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あなたの秘密、知ってます
初めて会った時に気づいてしまった。
彼が『彼』だって。
いつも見ている大好きな幼なじみ。
夜のあなたは私の知らない顔をしている。
いつか、その秘密を教えてくれる日が来るといいな‥‥
赤い光が夜の街を照らし出し、サイレンが響いている。
明日の一面を『彼』が賑わすことは間違いなさそうだ。
「さて、そろそろかな?」
私はテラスに出て、お茶の準備を始める。
私の感が正しければそろそろ彼がやってくる頃合いだ。
2人分のカップと昼間焼いたクッキーをテーブルに並べる。
そして紅茶の茶葉を適量ティーポットに入れお湯を注ぎティーコーゼを被せて砂時計をひっくり返した。
あと3分。
砂時計がゆっくり落ちて行く様子を眺めながら、私は彼の訪れを待っていた。
初めは今日と同じ満月の夜。
同じように赤いライトとサイレンが賑やかな夜だった。
夜風が気持ち良くてテラスで大好きな紅茶を飲みながら読書をしていたとき、急に大きな音と共に木の上から落ちてきたのは‥‥
「こんばんは。麗しのお嬢さん。」
砂時計が落ちきる間際に声がかかる。
私はにこやかに微笑みながら振り返る。
「こんばんは。怪盗さん。」