潜在能力
「ちょっとまって!」
その声はマスターの家にいた少女のものであった。
「私もつれていって!」
唐突な要求だった。
「リーナ、貴女はまだ17でしょう、家のこともある、それは無理な提案だ。」
マスターの意見はごもっともだ、こんなかわいいこを旅に行かせるなんて、とんでもない!
「でも学校のテストでは満点とってるし、治癒や補助魔法なら、先生より扱えます!」
魔法?この世界は魔法もあるのか、能力とは別なのか?
「それはテストでしょう、足をひっぱるのは目に見えています。」
「それでも私は大魔法使いです!」
ほう、治癒魔法があるのはこちらにしては大分楽になる話だ。
ただ、それが彼女をつれていっていい理由にはならない。
「お爺様、私は無理と言っても行きます。ひとりでもいきます。」
「リーナ、私はリーナの為に言っているのです。
あの森の魔物はこことは段違いに強く、速い。
貴女の補助魔法でも追いつけません。しかも貴女は呪・・・」
「もういい!その話は何回も聞いた!裏切られるのももう慣れた!
でも行きたいの、ママやパパの仇を取りたいのよ!」
少女は泣いていた。
ハッと少女は自分は泣いているのに気づき、走り去っていった。
「リーナ!」
「親父さん、リーナはもういい歳だ、たくさん裏切られたが、
もうそれは仕方のないことだ、行かせてやったらどうよ。」
「ダメだ、もし行かせて、なにかのはずみで死んでしまったら、
あのこの親になんて言えばいい?20歳になるまでの我慢だ。
それまでは、絶対に行かせん。」
「すいません、なんか、申し訳ないことをして。」
「いや、君が気にすることはないよ。
リーナはいい子だが、両親をあそこの森の番人に殺されてしまってね、
その話になるといつもああなるんだ。」
「そうなんですか、それで、あのこの呪いって、なんでしょうか。
裏切られる、とかなんとか。」
「呪いというより潜在能力の話さ」
「潜在能力?」
「もしや君はここの人間じゃないね?」
「はい、異世界から飛ばされてきました。」
「そうか・・・」
マスターがまた暗い顔をした。どうしたのだろうか。
『VWT講座』
潜在能力とは
本来人間のなかに隠されている、能力とはまた別の能力。
人によって潜在能力は異なるため、一致された能力はない。
しかし、酷似の能力は多数ある。
副作用があったりする場合、呪いの潜在能力。
上乗せの良い効果があると、祝福の潜在能力。
と呼ばれたりするらしい。