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白い機体との初遭遇-ジャック・ソック覚書-サイレント ネオ-異聞-

私が白い機体と初遭遇した話は、私を語る上で欠かせない話である。

なので、ここに書き記すことにしよう。

地球・月歌大戦において、私は斥候分隊の隊長に指名された。

これは正直言えば荷が重い任務であった。

というのも、当時、月歌軍は支配地域を歴史上最大まで広げたいた。

すなわち、地球の衛星軌道にあるプロメテウス基地を強襲して占領していたのだ。

ここを拠点に地球に侵攻する可能性は五分五分と言われていたが、どうするかは首脳だけが知る国家機密だった。

そのため、我々にもどうなるかはわからず、日々噂しあっていた。


わかっていることと言えば、プロメテウス基地を守るツルネグ中将を助けるため、斥候分隊を率いて私以下9人が最前線に赴いていることだった。

基地から見下ろす地球は美しく、水の惑星とはよく言ったものだと感心した。

しかし、いつこの美しい星から大軍が強襲するかと思うと、さすがに寝付くのも難しい夜が続いた。

そんな状況の中、我々斥候分隊は、地球軍の強襲を察知するために偵察に出る毎日だったのである。


そんな折である。

何ということであろうか! 我々の分隊があの白い機体とたまたま鉢合わせをしてしまったのだ!

幸い我々の部隊はステルスが強化されたCAに乗っており、かつ、基地の周りに大量にまかれた宇宙デブリのおかげで気付かれていなかった。

距離は200~300mにすぎない場所に、白い機体…すなわち、サイレント ネオがいたのである。

今思い出すだけで武者震いする思いだ。

しかし、サイレント ネオは5機程度を率いているだけであり、何のためにいるのかわからなかった。

わかっていたのはあの白い機体は、第3次地球・コロニー戦争において、100機を落としたという事実である。


すなわち、我々の偵察分隊が合いまみれれば、ひとたまりもないということであった。

武者震いがとまらない私は、ナウマン以下配下たちに伝えた。

「しばし、動くな。動けば危険である。やりすごすのが賢明だ!」

私の命令を聞くまでもなく、誰も身動き1つしなかったのである。

そうこうするうちに、白い機体の一行は私たちの前から消えて行った。

それを確認すると私は部隊に撤退を命じたのである。

我ながら見事な判断だった。


仮にムサシ・ミナモトに感づかれれば、私はみなを逃がして殿しんがりをつとめるつもりであった。

その時は討ち果たすとはいわずとも、一太刀浴びせて宇宙のちりとなるつもりだったのである。そうすれば、ソック家の名が宇宙史の片隅に刻まれたことであろう。

しかし、残念ながら初遭遇で対戦する機会は得られなかったのだった。


ハインリヒ・ナウマン曹長の証言

確かに我々はプロメテウス基地の斥候として周辺を偵察している時に、サイレント・ネオの一団に出会いました。

そして、幸いにもデブリの後ろに隠れていたおかげで、先に相手に気付くことができました。

ですので、我々は息をひそめて隠れていなければなりませんでした。

しかし、あろうことかソック隊長は、「迷わず逃げろ!」というやいなや、1人で逃げ出してしまったのです!

その逃げ足の速さに我々はあ然としました。

当然、この動きを白い機体も察知したはずです。しかし、運よく彼らは去っていきました。

ひょっとしたら、彼らもあまりの逃げ足の見事さにあきれ返ったのかもしれませんね。

残された我々は生きた心地がしませんでした。ソック隊長は「ほらふきソック」とは別に「逃げソック」というあだ名もつきました。







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