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特訓


リンカちゃんの知り合いのジン少年に魔法を教えてくれって言われた。

いざ教えようとしたら、もっと簡単な魔法のことらしかった……簡単な魔法ってなぁに。


マリアに聞いたところ、魔力は誰でも持ってるので生活に使える魔法ってのがあるようだった。

【生活魔法】と呼ばれる種類の魔法はアルカディアオンラインにはなかったが、無系統に属していた補助魔法が多かったから教える分には問題無かった。


「それで、子供に教えても問題無いの?」

「えぇ」


通訳はマリアに任せてギルドの訓練スペースへときて、基礎の部分を教えることにした。


ゲームと違って魔力が数字やステータスバーで可視化されるわけではないのでわかりにくいが、魔力は使えば使うほど増えていくそうなので、魔力の練りかたからはじめていく。

ゲームではコマンド1つなんだけどね。


「魔力を1箇所に集めます、体の隅々まで駆けめぐってるのをイメージして……体の中の魔力を感じることができたら、へそでも手のひらでも指先でもどこでもいいから集中させて」

「(……)」


人差し指を立てて目の前に持ってくると指先に魔力を集中させた。

実演をして見せたら、ジンが真似して指先へと魔力を集めていく。


「なんだ、出来てるじゃない……魔力が集まったら次は【選択】をするよ、今回は《熱風(ヒート)》ね」


魔法を使うには【消費】、【選択】、【決定】の3工程だ。

熱い風をイメージして魔力を変換していき、完成した熱風をジンへと当てた。

ジンが同じように魔力を変換しようとして、集めた魔力が霧散した。


「放出が弱いのか、イメージが弱いのか?……ジンに一気に魔力を流して無理矢理でも感覚つかませるのが良いのかな?」

「そんなこと出来るの?」

「やろうと思えばね……ただ痛いと思うよ、下手したら魔力が詰まって爆発って可能性も」


爆発って聞いてマリアが顔を青くしてるのをながめながら、どうするか考える。

なにか良い案がないかな?


「【身体強化】いってみようか?……放出が出来ないなら肉体にかければ良いんだよ」


ジンに【身体強化】の魔法を教えてみたら、今度は上手くいった。

【身体強化】を使ってるうちに魔力量が増えて、放出系の魔法もそのうち上手く使えるようになると思う。


「ジンはまだ若いんだし、そのうち上手くなるでしょ、焦んない焦んない」


リンカちゃんもジンも、まだ10歳くらいなんだから慌てる必要ないよね。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ジンに魔法を教えていたら四の鐘が鳴った、地球なら16時あたりだと思う、そろそろ帰る時間になったってことだ。


「すんすん」

「(マーヤさん?)」


ジンとは家が反対方向なのでギルドで別れ、リンカちゃんと帰宅中に懐かしい甘ったるい香りが漂っていることに気づいた。

鼻をならして場所を特定すると、みようと思えば屋台にみえなくもない場所の前に人だかりが出来ていた。


誘われるようにふらふらと近づいていくと、小柄なおっちゃんが鍋で何かを作っていた。

匂いの原因はあれか。


「(嬢ちゃん達、いるかい?)」

「……」


これは、もしかしてあれか?


おっちゃんが睨んでいたので慌てて買おうと値段をみたら、10ミストだったので20ミストを渡して作ってもらう。

水と小麦粉のような物を鍋に入れてかき混ぜて少しきつね色っぽくなったら、先が少し太くなった串を4本使って激しくかき混ぜて鍋を避けた。

ブクブクと泡をたてながら膨らんできて、おさまったら串2本を渡してくる。


「(あいよ)」

「ありがとう」


リンカちゃんと食べ歩き、懐かしい味がする甘味にリンカちゃんも喜んでいる。


砂糖が少し使われてるので甘い香りがするのだと思うけど、値段は10ミスト、鉄貨1枚と高くない。

ブクブク出てた泡は炭酸かな?ってことはおそらく重曹が使われてる。

軽目焼きとか言う昔のお菓子があんな感じの作り方だったはずだけど、自分で作ってみないとわからないな。


こうしてリンカちゃんとの初デートは終わったのだ……ってプレゼントを渡してないや。

宿へと戻って夕飯を食べた後に、リンカちゃんへと買っておいた洋服をプレゼントした。

リンカちゃんが街を案内してくれたおかげで【ミスト】に少し詳しくなった。

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