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鑑定

 黄金龍の鱗亭のすぐ真隣にあった店が装備屋だった。装備屋のおっちゃんは俺達の体をベダベタと触って色々採寸した後、「駆け出しか」と呟いて古びた革の鎧とすね当て、それから木をけずった盾みたいなものを出してくる。


「金属鎧とかじゃねーのかよ、しかもボロいし」

「なーに言ってんだ、金属なんて着たらお前さんらはその場から動けんよ。あー、そっちの坊主は動けるかもしれんがな。見たとこ力自慢だろう」

「自慢ってことはないんだけど……」

「革なのはともかく、随分古いですけど、大丈夫なんですか?」


 幸宏が不安そうに言うと、おっちゃんは「そういうこと言うとぼったくられるから気を付けろよ」と肩をすくめた。


「革の胸当てはいつまでも使えるもんじゃない。はっきり言って戦闘スタイルが確立するまでのつなぎだ。盾も、お前らはもしかしたら使わなくなるかもしれん。戦い方がだいたい決まってから高いもん買ったほうが良いぞ。……ほれ、調整終わったぞ」


 方と脇を紐でくくったベストのような革鎧、ズボンの上から服ごと固定するように巻きつけたすね当て、ちゃんと剣を刺すところが付いてる革ベルト、腕にくくりつけられる小さい円盾。


「おお、冒険者っぽい装備になった」

「駆け出し丸出しの装備だがな」


 おっちゃんがフンと笑う。でもこれで問題なく魔獣討伐に行けるはずだ!


「よっしゃ、明日は朝から討伐だぜ!」


 俺が意気揚々と二人に声をかけると、


「やっぱり」

「行くしかないよねぇ」


 二人はげっそりした雰囲気でため息をついた。





 昨日ゆっくり眠ったせいか、今日は物音で目を覚ませた。

 窓の外から薄っすらと光が漏れているけど、朝というよりは明け方という雰囲気だ。そんな時間にも関わらず外からはかなりどたどたと足音や話し声が聞こてかなりうるさい。俺は昨日この騒がしさの中寝こけていたんだろうか。そりゃリューグのおっさんにねぼすけ扱いされるわ。

 二段ベッドの下で幸宏と和人も起き出す音がして、俺もベッドから降りた。


「本当に明け方からみんな活動してるんだね」

「昨日は全然気づかなかったよな。まーそんなことより、俺らもさっさと行こうぜ!」

「その前に、試したいことが二つある」


 幸宏が待ったを掛け、デカい石の付いた杖を取り出した。

 それを昨日買った鞄に向けて、


「ジャッジ」


 ふわっと白い部分が光る。


「――――ストップ」


 今度は俺達に杖を向けて、また同じ呪文を唱えた。

 幸宏はしばらく俺と和人を睨みつけて、ようやく魔法を止めた。


「何したの?」

「鑑定魔法、使えるんじゃないかと思って」

「鑑定! その発想はなかった! 俺もやりたい!」


 イソイソと幸宏よりは小さい杖を取り出して「ジャッジ!」と叫んだ。


 そしたら和人の姿の上に文字が浮かんで見る。


 高木和人 Lv1

 種族:人間

 称号:中学生、異世界の勇者、女神の祝福(極小)


 見れてるものは少ないが、間違いなく見えた。


「レベルいち」

「異世界の勇者」

「女神の祝福カッコ極小」


 みんなで見えてるものを言い合う。どうやら三人共同じことが書かれているようだ。


「すげええええええ!」

「レベル制、なんだね」

「極小ってなんだよ……」

「なんだよ二人共もっと喜べよ、これでレベル上げとかしやすくなんぜ!」

「まあ、魔物とかに会った時の目安には、なるかな」

「色々鑑定してみようぜ!」

「これ以上は帰ってくるまで待て、出かける前に魔力切れとかシャレにならん」

「う……」


 確かに討伐前に剣が持てなくなったら困る。ぐぬぬ。


「で、二つ試したいって言ってたよね? もう一つは?」

「ああ……ちょっと良いのが思いつかなかったから二人に聞きたいんだけど、異次元収納って出来ると思うか?」

「アイテムボックスか」

「実はその言葉はもう試した後だ」


 俺が即座に答えると、幸宏が困ったように笑った。

 アイテムボックスをもっとちゃんと英語っぽくか……洋ゲーはやったことないからさっぱりだな。四次元ポケットって英語で何て言うんだ?


「他の言い方だと、収納スペースはストレージ、とかかな? しまう事自体はストアか、レシーブ、っぽいかな。でもレシーブってなんか他の意味多そうで使いたくないね」


 和人が電子辞書を片手にノートにメモっていく。

 幸宏がソレを見て、


「ストア イン マイ ストレージ」


 手に持った鉄銭に向かって唱える。ふわっと黄色と紫の光が出て、


 鞄の中からチャリンと音がした。


「「「…………」」」


 幸宏が無言で学校鞄を開けると、中から鉄銭が出てきた。

 新手の手品かな?


「だめじゃん」

「時間短縮以上の効果はなさそうだね」

「うん、まあ、これは諦めるか」


 幸宏が荷物を作り始めた横で、俺は一応思いついた単語を幾つか走り書きした。


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