蝕まれる若さ
その後、あの声優さんとの血液の交換輸血は週に2回ずつ一ヶ月の間続きました。
それが行われるたびに、私はものすごく苦痛を感じたり疲労していたのですが、ある時、鏡を見て気がついたのです。
「これ……皺?」
私の目元にしわができているのです、そしてなんとなく私の顔に私ではない要素が増えてるようなきがするのです。
「あの声優さんの顔に近くなってるような……」
そしてあの声優さんの外見はどんどん若返っていっているのです。
これはどういうことなのでしょう?
そこへ矢野と名乗る男性が部屋に入ってきました。
「おや、どうなされました?」
私は振り返って彼に聞いたのです。
「私の顔にしわができてるのと
あの声優さんがどんどん若返っていっているの
いったいどうしてですか?」
彼はふむと顎に手を当てた後言いました。
「人間の体の細胞は常に置き換わっています。
皮膚の細胞に関して言えばおおよそ28日
腸で5日、心臓で22、筋肉で2ヶ月など。
おおよそ2ヶ月で人間の体の大部分は完全に新しいものと
入れ替わります。
無論骨や神経細胞、眼球の細胞などそれよりも
新陳代謝が遅い部位もありますが」
「28日?」
「はい、そして細胞の新陳代謝に関わっているのは
血液中の血漿です。
本来であれば自分の体の情報と他人の体の情報が
入り交じることはないのですが、其れが混ざった場合
血液中の情報もまじります。
あなたの体の若い細胞は彼女に若さをもたらし
彼女の体の老いた細胞があなたに老いを
もたらしているのですよ、
とは言えあなたの本来の身体年齢は若いですから
老廃物を体外に除去すればもとに戻ると思いますが」
私はそれを聞いて少しホッとしました、そして、首を振ります。
「まるで若さを吸われているみたい……」
ふむと彼はうなずきました。
「まあ、言い得て妙ですな。
若い血液を取り込みそれにより細胞を活性化させることで
造血機能や免疫力をとり戻すことができるというのが
現在の医学的な見解なのですよ」
「私から輸血するだけではなくて
声優さんから私に輸血し返すのは……」
「彼女の血液をあなたの肝臓等の若い血液で
置き換えるためですな」
そういうことだったんだ。
私は文字通り若さを吸い取られていたのです。
「ああ、もちろんあなたがすぐに使えなくなっては
困りますので、可能な限り老化した細胞を
速やかに除去できるように食事内容は
考慮されていますので安心してください」
そう言われてもちっとも慰めにはなりません。
私は他人に若さを提供する目的という目的のためだけに生かされ、若さを保つようにさせられているのですから。