パートPast1
わたし、くうちゃん。ごさいのおんなのこ。きょうは、はじめてのおともだちにあいにいくの。そのこのなまえは、てねちゃんっていうのよ。おかあさんのおともだちのこどもで、このあいだ、おひっこしっていうものをしたみたい。それで、おかあさんたちが、このまえにあったとき、おはなしがもりあがったんだって。ぐうぜんってすごいって。しばらくのあいだあえないでいたのに、いえがとなりどうしになるなんて、すごいてきなことをいってた。はやくあいたい。どんなこなのか、しりたい。
あってきた。もちろん、おんなのこだった。はじめてのおともだち。おともだちがふえることはうれしいことなのに……、それなのに……。わたしのおともだちはとんだばかなおんなのこ。こんなさいていなこ、となかよくなるなんてむり。なぜなら、わたしがそのことなかよくなりたくないから。おかあさんにぐちったら、おこられるから、いわないけど、ほんとーにかかわりたくないの。だって、とってもへんなこなんだもん。
おそとであそんでたら、きゅうにおなかすいたーっていって、おうちのかだんにあったきれいなおはなをたべていた。そのあと、じしんのおかあさんにおこられていたけど、おかあさんのしわがふえたーっていってわらっていた。わたしのそうぞうどおり、てねちゃんのおかあさんはもっとおいかりになったよ。でも、てねちゃんはまったくきにしてないの。
ほんとーにへんなこで、さいていで、ばかなおんなのこだなって、このときはおもっていただけだった。かかわりたくないとはおもっていたけど、もっとてねちゃんとかかわりたくなくなったおおきなりゆうがある。それは……。
その理由は、クウちゃんはテネちゃんのせいでまきこまれたからだよ。一緒に誘拐されてしまったのさ。テネちゃんが不用意に怪しげな男についていこうとしていたのを止めようとしたクウちゃん。でも、テネちゃんはお菓子とかおもちゃを買ってくれたからいい人だと言う。その時、クウちゃんは呆れたというような目をテネちゃんに送っていたよ。
クウちゃんは、テネちゃんに耳打ちした。
「おかあさんたちはしらないひとたちについていったら、だめっていってたよ。だから、かえろうよ。」
クウちゃんはテネちゃんにコソコソ話した。しかし、テネちゃんは大きな声を出す。
「しりあいだもんっ! てねのほしいものをたくさんかってくれたいいひとだもんっ!!」
そのように少女は言い、怪しい男の手を握る。せっかく、クウちゃんがテネちゃんにこっそり教えたのにね。テネちゃんはそれを台無しにした。それからだ。もう、テネちゃんにだけわかるように伝えたところで、怪しい男は彼女たちがどんな話をしていたのか通じてしまっているだろう。今更、耳打ちで伝えたところで、それは意味をなさない。
クウちゃんは、思い切って話す。
「いいものをかってくれたからって、いいひとなのかはわからないよっ! そのひとに、ついていってなにかあったらおかあさんにおこられるよ。」
怪しい男を指差して、クウちゃんは述べた。冷静なクウちゃんとは違って、テネちゃんは地団駄を踏み、さらに、癇癪をおこす。
「もうっ! うるさい!! いいひとっていったら、いいひとなのっ!!」
どうやら、怪しげな男のことを信じきっているようだ。クウちゃんより……。
「むーー、しらないんだからっ! いたいめみても、くうちゃんはしらないから。」
そのように発言した。そして、去ろうとしたが、そう上手くは逃れられない。
怪しい男はニンマリと嫌な笑みを浮かべていた。