プロローグ
若い人間、若い処女の血には肌の美容や若返りの効果があると昔から言い伝えられている。
人類史上最悪の女性大量殺人者”血の伯爵夫人”エリザベート・バートリ”は自分につかえるメイドなどを殺してはその血をバスタブにためて鮮血の風呂にはいることが若さを保つ秘訣だと信じて実行した。
その犠牲者は若い少女ばかりで600人以上と言われる。
エリザベート・バートリーの行動、これを愚かなこととおもうだろうか?
しかし35歳を過ぎた辺りから、多くの人が加齢とともに心身が衰えていくのは実感しているであろう。
徹夜がきつくなり、走れば息が切れ、物忘れが増え、太ったりシワが増えたり髪の毛が薄くなったりする。
ああ、歳を取ってしまった、若かった頃にもどれないだろうかと歳を取れば思うものなのだ。
では若返りが可能だとしたら?
実際に世界ではParabiosis(並体結合)とよばれる、2匹の動物の血管をつないで血液が互いの個体で共有される状態にする実験で、幼いマウスと年老いたマウスの循環系を共有させて、その結果何か起こるかという研究が行われてきており、幼いマウスと老齢マウスで循環系を共有すると老齢マウス側の筋肉組織の修復力が若い状態に戻ったり、骨格筋の機能が回復して握力が増加したり、また神経幹細胞の増殖が促進されて聴覚、嗅覚味覚も改善し、造血幹細胞または造血前駆細胞の若返りや脳の海馬の再生が観察され、アルツハイマーなどの治療に役に立つ事が期待されている。
そして逆に幼いマウス側には明らかな老化が認められるのだが。
米国では若者の血液を高齢者に輸血すると高齢者の身体の細胞を若返らせる事ができるという科学的な実験は現在でも行われており、これに金を出す40代以上の金持ちの人間と言うのは決して少なくない。
40代以上のものが10代の若者の血を輸血して若返る輸血がアンチエイジングビジネスとして米国などでは期待されており、実際にAmbrosia社は35歳以上の人を対象に、8000ドル(約80万円)の金を支払えば、16~25歳の若者の血液を、週に1回を4週間で4回輸血するという。
おそらくこれからは思春期の若者の血液が、高額で売買される時代がやってくるのだろう。
では、それを早速、非合法な手段であっても試したいという人間が居たとしてどのような手段でその目的を達成しようとするのだろうか?