白の王
貴方の悔やむ顔が見える。貴方の泣き顔が見える。貴方は王たる者だからか、その矜持から、叫ぶことはしなかったが、その唇が、何度も何度も私の名を象っているのは容易に読み取れた。
泣かないで、友よ。いつか死ぬことは人に定められたこと。永久不変の事実だ。命ある者は必ず死ぬ。その定めは死神たる貴方の方がよくご存知でしょう?
私の命数尽きたのが、今であるだけです。
なんて、理屈を並べても、涙ある貴方は納得しないでしょうね。本当に、優しい人だ。
貴方はきっと、私は死すべき存在ではない、自分の方が消えるべきなんだ……と、自らを責め苛んでいることでしょう。
それは違います。私はそう断言できます。
貴方は涙を持つ、優しいヒトだ。譬、世界の死神で、世界中に嫌われていても、私だけは貴方が優しいことを知っている。だから、貴方を許します。
だから、自分を責めないで。
視界が暗く閉ざされていく。いよいよ貴方がもう見えない。声も遠くなってきた。私は、もう……死ぬのか。
ではせめて最期に貴方を苛まないように心からの別れの一言を告げよう。
と思ったら、声も上手く出やしない。
伝わっただろうか。
「さよなら、愛しい人」




