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街の買物

 複雑に模様が彫り込まれた銀の縁取りの中に、青い珠が取り付けられている。首から下げるために革紐が取り付けられていて、イソイソと首から下げると、真ん中の青い珠が一瞬ふわっと点滅した。すげえ、かっこいい。


「ソレをつけてる奴は冒険者だ。青がEランク、緑がD、黄色がC、橙がB、赤がA、白がSだ。上のランクのやつの忠告は聞いておけ。特に自分の一つ上のランクの奴らの忠告は直前まで苦労してた内容だ、聞いておかんと痛い目見ることがあるぞ」

「依頼ってどうやって受けるんですか?」


 リューグのオッサンがちょいちょいと後ろを指す。振り返ると、壁に張り紙がしてあった。メニューかなんかだと思ってたけど、依頼書だった。すげえ、それっぽい。


「その辺は持ち込みの依頼だな。下のほうが低ランク、上のほうが高ランク向けだ。Eも受けられる依頼はまあ、荷物持ちが大半だな。ソレも最近は少ないが……。ギルドが発行してる常設依頼は薬草の採取と魔獣討伐だ。こっちはランク制限はない。やったらやった分の報酬だ。さっきも言ったが死んでも自己責任だ」

「魔獣討伐……」


 二人が不安そうな顔をする。しみったれた顔しやがって。魔獣なんて俺がぶっ飛ばしてやる。


「それから坊主ら、一応聞いておく」

「はい」

「その武器は、どこで手に入れた?」


 ベルトに挿した剣をさわる。すげえ軽くてもってるのを忘れることがある剣だ。


「……借りました、全部終わったら返します」

「どこで借りた?」


 幸宏の返答に、オッサンが尖った声で聞き返す。

 幸宏がちらりとこちらを見る。和人がオッサンの声にビビって小さくなっている。

 どこで借りた、というのは難しい質問だった。勇者の神殿で、女神から借りた、歴代勇者の装備だ。だけど昨日神殿のことを軽く言うととっ捕まるみたいなことを言っていた。それは困る。悪いことをしているつもりはないんだけど、死んだ日とか引退した人の装備を本人に無断で借用してることには変わりない。


「多分、死んだ人の甲冑から、です」

「多分か」

「借りる時にあんまり、詳しいことは聞けなかったので」


 リューグのおっさんは険しい顔になってしばらく黙り、固く目を瞑って、そして小さくため息を吐いた。


「ユキヒロつったか、お前の持ってるその杖の元の持ち主の名前はサリーナ、カズトの持ってる大剣の持ち主はアルベルトだ。覚えておけ」


 え?


「死者から一級品の武器を借り受けたんだ、名前くらいは覚えておけ。相手に対する礼儀を忘れるな」

「俺のは!? 俺の武器は誰の!?」

「知らん。流石になんでも知ってるわけじゃない。あと、このことは他言無用だ。あまり言いふらすな」

「まあ流石に」

「死んだ人の武器使ってますとか、ちょっと言えないよね」


 なんだよ、みんな納得しやがって。俺の武器が誰のかちょー気になる。くっそー。




 その後街のざっとした店の配置を聞いて、買物をした。俺としては早速腕試しに魔獣刈りに出かけたかったんだけど、二人に全力で止められたしリューグのオッサンに「その格好で行く気か?」と正気を疑われてしまったので仕方なく買物に出た。

 街の真ん中付近、神殿の周りをぐるっと一週する形の通りに色んな店が並んでいて、そこで色々買物をした。

 とりあえず着替えを何着かとタオルだ。着替えは持ってなかったし、シャツの裾が既に汚れてるし、確かに必要だと思った。呉服屋って書いてある店に入ったら、店の人がにこにこ顔で「どんな服を仕立てましょうか」って聞いてきた。完成まで一週間とかほざいてたから速攻で出て古着屋に行った。古着もデザインがばらばらだ。もっと大衆向けに既製品の服とか売ってねーのかよ。

 それからリュックサックと水筒。リュックはともかく、水筒も革袋だった。水漏れが若干心配だけど、他になかったから仕方なく買った。

 靴の替えも買おうかと思ったんだけど、売られていたのが木の靴で、めっちゃ歩きづらそうだったから買わなかった。

 これだけ買って残りは銀貨8枚と銅貨5枚と鉄銭3枚。ちなみにお金のレートは暗算が間違ってなければ鉄銭十枚で銅貨一枚、銅貨十枚で銀貨一枚だった。リューグのオッサンが銅貨多めにくれたからお金のレートが変な数字なんじゃないかと思ってたけど、よく使う硬貨だから多めにくれただけのようだ。


「一旦酒場に戻ろう」


 幸宏がむっすりした顔ですっげえ何度もそう言うから、しょうがなく宿に戻る。野宿用のテントとかキャンプ用品みたいのとか絶対買ったほうが良いと思うけど、しょうがなく戻る。


「早かったじゃねえか。……荷物少なくないか?」

「着替えに戻ってきました」


 幸宏がさっきからの機嫌悪そーな顔を崩さずに早口目に言うと、リューグのオッサンは俺たちを一度上から下まで見て、まあそのほうが無難か、とボリボリ頭をかいた。


「今日も泊まるなら料金は昨日と同じだ。三日以上連泊するなら少し安くしとくぞ」

「連泊かぁ」


 RPGサクサクプレイ派としては一日でいくつも町を移動するのが普通だが、常識的に考えてそんなに沢山移動できるはずもない。


「連泊でいいんじゃないかな。とりあえず三日くらいはここにいると思うし」


 和人もそう言うので、三泊分の金を払う。財布の中身が心もとなくなってきたので追加で宝石も換金した。

 宝石の相場わかんねーし全部交換でも良かったかもと思ったんだけど、硬貨より宝石のが軽いんだよ。コインってたくさん持ってると超重てえ。なんで大きい金が紙じゃないんだ。


 ゴワゴワした安物の服を着てベルトをつけたら、昨日酒場に居た冒険者そっくりの格好になった。


 汚れていい古着に着替えて、両手の空くリュックサックに荷物を詰め直し、さあこれで冒険に行けるんじゃないか? 武器の試し切りくらいはしてみようぜ!


「防具何も付けずに行くとか、死にたいのか?」



 リューグのオッサンにまた正気を疑われてしまった。

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