夜襲
この世界のスープに不満があったから、野菜の旨味を逃がさないようにスープを作ったら絶賛されてしまった。
ちょうど材料が揃っていたので、自分が飲む分を作りおきしようと思っていたのに全部飲まれてしまい結局残らなかった、トホホだよ。
名前:マーヤ 25歳 女
種族:エルフ
職業:見習い料理人 レベル2
ランク:D
所持ポイント:1
スキル:魔力小アップ、料理魔法、《鑑定眼》、《言語解析》、《再設定》、《メニュー》
片付けを済ませた後にステータスの確認をしていたら、いつの間にか料理人のレベルが上がっていた。
「あれだけ作ったのに1しか上がらないってことは、レベルを上げるのは凄く大変なのかな?」
他の人を鑑定してみたら、一般人で年齢より村人レベルが高い人はいなかった。
アルカディアオンラインでいう一次職の人で年齢より少し高い人が数人みたかどうか、二次職の人はいまだに見ていない。
マリアがダンジョンでは成長しやすいって言っていたから、ダンジョンが近いところでは二次職を見かけるかもしれない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ステータスを確認していたがいつの間にか寝ていたようだ。
休んでいた体を起こしてもそもそと寝袋から出て伸びをした時に外の様子が少しおかしいことに気づいた。
「そろそろ見張りの交代だと思って起きたけど、何かあった?」
つぶやいた後に慎重にテントの外に出ると目の前に何かが飛んできたので咄嗟に弾くと、キーンっと甲高い音を立てて投げナイフが落ちた。
「危なかった」
「チッ!!」
ナイフを投げたらしい人物が舌打ちをして身を翻して逃げていった。
合流する方が先と辺りを見渡して、剣戟の音がする方へとかけていった。
すぐに明るい場所を見つけた、横倒しになった馬車が数台燃えているようで、近くには人のような燃えてる場所もあった。
既に炭化してしまい黒くなっているところもあり、かなり被害が出ているようだ。
「さっきまで、料理が美味しいって言ってくれてた人もいたのに」
もう動くことはなくなってしまった。
ハントとグラドが2人がかりで戦いを挑んでる相手が炎槍なのだろう。
名前:ロードベルク 45歳 ♂
種族:狼人族
職業:凶賊 レベル12
ランク:A
スキル:素早さ大アップ、素早さ中アップ、《金剛》、《獣化》、《強奪》、《鍵開け》、《罠察知》、《罠解除》、《罠設置》
Aランク!?
凶賊ってのも聞いたことはないから、この世界特有の職業か上位職だと思う。
罠系のスキルはシーフかな、《獣化》を使っているから顔が狼なのだろう。
名称:炎槍ホムラ
攻撃:1300
魔力:600
伝導率:A
能力:《炎槍》、《火球》、《切れ味上昇》、《保護》
持っている槍もかなり良いもので、ハントが使ってる武器は300、ヴォルガノフが使ってる大剣で500ぐらいだったはず。
「ハント!!避けろっ」
「遅い……《螺旋風》……《三途渡し》」
「なっ!?、ぐあぁ~」
時たま槍から出る炎がただでさえ避けにくい槍に緩急をつけ、急な軌道変更を可能にしているようで、つい紙一重で避けて反撃しようとしたグラドを炎で軌道の変わった槍で胴に横殴りの一撃が決まった。
離れたところにいたヴォルガノフの方へと飛ばされながら警告の声を発したが、グラドを飛ばした勢いで槍がハントの方へと向かった。
バーニアのように噴出する炎で加速すると石突きで地面を叩くと振動が広がる、それに気をとられたわけではないだろうが、4方向からの変幻自在な槍さばきがハントを襲った。
槍に貫かれて吹き飛ぶハントを急いで追いかけると、まだ息をしていたので、回復量の高い魔法薬を急いで使う。
顔色が良くなったのを見届けて、命の危機を脱したのを確信してから、グラドの方に向かおうとしたらロードベルクと目があった。
「エルフ……だと」
「マーヤ、逃げろ」
「少し幼く見えるが、見た目通りの年齢じゃないんだろう?……エルフは高値で売れるからな」
まとわりつくような嫌らしい目で全身を見てきた、ロードベルクを睨み返した。
「エルフが手に入るなら、そっちの女どもはいらないな……お前ら好きにして良いぞ」
ロードベルクの言葉に、ヤツの部下の士気が上がった。
厄介そうなのは投げナイフで襲ってきた人と、馬車から荷物を奪ってる連中が人質を取り前面に押し出して来るかどうかってところだろう。
「グラド、ハントと2人で向こうを頼んで良い」
「マーヤ?……まさか」
「ロードベルクはわたしがやるわ」
もうじき目を覚ますであろうハントと2人で絶賛略奪中の連中を止めてもらう。
あっちもなんとかしないといけないって思ってたらしく、少し迷ったが了承してくれて、ハントを起こしに下がってくれた。




