肝試しは夏休みの定番ですが……
私は阿部麻莉愛、公立高校3年の女子高生で、伊豆半島の温泉街A市の生まれ育ちです。
私の生まれ育った市は昔バブルと言われた頃までは観光客もめちゃめちゃ多く来ていて、ホテルや旅館は大忙しだったし、いろいろなテーマパークが作られたり、モノレールや高速道路の建設予定も有ったらしいですね。
「でも今じゃ……ね」
伊豆半島は首都圏から比較的近い……けどあまりアクセスがいいとはいえないのです。
新幹線が走ってるわけではなく、半島を完全に縦断するような高速道路も走ってない。
ああいえ、私の住んでる市には新幹線の駅もありますし、東海道線と伊東線なども走ってますからまだ条件は良いほうですし、一応伊豆縦貫道が開通して多少はアクセスも良くなりましたが、車でここに来るには厚木か沼津から下道で来なければなりません。
平成30年代には下田まで高速道路が開通する予定、では在るようなのですけどね。
ですが、今時は新婚さんや家族でわざわざ古臭いホテルや旅館に泊まりに来るよりも海外へ旅行に行ってしまう人のほうが多いのでしょう。
たくさん立ち並んでいるホテルの半数ほどは廃墟です。
夜になっても明かりがつかない大型のホテルが立ち並ぶのは少し怖いものがありますね。
ですから今では廃墟マニアと呼ばれる人々がたくさんある廃ホテル、廃病院、廃ドライブイン、そして廃墟となった遊園地を訪れる様になってしまいました。
廃墟となった遊園地裏野ドリームランドは50年ほど前の景気のいい時代に建てられた伊豆半島でも最も古い遊園地でした。
ですがやはりバブル崩壊の後は来園者が激減してしまい潰れてしまったのです。
そして定番の心霊スポットとして7不思議が語られるようになりました。
その1・たびたび子供がいなくなるという噂が営業していた当時から有った
その2・ジェットコースターで事故が起こったけど、それがどんな事故だったのか誰に聞いても答えが違う
その3・これも営業していたときから有ったらしいけどアクアツアーで謎の生き物の影が見えてその影は今でも見える
その4・ミラーハウスから出てきた後、中身だけ入れ替わったように別人みたいに人が変わった人が何人かいる
その5・ドリームキャッスルには隠された地下室があって、しかもその地下室は拷問部屋になってる
その6・メリーゴーランドが美しく電飾を点灯させながら勝手に廻っていることがある
その7・廃墟になったでそで人はいない筈なのに、観覧車の近くにいくと、小さい声で『出して・・・』って言う
まあ、人なんていないはずとは言うものの廃墟マニアの人なんかが立ち入ったりしてるみたいだから誰も居ないはずっていうのはどうなのかなって思ったりもしますけどね。
そんなことを考えてる私に声がかけられました。
「ねえ、ねえ、麻莉愛。
私達、裏野ドリームランドに肝試しに行くんだけど
一緒に来ない?」
彼女は私の友達の佐々木綾ちゃん。
「私達って誰?」
「ん?敦弘に康介」
敦弘というのは彩ちゃんの彼氏。
康介くんというのは……。
「え、康介くんもいくの?」
綾ちゃんはニヤッと笑っていったのです。
「そうそう、今年卒業したらチャンスもなくなるんだから
そろそろくっついちゃいなさいよあんた達」
「で、でも……」
「まったく、ほんとあんたたちは素直じゃないっていうか
まどろっこしいっていうか、見ててイライラするのよね。
だからこういう機会にさ、きゃーこわーいとか言いながら
あいつにしがみついちゃったりすればいいんだよ」
肩をすくめながら言う綾ちゃん。
「そ、そうかなあ」
「うん、そういうものだよ。
男なんて単純なんだから」
私たちは小さい頃から一緒に遊んでいたいわゆる仲良し4人組です。
敦弘君と康介君も何やら話をしているようですね。
「じゃ、じゃあ、行こうかな」
「そうと来たらちゃんとおめかししないとね」
「そ、そうだよね」
そんなことを話している私達を男の子二人組も見ているのでした。
そしてこの肝試しがあんなことになるなんて、私たちは思ってもみなかったのです。