名前を覚えた
【カイザーエイプ】を倒し、邪魔するものがいなくなったのに、久しぶりの人との交流は言葉が通じないってハードルがあった。
ついていくことを上手く伝えられずにいたら、ローブさんに、着替えるようにとマントとタオルを渡された。
これって、そういうことだと思って良いんだよね。
三人から離れて毛皮を全部脱ぐと、急いで体をふいて素早くマントをきる。
ないとは思ったけど、良かった、待っててくれている。
あっというまに汚れたタオルと脱いだ毛皮を抱えて、三人のもとへと戻った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「「「(((………)))」」」
三人のもとへと戻ると、こっちを見て三人が固まった。
これからどうすれば良いのかな?
「あの?」
「(まさか、毛皮の中からこんな子が出てくるとは)」
「(だな、びっくりしたぜ……あの耳はエルフだよな)」
「(そうね、でもこの島にエルフはいなかったはずですけど)」
「(ここに置いていくわけにもいかんだろう、とりあえず連れて帰ろう)」
三人がフリーズから復帰した、しゃべりながらも手は止めないで荷物をまとめていく。
汚れたタオルと毛皮を背負い袋の中にいれると、軽装さんが持ってくれる。
「(フリルが先頭で頼む、ミラとこの子が真ん中、最後が私だ)」
鎧さんが手まねきをしたのでついていくと、軽装さん、ローブさん、最後が鎧さんの陣形で移動するようだ。
黙々と歩くこと2時間、森を抜けて少ししたら岩だらけの場所があり、岩を越えたら海が見えた。
「(アリス様、お疲れ様です)」
「(あぁ、戻るので船を出してください)」
船の周りにいた人の方へとよっていった、どうやら船に乗るようだ。
予想通りに船に乗り込み、部屋へと荷物を放りこむとすぐに船が動き出した。
「(半日は船の中だから、少し我慢してくれ)」
鎧さんが何かをいっていたけど、雰囲気から察するに部屋から出るなってことかな?
ベッドを指さしていたので、横になる
「ふかふかとはいかないけど、今までにくらべたら全然良いよ」
久しぶりのベッドということもあり、マーヤはすぐに眠りへと落ちていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ユサユサ
…………
……
「ふぁ……」
「(おっ、起きたみたいだな)」
気づくと鎧さんの背中にいた、船の旅は思いの外早く終わったようだ。
慌てて背中から飛び降りる。
「(ようやく、起きたか)」
「(後少しで街につくので、頑張ってください)」
軽装さんが頭を撫でてから鎧さんの隣へ、ローブさんも頭を撫でてから手を繋いでくれた。
街道なのか、それほど警戒してる雰囲気はなかった。
「(言葉はわかんなくても、これから教えていけば良いんだろ?……エルフなのに喋れないってのも変だけど)」
「(確かに……だが私たちだって依頼で街を離れることもあるのに誰が面倒を見るんだ?)」
「(だからって教会にあずけるのはよぉ……)」
前を歩く2人が会話をしながら歩いていて、かなりうらやましい……言葉が通じれば楽しくおしゃべりしたい。
「(ん?、何ですか?)」
「フルフル」
ローブさんを見上げながら歩いてたら、気づいてくれたけど何でもないと首を振っておいた。
こういうやりとりだけでも嬉しいものだ。
図書館とか文字を教えてくれる場所を探さないとね。
「(まずは、名前から教えましょうか……わたしの名前はミ・ラ・ー・ニャ、ミラで良いですわ)」
「ミ・ラ・ー・ニャ?……ミラ!!」
今度はローブさんがじっと見つめてきた、胸元を指差してから良い聞かせるように同じ単語を繰り返して言葉を教えてくれた。
わかります、これはローブさんの名前ですね。
合っているか慎重にミラーニャの名前を呼ぶと笑顔になった、ミラーニャの美人度がアップした。
愛称のようなものまで教えてもらった。
「(ずりぃぞ、ミラ)」
「(あなたも教えれば良いでしょう?……やはり、賢い子ですよ)」
ミラとわたしの様子に気づいた軽装さんがやってきて、ミラといれかわった。
この流れは、今度は軽装さんの名前を教えてくれるってことかな?、気合いをいれて覚えようと集中する。
「(フ・リ・ル……名前はフリルだぞ)」
「フリル?」
「(おぉ、そうだ、フリルだ)」
「フリル、フリル!!」
軽装さんはフリルというのか、覚えた。
「(コイツ、可愛いな)」
「(そろそろ良いか、今度は私だ)」
フリルと鎧さんがいれかわった。
「(私の名前も覚えてくれよ、ア・リ・ス……アリスだ)」
「アリス?」
「(あぁ、合ってるぞ、アリスだ)」
三人の名前を覚えた、忘れないように名前を呼びながら歩くと、マーヤを見てニッコリと微笑んでくれた。
そうして歩いていたら目の前に大きな壁が見えてきた、どうやら街についたようだ、やっとここまできたよ。