6月
6月と聞いて、何を思い浮かべる人間が多いだろうか。
恐らくは、『梅雨』と答える人間が多いのではないだろうか。
6月――水の神
しとしとと雨が降るのを見つめながら、縁側で一時の休憩をしている神様と神子。
「今日も肌が潤って良い感じ。」
「俺としては、そろそろお天道様も見たい感じですかね。」
「何よ、水那。私の仕事に文句があるの?」
「そういうわけではないんですがね。」
ここ数日ずっと雨である。日本列島にも梅雨が到来。それもこれも、水の神様である水無月のお陰である。
だが、ここしばらくは降りすぎではないかと思うくらいである。いや、庭の草木に水をやる手間が省けるという点では非常にありがたいが、普通の人間(お肌の潤いにはあまり興味なし)としては、そろそろ太陽にご対面したい。
「そりゃ、全然仕事してくれなくて空梅雨になるよりかは良いかもしれませんがね。たくさん降りすぎても、人間大変なんですよ。」
洗濯物が乾かないと嘆く奥様方。子供に採って来たカタツムリを自慢される奥様方。うようよと地面から出てきたミミズを誤って踏んでしまって悲鳴をあげる奥様方。
なんて可哀想なのだろう。
「……相変わらず、あなたのその『奥さま』にかける情熱は見事なものね。正直ちょっと引いたわよ、水那。」
「おや、人聞きの悪いことを言わないでください。俺は『奥さま』に限らず女性全般が好きですよ。」
今の事例が全部奥さまだったのは、何となくだ。だって、カタツムリを自慢される女子高生とかイメージがわかない。……やんちゃな彼氏とか?
「そんな感じで、たまには外を天気にしてみませんか?」
「いやよ。そうとなったら、ずーっと雨にしてやるわ。」
何がよくなかったのか、水無月はずっと雨にすると言い出した。水那は首を捻る。それは困る。世の奥様方、いや女性たちのために。
「ですが、そうなってしまっては、喜ぶ女性も多いかもしれませんよ。」
「え? どうして? あなたのさっきの話じゃ困るってことだったじゃない。」
困惑した表情で水無月は水那を見る。水那は笑顔で続ける。
「ほら、女子高生と雨と言えば、相合い傘じゃないですか。」
「なんですって!」
水無月は驚いて下界の様子を見始める。
「いたわ! 相合い傘しているカップル。しかも、相手はイケメン!」
しばらく探すつもりか、下界を見ることに集中している。その後ろで水那は更に追い討ちをかける。
「それに、たまに晴れたら、きっと外回りの会社員の方とか多くなりますよー。しかも、暑くて腕捲りしてるかも。」
「あ、雨でもいるはずです。」
見る対象をカップルから会社員に変えてぐるぐると見渡す。
「あ!ほら会社員発見。ちゃんといるじゃない」
「腕捲り、してますか?」
「してない……。でも、他にもいるはず……!
……、……いないわ。」
にんまりと口角が上がるのを水那はわかっていながら押さえられない。
「ほら、たまには太陽に頑張ってもらいましょう。」
「仕方ないわね。肌が潤っても心が潤ってなかったら意味がないもの。」
水無月は雨を止める準備に入る。
会社員の腕捲りが見たいがために雨を止める。
水那が女好きであるならば、水無月だって男好きだ。
だが、そんなことを言っては、そして水無月が認めてしまえばたぶん外は当分嵐が吹き荒れるので水那は言わない。だって、嵐に怯えている幼女は可哀想だから。
だんだんと、雨足が弱まってきた。
夏服の女子高生が見れるまであと少し。
「あの人もあの人も。みんな腕捲りしてるわ!一番上のボタンも開けてる!凄く良いわ、あの人。」
「やっぱり夏服の女子高生は良いわ~。いや、でもミニスカの女子大生も良いな。」




