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若さを求める人、あるベテラン女性声優の場合

 ここに閉じ込められている私の扱いは決して悪いものではありませんでした。

定刻になると就寝を促されて、定刻になると起床を促されます。

睡眠時間は十分与えられていますから体調に関しては悪くありません。


「もう、朝……かな?」


 自分の部屋では太陽は見れませんので今がどのくらいの時間なのかははっきりしませんが、たぶん朝なのでしょう。

しばらくしてドアを開けてメイド服姿の女性が食事の載ったトレイと着替えの病衣を持ってきてくれました。

この部屋は空調もちゃんと効いていて、室温や湿度は快適に保たれています。

トイレとバスルームに加えて簡単に運動ができる、ルームランナーやエアロバイク等の運動器具が設置されている部屋もあります。


「おはようございます、食事と着替えをお持ちしました」


 そして何故か私には逆らう気力が残されていませんでした。


「はい、ありがとうございます」


 私はまずトレイを受け取って、食事を取ります。

ご飯に目玉焼き、納豆に焼いた目刺しと菜っ葉のおひたし、それに乳酸菌飲料とハーブティ。

どこかのホテルの朝ごはんのようですが実際作っているのはホテルの厨房なのでしょうか。

それを箸を使って食べます。

冷めてはいますがまずくはありません。

すごく美味しいとも言えませんが。


 食事が終わるとトレイが下げられて私は着替えをします。

下着や病衣を脱いで、新しいものに着替えます。


 それを渡すとメイドさんは出ていきました。

そしてしばらくして執事姿の男性が部屋にやってきます。


「さて、今日はお客様が来られています。

 あなたはお客様に若さを分け与えてもらいますよ」


「……はい」


 とうとうその日が来たようです。

一体私はどういうことをされるのでしょう?

でも殺されるようなことはないということですし、そんなにひどいことをされるわけではないと思うのですが。


 そして部屋の中にテキパキと医療用ベッドや輸血のために必要な設備が運び込まれたのです。


 そして、部屋の中に入ってきたのは女性でした。

年齢は50代位だろうと思うのですがはっきりはわかりません。

そしてその人は私を見ていったのです。


「若さと健康って本当に宝物よねぇ。

 羨ましいわ」


 私はその声を聞いたことがあったような気がしました。


「あ、あの、もしかして有名な女優さんだったりしますか?


 女性は一瞬顔をひきつらせました。


「いいえ、ちがうわ。

 私は女優じゃなくて声優なの。

 でもそれなりに有名なキャラクターの声もあててたから

 聞いたことは在るかもしれないわね」


「そ、そうでしたか。

 すごいんですね」


「うふふ、そうねこの業界でずっと

 食べていくのはけっこう大変なのよ。

 女優と違って声優は声を当ててるキャラクターの

 年齢は変わらなかったりするからなおさらよ。

 某掲示板に”BBAいい加減引退しろ”とか

 ”ロリキャラなのにしわがれ声、これはひどい”

 とか書かれたりね」


 そして彼女はにやあと笑っていったのでした。


「だからマリア様、あなたの生き血は私の光明なの。

 お願い私の声を若返らせてちょうだい」


 この人は狂っている、私はそう感じました。

その後、私と彼女の血液型を詳細にダブルチェックを行い、生理食塩水法による交差適合試も行ったあと、オゾンクレンジングと放射線による白血球の除去を施した血液をお互いに輸血し合うのです。


「ぐう、痛い、痛いよう、なんでこんなに痛いの?」


 私の体は全身が重くなり、痛みが走ります。

特に関節に痛みが集中している気がします。


「うふふふ、素晴らしいわ、血が流れるたびに

 私の体が軽く若くなってくるのが実感できるわ」


 反対に彼女は痛みも感じず体が軽くなっているようです。

やがて相互輸血は終わりました。

私はぐったりして体を動かすこともできません。


「うふふ、マリア様本当にありがとう。

 こころなしか声が若返った気がするわ」


 たぶんそれは本当です。

彼女のしゃがれ気味だった声には若さが戻っているのです。


「うふふ、本当にありがとう。

 ワタシは永遠に16歳よ!」


 そう言って部屋を出て行く彼女を私は呆然と見送ったのです。

彼女を狂わせたのは一体何なのでしょう。

彼女の演じているキャラクターの熱心なファンの声なのかキャラクターが永遠に歳を取らないその物語そのものなのか。


 そして執事姿の男性が入ってきて私に言ったのです。


「お疲れ様でした。

 現状あなたの体内には老化した血漿や赤血球が

 大量に混入しています。

 水分を摂取し睡眠を十分取って

 それらの排出に努めてください。

 それでは」


 私は体が重くて何もする気が起きませんでした。

そのままベッドの上で意識が落ちるように寝てしまったのです。

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