やっちゃった?
商業都市アランまでもう少しってところで盗賊団の襲撃があったが護衛メンバーの敵ではなく、アッサリと返り討ちにした。
襲撃は軽く、本命の“炎槍”はいなかったから、まだ油断は出来ない。
「さすがは“炎槍”というのかな、盗賊にしてはいい装備だ」
「本当だ、ミスリルの剣なんか盗賊にはもったいないな」
「この杖、あたしの使ってるのより良いんだけど」
盗賊の装備は良いものも混ざっていたようで回収しながらメンバーが喜んでいた、ちょっとした臨時収入に浮かれていた。
「喜ぶのは良いけど、大木をどかすのが先だ」
後に通る人の邪魔になるから迂回するって選択肢はないようで、ハントが魔法使いに声をかけて大木へと連れて行った。
「わたしも魔法使えるけど」
「マーヤは“炎槍”に備えて温存したいから休んでてくれ」
「了解」
ハント達が大木をどかしてる間に、盗賊の生き残りを縛ったりしていた。
傷の深い者には抵抗されないくらいで回復を施した。
生死は問わないらしいが犯罪奴隷として賞金の上乗せが見込めるらしい、この世界は奴隷文化があるようだ。
「もうすぐ終わるから準備してくれ」
のんびりと休憩していたら、ハントが報告にきた。
思ったより時間をとられたようだ、商隊としてはもう少し進んでおきたいようで明日の昼にはアランにつける位置まで行くことになった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「今日はここまでにしましょう、もう大丈夫です」
「わかりました」
大木をどかし終えたらすぐに移動を開始した商隊が満足したらしく街道をそれた。
こうした野営に適した場所は何ヵ所かあり、既に先客がいたので被らないように野営の準備を始めた。
「ここを使っているとは珍しいですね、それに……」
「なんかあったの?」
先に共同の野営所を使っていた人に挨拶にいった、オービルさんが首を捻っていた。
「ここは基本的にアランの閉門に間に合わなかった人が使う場所なんですよ、よほどのことがない限り、あと2つ先の野営所を使うはずなんですが」
「そうなのか?」
「はい、アランから出た商隊が野営するには中途半端です……それに名前を聞いたことない商会でした」
「ふむ、護衛はしっかりしていたな……大きいところじゃないのか?」
「間違いなく大手ではないですよ、最近出来たにしても何かありそうです」
「警戒だけはしておこう」
オービルさんとグラドとハントが何か打ち合わせをしてる間にわたしは夕飯作り。
簡単に野菜を洗うとざっくりと切って、切れ端などを鍋で煮る、灰汁をとりながらバルーンパウダーで臭みをとった肉を用意して一気に焼いていった。
料理スキルで作った天然酵母を作って焼いたパンを並べていく。
20分ほど煮た鍋の中身を大鍋の方へ粗い布で濾して、野菜と腸詰め肉等を入れてさらに煮込めば簡易コンソメスープの完成。
「……」
「大丈夫ですよ」
手伝ってくれたオービル商会の人が変な顔をしているが、この世界のスープは野菜をくたくたになるまで煮たあとにゆでこぼすので旨味が逃げてまったくない、調味料でごまかしてもあまりおいしくないのだ。
油で揚げる料理や蒸す料理もみないので、そういう料理法は広がっていないのだろう。
「なんだこれ……うめぇ」
「野営でこんな豪華な食事にありつけるとは」
「!?」
「マーヤさん、これ売り物にしませんか?」
「パンもやらけー!!」
夕飯は好評だった。
マーヤも食べてみるが、うまく出来ていて満足だ。
「マーヤさん、アランで店を出しませんか?」
「店?」
「これだけの料理の腕があるんですから、料理屋を出せば売れますよ」
「うーん」
「ダメなら調理法だけでも、我が家の料理長に伝授していただきたい……もちろん、お金も払います……そうですね金貨3枚でどうでしょう!?」
「「「!?」」」
オービルさんはぐいぐい来るね、余程気にいったのだろう。
広がってない調理法にポンと金貨を出せるんだから、しかも商売に使えると見抜いた。
金貨3枚なら3万ミストってことだ、大人1人が1の月に使うのがだいたい金貨2枚、節約して金貨1枚になる。
「スープやパンも旨かったが肉も凄いぞ」
「これってビッグバードだろう、不味くて食えたもんじゃないのに」
「この味を知ったら携帯食じゃダメになるな」
「やはりマーヤさんに販売してもらうべきでしょう……皆さんも説得してください」
「!?」
夕食を食べていたらいつの間にかみんなの視線を一身に受けていた、まだこっちを見ていなかったメンバーも何か話をしていたのに一斉にこっちをみるんだもん、思わず後ずさってしまったよ。
話を聞くと、どうにか店を出してくれって話だった。
料理を振る舞ったのは失敗だったかな?と少し反省。
みんなに料理を作って経験値が入ったのかレベルがあがってたからよしとしよう。




