異変
ヨミ平原でダンジョンから溢れたレッドボアの討伐が始まった。
ヨミ平原の南東側、ミスト王国、商業都市アランに被害が出ないように冒険者や貴族の私設傭兵や兵団がヨミ平原でレッドボアの群れを迎え討つことになった。
討伐は順調に進み地平を埋め尽くす程のレッドボアは3分の1くらい減らしたところで商業都市アランとは別の方向に反れていった。
追撃はかけずにレッドボアの素材の回収などをして初日は終わった。
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レッドボア狩りが始まってから4日目、地平線を埋め尽くす程にいたレッドボアの群れはすっかり減って、ようやく終わりが見えてきた。
溢れるのを抑えるためにおおもとのダンジョン内で狩りをして、後から後から湧いて出る状態を止めた効果がやっと出たって感じ。
レッドボアがあまり強くないモンスターだから出来ることだろうけど、これが数年に1度起きるってんだから、どうにかした方がいいんじゃないかと思わないでもない。
1体だけなら駆け出しや連携確認に倒しやすいモンスターなのと食材として見てる部分もあるから、利用したいのだろうけどね、閑話休題。
処理の終わったレッドボアは物資を運んで来た馬車と入れ替えて、すでにオービル商会へと送っている。
みんなはまだ寝ていて、朝食を作っていると匂いにつられて起きだすのがいつもの流れ。
送られてきた物資の中からビッグバードの卵を割るとスープ用とスクランブルエッグ用にわけた。
土魔法使いに頼んで作ってもらった竈に火を入れてフライパン代わりの鉄のお盆を温めておく。
スクランブルエッグとパン、オニオンスープと野草を使った簡単なサラダが出来上がる頃にはみんな起きてきた。
周りのパーティーが物欲しそうにしていたが気づかないフリしてご飯を済ませる。
今回の討伐でレッドボアの肉が大量に出回るので少しは値下がりとかするんだろうか?
夕食用に少し使わせてもらったが高級食材と言われてるだけあって、ほっぺたが落ちそうになるくらい美味しかったので、値段が下がる用なら自分用に少し確保したい、後でオービルさんに交渉してみよう。
「大変だー」
今日の討伐ヘ向けて準備をしていると、冒険者が慌ててかけてきた。
何事かと人が集まって、かけてきた男の話を聞くと上位種の炎を纏った特殊なボアが出たようで、左翼の部隊は潰走させられたらしい。
「左翼を潰した特殊個体は中央本隊の横っ腹に穴を空けるように突っ込んで来て、このままじゃあ全滅もあるから急いで救援に向かってくれ」
「特殊個体の他には?」
「取り巻きにランページボアが3、ヒュージボアが10以上はいた」
「そんな!?」
「俺は降りるぞ」
「何言ってるんだ、ヤツが街に向かったらどれだけ被害が出ると思ってるんだ」
今までの稼ぎで、無理に参加しなくても良いと逃げ出す冒険者が少しいて、混乱している場から離れてシン達の元へと戻った。
「何があったんですか?」
「なんか特殊個体が出たらしい、取り巻きにランページボアとかヒュージボアとかいるらしい」
ランページボアは上位種ボアで燃えさかる毛皮に大きく反り返った二本の牙が特徴。
ヒュージボアはさらに大きい体格のボアで2階建てぐらいの大きさがある。
「今のラキアなら、相手が格上でもいけると思うけど、どうする?」
「下の者が戦っているのに貴族である私が逃げるわけにはいかないですよね、一応聞いてるけどマーヤの中じゃ確定じゃないのか」
「うん、美味そうじゃない?」
飽食の日本人としては、異世界の料理はもの足りないので、料理スキルが上がって来てるので色々再現して食べるのが楽しみ。
「そう言われると、気になりますね」
「お肉、美味しいの?」
「きっと美味しいよ」
ミリアとシンがこっち側についたので救援に行くのは確定した、がっくりと肩を落としたラキア。
「盾職の戦い方はちゃんと教えたし、実践出来てるから大丈夫だよ」
他のパーティーを見て気づいたけど、この世界の盾職はとても少なかった、パーティーを支える盾職の地位が非常に低いとも言える。
高い防御スキルによって、パーティーを支える存在の盾職が火力不足の鈍足お荷物って認識なので、パーティー枠を潰してまで入れるなんてってのが普通らしい。
しっかりとした盾職に敵わない、中途半端な片手剣が主流。
荷物をまとめ終わったので、オービル商会へと戻る馬車に詰め込んだ後はわたし達は本隊への救援へと急ぐのだった。




