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7月

 「最近の文学は僕には難しいみたいです。」

 「は? 例えば?」

 「この手紙に書いてある『w』とは一体どういう意味なのでしょう?」

 「……。」

 それは手紙ではないし、ましてや文学でもないとどう説明すればよいだろうか。

 SNSサイトを見て頭を悩ませる文月に聞かれて、頭を悩ませる神子、ふみだった。

 

 

 7月――学問の神

 

 

 「そうですね。ていうか、まず、それは手紙じゃありませんから。」

 「そうなのですか?」

 スマートフォンを恐る恐る操りながらも、文月はその他のページを見ていく。

 「あぁ、こら。こんな怪しげなところタップしない。」

 「でも、この方とこの方はお友だちなのでは? 所謂文通仲間ではないのですか?」

 小学生よりも緩いネットへの危険性の知識はどうせどうにもならないので、変なURLをタップしないように注意しながら文月のネットサーフィンを見守る。

 SNSによくある『友達』という単語に引っ掛かった模様だ。

 「あー、友達っちゃ友達っすけど、この2人は多分現実では会ったことないんじゃないんですかね?」

 「そんなことがあるのですか。」

 文月は驚いたように目を開いて再度ページをゆっくりと見る。その人の過去の投稿等を見ているようだ。

 「昔でいう文通仲間みたいなもんすよ。文通仲間だって、会うことは稀だったんでしょ?」

 「えぇ、そうですね。会う方もおられましたが、少数でしたね。

 これは、文通仲間さんたちの集まりでしたか。」

 「ちょっと違いますけど、それでいいっす。」

 これ以上の説明が面倒になったため、史はそんな言葉で締め括った。ぞんざいな扱いではあるが、文月は気にした様子もない。それよりも、他の人のSNSが気になるようだ。

 「SNSというのは大変勉強になりますね。僕は学問の神様ですが、知らないこともたくさんありました。少し、勉強してみたいと思います。」

 「……ほどほどにしといてください。」

 学問の神様がいったいSNSでどのようなことを学ぶのだろうか。

 史は嫌な予感を拭いきれず、かといってスマートフォンを取り上げることも出来ず文月を見守ることにした。

 

 

 「史!おそようございます。」

 「はい?今なんて?」

 「おそようございます。」

 確かに今は10時過ぎで早い時間ではない。

 だが、これはもしかして。

 「今日の天気もチョベリグで僕、驚き桃の木山椒の木です。」

 「やめてください!」

 昨日言っていた勉強のせいかがこれである。

 学問の神様を頼ってお参りに来る受験生に謝ってほしい。というか、もう史が謝りたい気分である。

 「? 史の気分はチョベリバですね。」

 「マジ、勘弁してくださいよ。」

 しかも、なぜか全体的にチョイスが古い。現代のネットの中からなぜその年代の単語を拾ってきたのだ。いや、JKとかの言葉よりはましかもしれないが。いや、そんなことはないか。

 「とりあえず、戻してくださいよ。私はそのしゃべり方好きじゃねぇっす。」

 「え? どこか変ですか? 一生懸命勉強したのに。」

 「変なんでやめてください。」

 何千年も生きている神様が、しかも学問の神様がこんな話し方をしていると知られたら神様業界への人間から信用はがた落ちではないだろうか。しかも、微妙に全部古めかしいのが更に拍車をかけている。

 「勉強熱心なのはいいですけど、学問の神様がそんな話し方だったら、マジKYだと思うんすけど。」

 「KY? どういう意味ですか?」

 キョトンとした顔で文月は史を見る。

 どうして、勉強したはずなのにこんな単語も知らないんだ。いや、知らないままでいてほしい。

 「KYもわからないんであれば、文月様には若者言葉は向いていないっすよ。」

 「でも、僕は学問の神様なのに情けないです。」

 文月は顔を俯かせる。確かに、せっかく勉強したのに向いてないだなんて、特に学問の神様には酷な話だろう。

 「ゆっくり覚えていけばいいんすよ。私が教えますから。」

 「本当ですか? 助かります、史。」

 もちろん正直に教える訳もなく、ほんの少し当たり障りのない単語を教えていくつもりである。

 全国の受験生が常識的な言葉で作文をかけるのは一重にこの史の地道な努力のお陰かもしれない。

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