バルーンパウダー
マーヤは言葉を覚えた。
雑貨屋、武器屋、防具屋、肉屋、串、鍛冶屋
昨日、街を探索したことである程度の地理は頭に入った。
中央門より奥側はわからないが、下街はほぼ完璧。
この街で生活するために着実にレベルアップしている。
「いらっしゃい、まだ外出禁止は解かれてないのよ」
「そうなんだ、なんか受けられる依頼ある?」
「何かあったかしら……」
ギルドにきてマリアと雑談、魔道具とはいえ不自由なく会話出きるは素晴らしいね。
調査隊が帰還したけど、慌ただしくまた出かけていったのでまだ外出は禁止らしい。
外に出れれば討伐依頼でも、採集依頼でも出来るのに残念だ。
あの森は高価な薬草がかなり自生していたので、前回の量くらいならまだ採ることが出来た。
「あったわ、これなんかどうかしら?」
「教会の奉仕活動補助?」
「そうよ、お手伝いレベルなのだけどね」
何をするかは教会に行けば教えてくれるらしい、特に決まってないのだけどキツイ仕事はあまりないみたいだ。
「じゃあ、コレにするよ」
「手続きするわね」
マリアに教会への道順を教えてもらった。
教会は中央門の側にあるでかい建物だった。
軽目焼きを買った屋台の所から中央門へと向かえば良いらしい。
「あそこのお菓子?……砂糖菓子でしょ?あの甘い匂いは」
「それはわかるんだけど、小麦粉と砂糖だけじゃブクブク泡がでないでしょ、あんなに膨れるんだから……あと砂糖って高くないの?」
「ちょっとまってね……砂糖は【バルト公国】のダンジョンのドロップ品なら安いわね、1袋4000ミストよ……後は【カルミア連邦】の砂糖が1袋8000ミスト……【ミスト】のだとサンバドリー商会が扱う高級品の砂糖が1袋800000ミストね」
ついでに軽目焼きに使われていたであろう素材についてマリアに聞いてみた。
1袋はだいたい20キロ入るらしいので、安い砂糖なら1キロ銅貨2枚になる計算だ。
ダンジョンには砂糖を落とすモンスターがいるようで、ダンジョン産の砂糖は量が取れるのか安いようだ、他は高級品らしい。
「膨れるのは、たぶんコレかな……【バルト公国】のダンジョンドロップ品ね、バルーンパウダー、パウダーイーターってモンスターが落とすみたい」
「それかも値段は?」
「バルーンパウダーは1袋15200ミストよ」
ふくらし粉としての用途があるみたいなので、あたりかもしれない。
あのおっちゃんが【バルト公国】の品を手に入れることが出来たら砂糖も、おそらく重曹のバルーンパウダーも揃うので軽目焼きを作ることが出来るだろう。
「どっちか手に入る?」
「バルーンパウダーで良いなら、ギルドに少し在庫はあるみたい」
「欲しいのでお願い」
「良いわよ……2キロで良いかしら」
「うん」
マリアが持ってきてくれたバルーンパウダーをカードで支払いを済ませ腕輪の中に入れた。
「依頼頑張ってね」
「うん」
マリアに指輪を返すと教会へと向かうのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
教会へと着いた時にはちょうど飯時だった。
最初のお手伝いは配膳のお手伝いだった。
「……」
「……」
どの子も真剣に器を見比べている。
不満がでないようにシスターを見習って、ジャガイモのような物を二つ、アスパラのような物を1つ、お肉1つ、ニンジンのような物を1つ、大量に浮いている葉野菜は多めにしてよそっていった。
よそい方が良かったのか喧嘩することなく列が捌けてシスター達がビックリしていたほどだ。
今いるところは身寄りのない子供達を育てているところで、三の鐘の間は座学を中心に五の鐘までは体を使った活動がメインとなるようだ。
年長組みは将来、孤児院の稼ぎ頭になるべくスキルを伸ばす者、教会の要職につくための勉強に費やす者とに別れるらしい。
どっちにつくかで依頼の内容が変わるようだけど、正直どちらでも良かった。
どちらでも良いことをアピールした結果、シスターに連れられてきた場所は厠のような場所だった。
掃除道具と口元を覆う布を渡されたから掃除しろってことだよね。
髪が邪魔になるのでシスターからちょうど良い長さの棒を借りてくるくる回しながら髪を巻いて簪の代わりとして使用。
「スライムトイレ?……折角だからバルーンパウダーを試してみよう」
便器の蓋をずらして中を見るとスライムが動いていた、下街と違って教会ではスライムを使っているようだ。
手洗い用と思われる盥の中身を取り替えて、桶に水を用意するとバルーンパウダーと混ぜて汚れの酷いところにバルーンパウダー水に浸した襤褸布を置いて反応させるために放置。
その間に他の所を掃除することにした。
「あれは?」
「「「(((【クリーン】)))」」」
魔力を感じたので、見てみれば教会の子供達が魔法を使って掃除をしていた。
そういうのもありなのね。




