メリーゴーランドは誘蛾灯の明かり
私たちはそろそろと歩きながら警備員かも知れない人たちから隠れることのできる場所を探します。
もちろん他の人が肝試しや廃墟探検に来ただけの可能性もありますけど、警備員に捕まって大変になった事があるらしいという噂を考えると、あまり接触はしたくありません。
入口付近には古いアメリカ風の建物が立ち並び中には営業していた時、その中には売店やレストラン、案内所などが入居していたようでした。
「以外と遊園地には隠れるのにいい場所って無いもんだなぁ」
「そうだね、もう少し奥に行けばアトラクションもあると思うし
進んだほうが良さそうだね」
明宏くんと綾ちゃんがそんなことを言いながら私たちは裏野ドリームランドの奥へ歩いて行くのです。
「なんかゾンビでも出てきそうだよねえ」
「確かにホッケーマスク被った殺人鬼が出てきてもおかしくないよな」
綾ちゃんと明宏くんは笑いながらそんなことを言っていますけど、本当におばけが出てくてもおかしくない雰囲気です。
「ねえねえ、そういうこというのやめようよ」
夜中の廃墟で手入れされておらず立ち枯れた木などを見るとやはり怖いものです。
「麻莉愛は怖がりだなぁ、ゾンビも殺人鬼も居るわけ無いじゃん」
そして綾ちゃんは私に耳元で囁いたのです。
「ほうらほら、こういう機会なんだから手ぐらいつなぎなよ」
そして、綾ちゃんは明宏くんのところへ戻っていきます。
「あ、あの、康介くん」
「ん、なんだい?」
「手……繋いでもいいかな?」
「あ、うん、いいよ、暗いしね」
私は康介くんの手にそっと手を伸ばします。
「えへへ、こうして手をつなぐとなんか安心するね」
康介くんも笑って言いました。
「そうだね、なんだか…っ!?」
後ろの方から懐中電灯の光が追ってきているように見えました。
「やばいなぁ、とりあえず、進むしか無いか」
「まあ、そうだな、奥に行けばなんとかなるだろ」
私たちは更に奥へと進んでいくのです。
そしてその先に有ったのはどこの遊園地にもあるアトラクション。
でもありえないことが起こっているアトラクションでした。
「え、なんで?」
「どうして動いてるんだ、このメリーゴーランドは」
そう、真夜中に動くはずのない誰も乗っていないメリーゴーランドが明かりをともして回転していたのです。
それは美しい光景ではありました。
そして私たちの意識がメリーゴーランドに向けられていたとき、”それ”は私たちに後ろに来ていたのです。
そして、私は”バチッ”という衝撃を受けて意識を失いました。
「なに…が?」
薄れ行く意識の中で見えたのは薄っすらと笑った黒い人影でした。