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パートPast2

クウちゃんに近づく犯人たち。単独犯だと思われたが、物陰にはもう一人の犯人がいた。建物が死角になっていて、丁度クウちゃんたちからは見えないみたいだ。そのため、クウちゃんは気づいていない。目の前に見える犯人からテネちゃんを助けようとしただけ、勇気のある子だとは思われる。しかし、考えなしの子どもとも捉えることができる。二次被害になりかねないからだ。目の前にいるものにしか気を取られていないところは、まだ5歳児だから仕方がないことだ。



テネちゃんの説得に失敗したクウちゃん。そのため、自分は逃げようとするが、死角に隠れていた犯人がクウちゃんのことを取り押さえた。


「捕まえた。」


低い声を発した、細身の男がクウちゃんを捕らえる。黒い帽子に黒いジャケット、マスクをつけていていかにも怪しい人。極力顔が見えないようにマスクがつけられているのだろう。


「お友達のせいで、災難な目にあったね。でも、大丈夫。俺たちと一緒に遊ぶだけで、なーんにも怖いことはないからね。」


クツクツと楽しそうに笑う男。だがしかし、クウちゃんはその男の言うことを嘘だと確信している。なぜなら、一般人はいかにも周りの人たちが怪しいと思うような格好をして子ども捕まえることはしないからだ。また、クウちゃんを捕らえる力はとても強い。まるで、逃さないと言われているようだ。


「はなせー! はなせーー!! 人攫いぃぃぃぃぃーーーー!!!」


大声を出すクウちゃんだったが、即座に口を塞がれた。


「くそっ! こんな大声を出すなっ! 」


周りをキョロキョロと見回す男。人と通りは少ないが、人がいないわけではない。クウちゃんの声に振り向いて、犯人たちの方をを見ている人もいる。


「うーー! うーーーー!!」


口を塞がれながらも、男の腕の中でも暴れるクウちゃん。言葉にもなっていない誰にも伝わらない声を出しながら、叫び続ける。


「くそっ! うるせーーから、だまれ。」


そのように、いらつく男。しかし、抵抗を緩めることはなく、暴れ続けている。それを、諭そうとする声が聞こえた。もう一人の男と付き添っているテネちゃんだ。


「優しい人たちだよ。そんなに騒ぐ必要ないよ?」


その行為をテネちゃんの傍にいた男は褒めた。


「いい子だねーー。」


その発言が男にとっては嬉しいものであったのか、テネちゃんの頭を優しく撫でている。多分、クウちゃんを落ち着かせるのに都合のよいことを言ってくれたテネちゃんを褒めているのだろう。ムカつくことに、テネちゃんの方が聞き分けのいい子みたいになっていることがクウちゃんにとっては気にくわないみたいだ。このような状況になっているのに、呑気なテネちゃんの発言は、逆にクウちゃんの怒りを誘っているのであった。



ジタバタともがき続ける少女が一人。それをなんとか抑えようとする男が一人。もう一人の男がいてそれについていく少女が一人。何が起こっているのかわからない少数の人々。


なんとも怪しい格好をしている犯人たちたちだが、暴れる少女とは反対におとなしく嬉しそうに彼らについて行っている少女がいる。そのため、誘拐しようとしているのか、じゃれあっているのか、ただの撮影なのか、反応が難しいみたいだ。全ての元凶のせいで、人々も対応に困るって、どんな状況だ。



犯人の腕の中で暴れていた少女が口を塞いでいる手にとうとう噛み付いた。


「ぅーー! ぅーー! うーーーー!!」


噛みつきながら何かを訴えかける少女に、少ない人々も立ち止まって騒ぎ始める。


「誘拐か?」


「でも、ああやって暴れている子はいるけど、あっちはおとなしいわよ。」


「それに、おとなしくしている子は笑っているし……。」


「一応、警察に電話した方がいいかしら?」


「あぁ、電話した方がいいかもしれないな。」


奇妙な出来事が起こっているため、どこかに電話をかける人や写真を撮る野次馬などがいた。


ボロボロと泣きながら男の手に噛み付いている少女を、男は早速なんとか振り払った。男はもう一人の男に近づいた。そして、小声で呟く。


「おい、やばいぞ。 ここを、早く去ろう。このクソガキのせいでここで時間をとりすぎた。早く行こうぜ。」


手から血を流す男とその腕の中でダランと腕を垂らす少女。


人通りが少ない道ではあったようだが、人が道を進まなければ、溜まっていく。何があったのかと気になる人々が止まり、大勢の目に晒される犯人たち。


「何を、言っているんですか? あなたは、もうここで終わりですよ。警戒心の高いあなたの懐に取り入ろうとした時は大変なことが多かった。」


やれやれと額に手を当てて、首を振る男。


「おい、何を言っている!」


その反応に眉を潜め、動揺するもう一人の男。


「だから、あなたはもともとここで終わることが決まっていたんですよ。」


遠くからサイレンの音が聞こえてきた。白と黒の車が遠くに見える……気がする。クウちゃんはそれを最後に意識を手放した。



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