淋しく佇む紫
僕は二回、あなたを殺そうとしました。一度目はあなたが僕に向けていてくれた信頼に見向きもせず、ただ、任務のために。
二度目は──綺麗事かもしれないけれど、あなたを助けるためでした。あなたは僕に欠如していた『幸せ』を教えてくれた。愛をくれました。裏切った僕を、許してくれました。僕はあなたを殺そうとしたのに。
それでも僕を受け入れてくれたあなたを、僕は失いたくなかった。二度目の裏切りは、その感情に起因します。
敵の伏兵の圧倒的物量には、僕とあなたの二人では、対処しきれない。僕はあのとき、そう判断したんです。何せ増援も来ていましたから。逃げるにも、ぼろぼろの僕とあなたでは振り切ることも難しかったでしょう。
何より……あなたにこれ以上、傷ついてほしくなかった。
……なんて言いながら、去り際にあなたにサーベルを突き立てたのは、紛れもない僕ですが。
急所は外したんですよ? あなたに生きていてほしかったから。きっと二度の裏切りを働いた僕の行動など、あなたにはもう偽善にしか映らないかもしれませんが。
それでもあなたを失いたくなかった。
でももう、僕はあなたに合わす顔なんてありませんし、よすがも失ってしまいました。生きる意味なんて、幸せでいる道なんて、僕には最初から用意されていなかったんです。
だからもう、さようなら。もう会えない愛しい人。
あなたにはありがとうとかお礼を言った方がいいのかもしれません。
けれど、僕の口から零れるのは、どうしてもこの言葉でした。
「ごめんなさい」
さあ、喉に刃を突き立てて、
告げよう、別れを、懺悔を。
「さよなら、愛しい人」




