の女子との会話量を「1」とすると、佐々木との会話量は「30」を優に超す。


大河原:

それは、佐々木がお前と積極的に話したいんじゃねーの。完全に脈ありだろ。


藤田:

いいか、よく聞け


大河原:

なんだよ、聞いてるだろ。


藤田:

いや、ここからが重要なポイントだ。佐々木は俺以外の男ともめちゃくちゃしゃべるんだ。要は誰にでも優しい女ということだ。


大河原:

ふーん、誰にでも優しいからお前にもお恵みくださるってわけか。


藤田:

そうだ。俺は知ってる。誰にでも優しい女は、期待だけさせる初見殺しだ。


大河原:

ひどい言われようだな。善意で話しかけてくれてるのに。


藤田:

中学生の時でした。


大河原:

どうしたんだよ.


藤田:

優しい女と席が隣同士になりました。うれしかったです。だって、休み時間に談笑することが日課になるほどでしたから。だから私は告白を決意しました。実行日は席替えをしたその日。告白するセリフは「席が変わっても一緒に話していたい」です。放課後の下駄箱で二人きりになりました。勇気をだして告白をしました。そうしたら彼女からこう返されました。「ごめんね、今私、部活と勉強で手一杯だから。本当、ごめんなさい」


大河原:

そこまで彼女悪かったか?


藤田:

その一週間後、彼女はめでたくイケメンと付き合い始めました。


大河原:

あらあら。


藤田:

はああぁぁぁ!?ふざけんじゃねーよ男たらしがよ。勘違いしちゃう状況を演出すんなっての。脈がないなら、ないなりの素振りを見せろっての。たまに詫びるように俺の席まで来て話しかけてくるしよー。忘れたわ、お前との楽しい会話の展開。はいはい、イケメンの彼氏と楽しく昼食でもとればいいんじゃないですか。お互いのを食べさせ合って、あ、これって、間接キスだねって楽しめばいいんちゃいますか。どっちも同じメニューの給食ですけどね。


大河原:

よく、中学校時代の女に怒れるな。


藤田:

これから一生彼女に会うことはないからね。いくらでも言えちゃう。うん、僕は言える。


大河原:

で、その苦い経験があるから同類の佐々木も無理と。


藤田:

そうだろ。俺、藤田さんって呼ばれてんだぞ。バスケ部の上林にはタケルって名前の呼び捨てだぞ。ニヤニヤしながら教室で会話しやがってよ。お前らに遠慮しなくてはいけない人間の気持ちも考えろよ。


大河原:

なんだよ、佐々木と上林、付き合ってんじゃん。


藤田:

付き合ってないんだよ、それが。あくまで仲の良い友達を演じてるわけよ。なんなんまじで。付き合ってはいません、好きあってます、てか?早く付き合ってくれねーかな。1パーセントを期待しちゃうじゃん。


大河原:

そんなに悩むならもう恋愛するのやめちゃいなよ。お前にとって恋愛ってなんだよ。


藤田:

え、ただのゲームだが。


大河原:

本当にやめちまえよ。


藤田:

大河原の言う恋愛と俺の恋愛はそもそもの基準が違うから。


大河原:

どういうことだよ。


藤田:

付き合うまでは好きなんだけど、いざ付き合うと面倒になるんだよね。


大河原:

なにそのちゃんとしたゴミ発言は。


藤田:

いやいや、よく考えてみろよ。付き合うまでは、一緒に帰ることにドキドキ。ちょっと話すたびにドキドキ。目が合うだけでドキドキ。そんな愉快な日々なんですよ。で、も、でもね、付き合った瞬間にまあ煩わしいことが増える増える。週末は家でゴロゴロしたいのにどこかしらへデートに行かなくちゃいけないでしょ。しかも、支払い、男もちでしょ。それから、記念日だか何だかでプレゼント買わなくちゃいけないし。LINEは夜に一回確認するじゃ絶対に足りなくなるし。そこまで俺のプライベートに侵食してこないでって言いたくなるわけよ。


大河原:

それが恋の醍醐味なのでは。


藤田:

そんなわけないじゃないですか。僕が見たいのは彼女の笑ってたり怒ったりとかとか、自分だけが独占することなわけ。ドキドキした表情を見たいなら女漫読みますわ。で、誰にでも優しい女の場合恐ろしい事実が最近発覚したのよ。あいつらってこっちから何か仕掛けなくても全部の感情を見せてくれるの。


大河原:

本当かよ。


藤田:

まずは、よく笑うだろ。で、恥も外聞もなくキレます。そして、行事が終わったりしたらよく泣きます。照れる表情なんて日常茶飯ですよ。


大河原:

めちゃくちゃ見てんじゃん。きも。


藤田:

きもい奴しか恋愛はしないんだよ。毎日、あっちから「ちょっと話があるんだけど」的な言葉を期待してるわけ。さも自分が物語の主人公であるかのような自己中心主義に陥るわけなの。わかるかいこの気持ち。この気持ちはなんだろー♪。この気持ちはなんだろー♪。


大河原:

結局、佐々木への恋心も諦めるってことだな。


藤田:

いやいや。もう付き合ってる。


大河原:

何言ってんすか。のろけ話を始めるにはいささか長い能書きだったけど。


藤田:

ん?現実じゃないよ。イデア界だよ。


大河原:

あの、本当に何言ってんの。


下手な優しさが一番むごいことを知る、高校2年の秋。

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