未だ来ぬ世界へ
いつになったら平和になるのだろう?
わたしはそう思いながら、いつも歌い続けていました。
戦い続けるみんなはつらそうで、見ていられませんでした。特に、お兄ちゃんや、わたしのパートナーだったあの人。
血で血を洗うような戦い。斬っても斬っても終わらない、積み重ねられてゆくばかりの屍。
もう、いいんじゃないかって、思いました。けれど、あなたはいつも止まらなかった。
……当たり前ですよね。家族を殺した仇敵が相手なんですから。
あなたの目にはいつも敵しかなかった。確かに仲間やパートナーのわたしを守ってくれたけど、それは敵を倒すついでの行動に過ぎなかった。最後まで、そうだった。
わたしの最期も。
敵に重症を負わされた挙げ句、敵と同じ種族として覚醒してしまったわたしを、
あなたはただ、
『敵』
と。
そうとだけ認識して、躊躇いもなく切り裂いたんです。
最期に見たあなたの無表情は、血塗れで、どこまでも表情がなくて、目に光すら窺えなくて、怖かった。
けれど同時に様々なことがわかりました。
この戦いが始まったときから、あなたの心は死んでいたんですね。
敵に家族を殺されて、復讐の思いで真っ黒に染まった心は、もう、死んでいたのですね。人間であることを、放棄したんですね。
ただ敵を討つために。
それは正しいのかもしれない。けれど、わたしには、とてもとても悲しいことのように思えてならないのです。
誰か、まだどこかにある彼の心を掬って、救って。
わたしには、もうできない。
こう呟くくらいしか。
「さよなら、愛しい人」




