廃墟は見慣れてますけど夜の廃墟はやはり怖いものですね
早速私たちは放課後になるとそれぞれの自宅に帰り着替えをして肝試しの用意をするのでした。
「うーん、こういう時はどういう格好がいいのかなぁ」
あーでもない、こうでもないと、クローゼットの中の私服をひっぱりだして、それを身につけて鏡を見る。
「うーん、何か違う気がしますねぇ……」
そう言えば綾ちゃんが言ってたな。
”あんたの場合下手に派手目な服を着てもにあわないんだから
清楚系ファッションでおしていったほうがいいよ”
って、私は下の方にしまっておいたシンプルな白いワンピースを取り出してそれを身に着けてみます。
「うん、結局背伸びしないでこういうシンプル
なのが私には一番似合うのかな……」
彩ちゃんは明るくて派手な子だけど私は地味、だからなかなか一歩を踏み出せなかった。
「でも、せっかく彩ちゃんや敦弘くんもお膳立てしてくれてるんだし
頑張ろう、私」
そして、時計を見て私は青ざめました。
「た、大変、待ち合わせの時間に遅れちゃう」
その後私が急いで家を出ていったのはいうまでもありません。
・・・
待ち合わせ場所のコンビニの前にはみんなもう揃って待っていました。
「おくれちゃって、ご、ごめんなさい」
康介くんが私に優しく言ってくれた。
「あ、ああ大丈夫だよ、俺達も来たばっかだし」
綾ちゃんと敦弘くんはニヤニヤしながら見てる。
「じゃあ、みんなそろったし、さっそくでっぱーつ」
「おー」
綾ちゃんが声をかけると自然とみんな足が動き出す。
綾ちゃんは敦弘くんと、私は康介くんと隣り合って裏野ドリームランドのある高台へと続く道を歩き始めました。
ずっと生まれ育った土地だとは言えやはり夜中に出歩くことはあまりなかった私には、明かりの灯らぬ廃墟となったホテルが立ち並ぶ光景は少々怖いものがあります。
「やっぱり、ちょっと怖いね」
私は康介くんにこそっと言いました。
「大丈夫、大丈夫、廃墟マニアの人間も夜中にうろついてるみたいだけど
怖いことなんて無いよ」
康介くんの力強い言葉になんとなくわたしも安心してしまします。
「う、うん、そうだよね」
そして康介くんは真面目な顔で言葉を続けます。
「それに、もしも何かあったら俺が君を守るよ」
「う、うん、ありがとうね」
その言葉を聞いたらところどころ切れかけて蛾が飛び回ってる街頭も、明かりの灯らない廃墟となったホテルやマンションも怖くなくなった気がしました。
車も通らない山道を懐中電灯の光を頼りに、みんなで歩いていくとようやく到着したのです。
「ここが裏野ドリームランドかぁ、
夜に来るとなんだか”くる”ものが在るね」
綾ちゃんがそう言いながら閉ざされている正門の脇に移動します。
「門が閉まってるけどどうやってみんな入ってるのかな?」
私が綾ちゃんに聞くと綾ちゃんは得意気に言ったのです。
「そりゃ、フェンスの切れてる所、って横の通用門が開いてるね」
敦弘くんが言いました。
「まあ、廃墟マニアが開けていったのかもな。
よくみりゃ吸い殻なんかも落ちてるし」
「うーん、そういうものなのかな?」
私の疑問は周りにスルーされました。
「まあ、正面から入れるなら
それに越したことはないしさっさとはいろ」
綾ちゃんが先頭を切って遊園地に中にはいっていきます。
私は廃墟としては通用門が綺麗すぎることになんとなく違和感を抱いていたのですが其れがなぜなのかまで考えるには至りませんでした。