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魔王より、世界へ。  作者: 笹座 昴
最終章 未来へと続く道
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エピローグ 『魔王の物語』


 茶色の髪の小さな女の子が、ベッドの上に座って、元気な目で同じ色の髪の女性を見上げています。

「お母さん、この絵本読んで!」

その女性は、一向に寝ようとしない女の子を少し困った表情で見つめてから、ベッドに腰掛けて、女の子から受け取った絵本を開きました。一度女の子の顔を優しく見つめてから、目線を絵本に移します。


 女性の静かで優しい声が、部屋に響き渡りました。




 昔、昔あるところに、魔王様がいました。


 魔王様のお仕事は、この世界のために、世界の魔力を整えることです。けれども、長い間ずっと一人ぼっちでそのお仕事をしていた魔王様は、だんだんこの世界のことがどうでもよくなってきました。なぜ自分は一人で、この世界のためにこの仕事をずっと続けなければならないのでしょうか。


 魔王様は、魔族領の果てにある魔王城を出て、人族領に向かいました。そこで、必死に生きる弱い弱い人族を見て、彼らで遊ぶことを思いつきます。ゴブリンに畑を荒らさせたり、ドラゴンに乗って町を壊したり、魔王様は、人族を傷つけて遊ぶようになりました。


 そんなある日のことです。魔王様はいつものように人族の町に出かけて、今日は何をして遊ぼうかと考えていました。そして、ふらりと立ち寄った教会で、魔王様は聖女様に出会われます。人々にそれはもう大切にされている聖女様を見た魔王様は、人族の止める声も聞かずに聖女様を魔王城に連れ帰ってしまいました。


 お優しい聖女様は、魔王城に一人ぼっちで暮らす、名すら持たない魔王様のことを気の毒に思いました。聖女様はしばらくの間、魔王城で魔王様と一緒に暮らすことを決めました。

 聖女様は名前のない魔王様に名前を贈り、魔王様のことをその名で呼ぶようになりました。そして聖女様は、魔王様と魔族領を巡り、魔王様に少しずつ『心』というものの存在を教えました。

 聖女様の努力のおかげで、魔王様は少しずつ『心』についてわかるようになりました。そして『心』を持つようになってはじめて魔王様は、これまで魔王様が人族にしてきた行いについて、後悔をするようになりました。


 過去の行いに苦しむ魔王様を見た聖女様は、魔王様に、人族に謝りに行くことを提案します。けれども突然、これまでの行いを謝りに来た魔王様を人族は信じませんでした。魔王様は、人族から石を投げられて、追い返されてしまいました。


 けれども魔王様は諦めませんでした。何度も何度も、人族に謝りに行きました。静かに寄り添われる聖女様のお姿もあって、次第に魔王様を信じるものが現れるようになりました。

 自分を信じてくれる人が現れて、魔王様は、聖女様と世界を旅することに決めました。そこで魔王様は聖女様と協力して、世界中のすべての困っている人々のお手伝いをしました。


 人族はついに魔王様をお許しになり、魔王様は人族と、すべての魔族と協力して、この世界の人々が楽しく暮らせるように、『この世界の決まり』を作られました。


 魔王様は、その後も聖女様とご一緒にこの世界の人々のために働き続けました。

 今でも、魔王様は魔王城で、私たちこの世界に住むすべての生き物のために魔力を整え続けてくださっています。


おしまい。




 女の子が布団に潜り込みます。

「お母さん、お休みなさい」

「お休みなさい」と女性が優しく返事をしながら、女の子の肩まで布団を掛けました。


Fin.


 弱っちい魔王様の物語に最後までお付き合いいただきまして、本当に、本当にありがとうございます!


 本編のその後的な話を番外編として書きました。かなりがっつりなので、ひと休憩しましたらどうぞ。


 笹座

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