もう一つの武器
あけましておめでとうございます
営業再開初日の【満開亭】は大繁盛していた。
売上げもかつてないほどだったらしく、メロディー親子も喜んでいた。
【満開亭】では三の鐘から四の鐘までの4時間営業が稼ぎのメインで夜の部である五の鐘以降は開店休業みたいな感じで客はほとんど来ないらしい。
宿についている酒場から出て【満開亭】まで来ようって人がいないので仕方ない。
オービル商会の従業員がたまに利用してくれるぐらいで、むしろオービル商会の従業員のために開いているようなものだった。
しかし昼間出した、マヨネーズの噂を聞いたのか夜の部の【満開亭】にも客が来ていた。
エールやワインよりもサラダの売れいきが良いのがマヨネーズ狙いだと言っているようなものだった。
「メロディー、そろそろアレの宣伝をして」
「わかりました」
マヨネーズと野菜ばかり減っても仕方ないので、お酒も出すと聞いていて用意していたものを出すことにした。
テーブルの1つにメロディーとシンが料理を並べると席に着いた。
「シンちゃん、お疲れ様……今日はもうあがっていいから賄いでも食べて」
「ありがとうございます、オーナー」
少しわざとらしい感じもしたがメロディーが皿の上の物をシンに勧め、シンがビッグバードの唐揚げにマヨネーズをつけて頬張った。
「熱、外はサクサクなのに中はジュワーッとしていて、こんなのはじめてですぅ」
幼女が唐揚げに、幸せそうな顔で蕩けてるのをみて店内がざわついた。
唇の端から唐揚げの汁が少し垂れたのを舐めとる仕草も恍惚とした表情のせいか艶めかしい。
生唾を飲み込む音が聞こえ、少し前かがみの青年や何人か前傾姿勢で動かないひとでしずまりかえる店内。
「失礼、お嬢さんがた……それは売り物なのかね?」
「えぇ……そうですよ、エールに良く合いますよ」
「それじゃあ一皿もらおうか」
やがて勇気を出して近づいたおじさんにメロディーが対応して引っ込むと唐揚げの皿をおじさんに持っていった。
すぐにアレをくれコールがおこり唐揚げが恐ろしいスピードではけていく。
「本当だ、エールにすごく合うぞ」
「唐揚げ食べる、ジュワーッとしたところでエールをグイッといく……たまらん」
「この白いソースが合うなぁ」
「ソースなしでもイケるぞ、肉の味がわかる……なんの肉だがわからんが、この旨さは魔物の肉だろう」
あっという間に唐揚げが完売、夜の部のメインウェポンである唐揚げのデビューとしては上々のすべり出しだった。
個人的には唐揚げには味噌とマヨネーズをブレンドした物を使いたいが味噌が見つかってないから断念。
そんなことを言っていたら、メロディーからエルフの街にはエルフ豆ってものがあって味噌みたいなものがあるという情報を得た。
エルフなのに知らないんですか?と不思議がられたけど、適当にごまかしておいた。
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そんなこんなで【満開亭】の売上げは飛躍的に伸びた。
唐揚げデビューから10日たち、オービルさんが手配してくれた教会の神官に魔法で治してもらいメロディー父の怪我も良くなったので依頼は終了した。
シン達は全員うちでも働いてくれることになっているが、まだ店はないので当分【満開亭】で働くことになっている。
ブラウン商会は“炎槍”が隠蓑に作った商会で“炎槍”が捕まったことでオーナーがいなくなった状態、加えて今回の【満開亭】への嫌がらせやオービル商会や他の商会へのちょっかいが明るみに出ておとりつぶしとなった。
もともと三流の品を割高で売っていたので評判は悪かった。
オービルさんに、ちょっかいをかけてくる商会がなくなったことですごく感謝をして、わたしの店を急ピッチで作ってくれた。
二月かけてお店が完成。
名前:マーヤ 25歳 女
種族:エルフ
職業:料理人 レベル4
ランク:D、商人ランクC
所持ポイント:2
スキル:魔力小アップ、料理魔法、《鑑定眼》、《経験値倍》、《言語解析》、《再設定》、《メニュー》




