決死のたたかい
奴隷暮らしをして約一年が経つ頃、おれはあることに気がついた。
向こうにいた頃と自分の姿が違うのだ。
なにも全部違うというわけではないが、すこし筋肉質で髪の色がほんのり赤みがかっていた。
一年前はいろいろと忙しくてそんなこと気にすることもなかったが約一年も奴隷として働くと、奴隷幹部なるものに就任することになるという。
マネルスの周りの世話をできるようになり、そのとき始めて知ったのである。
しかし久しぶりの自分の姿に違和感は感じなかった。
そこで自分は地球とは全く別の次元に来たのだと確信した。
「ほらアンタ、口より手を動かしてちょうだい。」
「わかりました。マネルス様。」
もういまではおれも立派な下僕...
いや、奴隷だ。
しかし、もう一年か、そろそろだな。
「ヴァン、最近調子はどうなんだよ」
とおれは語りかける。
最近バンには彼女が出来たらしく、毎日その娘と語りに行って仕事時間ギリギリまで帰ることが無くなってきている。(リア充は滅びてほしい)
おっと私情が出てしまったが、割とお似合いのバカップルである。
外に出れば姿には出さないがオーラが出ているのだ。
ヴァンの彼女の名前は【ディアゴ=アニール】
おれも彼女とよく話をするがアニールも無能力者たが、身体能力が高い、だから雇われたと聞いた。
故郷が彼のいた世界にとても似ていたらしく、直ぐになかよくなったらしい。
彼女は笑顔が素敵で、優しく話しやすい。
くそったれ、おれも彼女いない歴=年齢だからとかじゃないけどそんな存在が欲しいもんだなあ...
今日は週一回の買い物の日だ、マネルスのやつは大量に買い込みやがる。
荷物持ちできてるこっちの気持ちも考えてくれよな...
「キャアアアアアアッ!!」
なんだ?と声の方へ目を向けると母親と見える女性が断末魔をあげ倒れている、近くには5〜6歳だろうか、小さな子供がいる。
「おいおい、そこまでするこたあねえだろう。」
「アルバス、こいつはおれのお気に入りのデニムにアイスをつけやがったんだ。母親も殺されて当然だろう?」
「へへへっこれが能力貴族との身分の差よぅ...へへへ、残念だったな。嬢ちゃん。」
「己の無礼を悔いて死ね」
おれは反応もできず、ただ見ているだけだった、そのとき、目の端で影が飛びだした。
飛びだしたのはアニールだった。彼女は勇敢な性格だが無能力者では無謀だ。
勇敢と無謀はちがう。
だからおれは見ているだけだ。
それを追ってヴァンも飛び出した。マネルスは止めようとしたが遅かった。
彼らは身体能力が高い種族らしく、すぐに彼らのところまで辿り着いた。
まずい、齢17のおれでも流石にわかる。
人が死ぬ戦いになる。
すぐに二人にかけよるが、相手は能力者、しかも高度な。
対しておれは無能力者、鍛えてはいるが参戦する余裕はない、すまんな、ヴァン。
「誰だ貴様ら」
冷たい声が響く、こいつ、相当やばい。
本能がそう囁く。
「誰かなんて関係ないわ、服にアイスをつけただけ、そのぐらい笑って許してあげてもいいでしょう!」
「ほう、服にアイスをつけただけか、許してやってもいいが、条件があるな。」
「条件・・・?」
「そう、条件」
「貴様が死ぬことだ」
アニールの身体がはじけとんだ
・・・え?人ってこんな簡単に死ぬんだっけ?
「・・・ア、アニール?あれ、あれ?アニール?」
ヴァンは必死に肉片と化したアニールを集める。
「だれか、アニールを助けてくれ、お願いだ、なんでもする。まだ助かるだろ?なあ!」
無理だ、アニールは助からない。
ヴァンは受け入れられないんだ。
この運命に。
アニールの死に。
「ふむ、貴様はそのゴミのつがいか?」
ヴァンは聞いていない、いや、聞こえていないのか、必死に助けを求めている。
まるで壊れたラジオのように。
「目障りだ。」
役立たずのおれが止めるよりも早く、ヴァンの身体は砕け散った。
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遅くなりました。すみません。
展開が最近早くなってる気がします。
また、2日後に更新します。