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光無くして

 赤、赤、赤。

 ぎらついた残虐で鮮烈で目に突き刺さるような赤ばかりが辺りを満たしていた。その赤で彩られているのはボクを殺そうとした愚か者の残骸。

 ボクを囲う赤は、衝動へと成り代わる。人を殺す、衝動へと。

 ボクを人殺しと罵るのは道理だ。ボクはそういう人間なのだから。でも──そんなボクを守り、育ててくれた神父さままで殺したのは、なんで?

 神父さま優しい人だったよ。行き場のないボクに帰る場所をくれた。今はいないあの子とボクの持つ衝動に気を遣って教会のきらびやかな装飾、例えばステンドグラスとか、赤いカーペットとか、そういうのを全部取り払って、ボクたちが普通にのびのび生きられるようにしてくれたんだよ?

 そんな優しい人を、なんで殺したの? ねぇ、ねぇ?

 そんな心ないことをする人殺しなんて殺してもいいよね、ねぇ?

 そんな問答をしている間にも衝動は身を焦がし、答える間もなく、ボクは罪を犯し、重ねていた。積み重なる屍の山々。罪重ねた死体の山々。

 いつになったら終わるのかなぁ? ボクが死ぬまでかなぁ?






 そんなにボクが嫌いなら、早くボクを殺しておくれよ!






 ボクは屍の山々の頂で慟哭した。


 ここにあの子の優しい赤はもうない。わかっていても探してしまう。

 ボクの生きる理由になるとすれば、あの子だけなんだ。

 ねぇ、キミは幸せかな。幸せに生きているかな。

 普通の世界に行けたんだもんね、幸せに生きていてくれなくちゃ、ボク、泣いちゃうよ。




 ボクにこんな願いなんて相応しくないかもしれないけど、


 叶うなら、キミに会いたいなぁ、なんて。




 だってこんな血の海地獄で生きるくらいなら、キミのあの優しい色の赤毛に包まれていたいよ、触れたいよ。

 終わる前に、また、衝動にならない、唯一の赤に……






 そんな希望を抱く頃に、終わりはやってくる。




 銃弾が後ろから明らかにボクの足を貫いた。倒れたところを今度は背中の真ん中に向かって貫く。


 ああ、終わりだな、と思った。

 苦しんだにしては呆気ない。


 ボクは目を瞑るその瞬間、瞼の裏に焼きついたあの子に向かって呟いた。











「さよなら、愛しい人」



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