ダンジョン
マーヤは言葉を覚えた、教会、掃除。
教会のお手伝いの依頼を受けて、到着した時にちょうど良いと配膳の仕事を頼まれた。
午後の作業は朝に清めた部分以外の清掃ということで、トイレ清掃をすることにした。
重曹らしきアイテムを見つけたので試しているなか、魔法を使って掃除していた子供達を見かけて目からウロコだった。
魔法がある世界なんだから掃除に応用するって考えがとっさに思いつかなかったよ。
宗教で良く聞く、掃除をすることで魂まで綺麗になるという精神的な意味はないんだろうね、異世界でもあるのかと思っていたよ。
「(なんだ、おまえ)」
「(何見てんだ)」
「(あたし、お昼ごはんよそってもらったから知ってる)」
「(あぁ、いたな)」
子供達に見つかって、なんか言われてる。
ごはんって単語は聞こえたからお腹すいたのかな?
育ち盛りの子供達にはあの量じゃ足りないのかもしれないね。
「(おい、待て)」
「……」
逃走に失敗、回りこまれてしまった。
「(ここにいるってことは掃除してたんだろ?もう終ったのか?)」
掃除って単語は聞こえたのでトイレを指差して、移動すると子供達がついてきた。
シスターどこ?助けて欲しい。
「(なんだこれ?)」
「ダメ、掃除」
反応させるために置いていた襤褸布を動かそうとした子供を止める。
やってることに興味を持ったのか、一応布は動かさないでいてくれた。
「これなら良い」
最初の方のがそろそろ良い感じだと思うので、どかして掃除をすると見違えるほど綺麗になった。
次々と襤褸布を剥がしてから掃除をしていく……一部がまだ、汚れたまんまなので、バルーンパウダーで落とせない汚れみたいだ、おそらくアルカリ系の汚れなのだろうね。
「お酢、ある?」
お酢があるかジェスチャーして伝えると上手く伝わったのか、お酢らしきものをもってきてくれた。
子供にお礼を言って、残った汚れに振りかけてから掃除に入る。
「(お酢で汚れ落ちるの?)」
「(なんかの魔法?)」
「(すごーい)」
スライムトイレ回りの掃除を終らせると、依頼は完了だったのでサインをもらって教会をあとにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
教会での依頼をこなした次の日、ギルドに行くと呼び出しをうけた。
どうやらガウの森での調査結果の報告等をしてくれるようだ。
通訳代わりのマリアを伴いギルド長室に入ると最後だったらしく、一度視線が集中したあとは皆ギルド長の方に戻った。
「(全員、揃ったな……では始めよう、結論から言うとガウの森に【ダンジョン】が住み着いたようだ)」
ギルドマスターの説明では、ガウの森に出た謎の赤黒いモンスターは【ダンジョン】が餌寄せの為に用意したモンスターらしい。
鑑定の魔道具で名前が判明したのが【ラットリーパー】、【キラーラビット】、【ブラッディスライム】、どれも強さが合わない変異種らしい。
「(ガウの森を捜索して、【ダンジョン】の入口は見つけたのでドワーフ達を連れて囲いは作ったけど、またモンスターを外に出されては面倒だ……今後は定期的に入って間引いて欲しい)」
「(【ダンジョン】の難易度は?)」
「(1階層にはキラーラビットが出てきた、これは通常種だったからおそらくはD、進んでみないとわからんがCだとは思っていてくれ)」
【ダンジョン】は生き物らしく、餌である魔力を集めるらしい。
集めた魔力で成長していくので早めに討伐しないといけないようだ。
魔力が集まらないと赤黒い変異種を外にだして存在をアピールするようで、強い変異種を相手に一般人に被害を出すよりかは探索に【ダンジョン】に入った方が良いってことになる。
「生まれたばかりの【ダンジョン】なら30階層までしかないだろうから、成長する前に討伐してもらいたい」
【ダンジョン】は莫大な利益を生む可能性もあるが、管理の出来る大都市限定で【ミスト】としては既に大規模ダンジョンを3つ抱えているので、これ以上の【ダンジョン】は邪魔でしかないようだ。
ギルドマスターの部屋から早急に【ダンジョン】攻略の準備へととりかかるパーティーとともに外に出ようとして待ったが
かかった。
「(たぶん、お前の実力だとBランクでも問題ないんだろうけど、いきなりだと知らない連中が絡んでくるだろうからEランクにあげておく手続きしてくれ)」
「まだ規定回数の依頼をこなしてないのに良いの?」
「(変異種3体を相手に出来るヤツがFランクとか詐欺も良いところだからな、新人の仕事を奪われちゃかなわん)」
「アハハハ……」
「(【ダンジョン】はDランクじゃないと入れないから、入れる連中には優先的にうけてもらいたい。お前はその間のダンジョン以外のD、Eランクの依頼でもこなしておいてくれ)」
「ラジャー」
「(ら、らじゃ……ってなんだ?)」
「了解ってこと」
「(あぁ、頼むな)」
こうして私は【ミスト】ギルド最速でのEランク昇格をはたすのだった。




