12月
「嫌だよー!しーちゃん。仕事したくないよー!」
「えぇ、私も嫌で仕方ありませんが、これが私たちの仕事です。」
そう言いながら、師走とその神子シハスは書類を片付けていく。その書類の数たるや膨大な量だ。
師匠も走るほど忙しいから師走、と名付けられたその通り、神様たちも大いに忙しい。
年末というのは只でさえ回りもバタついているのだ。他の神も忙しなく働いていて落ち着きがない。
だからといって、その忙しい原因は別に師走にあるわけではなく、ただ1年の終わりだから忙しい訳であるが。たまに、他所の神様から12月を取り仕切る神様なら何とかしろ、という八つ当たりめいた苦情を寄せられる場合もある。
その神子であるシハスも忙しい。神殿の大掃除に始まり、1年を締め括る行事の数々、1月1日から新年を始めるための準備。1月の話は1月の神様や神子が出来ればよいのだが、この神殿は12の神様が順番に入って取り仕切っている。また、1つの神殿にはいれるのは1柱の神様のみ。そのため、12月の神様と1月の神様が一緒に入ることは出来ず、神様に仕える神子もまた入ることが出来ない。
そのため、1月の初めにある仕事の準備はシハスが行わなければならない。ちなみに、11月の神様、霜月に仕える神子である織雲も12月の分の仕事はある程度こなしていってくれるが、12月の行事はほとんど月末にあると言ってよい。そのため、織雲に頼める仕事は少なく、シハスの仕事が大幅に減るということはない。
「あぁぁあぁあ、どうして、毎年毎年こんなに忙しいのでしょうか!私だけ!毎年毎年!いい加減、労働改革を行っていただけないと、ストライキしますよ!」
「あわわわわ、しーちゃん落ち着いて!」
しーちゃんがストライキしちゃうと本当に困るよ、とあまりの仕事量にキレ始めたシハスを霜月が半泣きで宥める。
「このご時世、ブラック企業なんて流行りません!もう1人神子を増やすか、師走様の業務を変えていただかなければ。」
「うーん、1柱に1人の神子っていうのは絶対だけれども……。
仕事は私も変えて欲しいなぁ。」
彼らが忙しいのは年末だからという訳だけではない。
師走が司っている仕事にも問題があるのだ。
「だって、こんなに私もしーちゃんも頑張ってお仕事しているのに、人間は誰も誉めてくれないし、ていうか嫌われてるし……。」
「あー、もう!只でさえ忙しいのに泣かないでください!」
「う、ごめん。」
ボロボロと涙を流し始めた師走にティッシュを渡して、シハスは仕事に戻る。
「余計なことを言って申し訳ありませんでした。
さぁ、早く仕事を片付けてしまいましょう!」
「う、うん!」
余計なことを言ってしまったとシハスは後悔する。師走がこの仕事が嫌いだと知っていたのに。それでも、しっかりとやりきるところが、シハスがこの神様に仕えようと思った理由だ。
誰よりも優しく、誰よりも思いやりのある神様。
だからこそ、この仕事を任されたのだろう。
「しーちゃん!この人間の死因はこれでいいかな?」
「そうですね、この方でしたら家族に囲まれて老衰が適切かもしれませんね。」
12月――死の神
シハス――死蓮は、今年こそ師走とともに除夜の鐘を聞きながら、甘酒を飲むと決心した。




