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05.魔法学院

勇輝は先程までいた魔法学園の門の前に立っていた。

 ひったくりから女の子の杖を取り戻した際にお礼をしたいと言われ、付いてきたら学園に連れてこられたのだ。

 女の子はそのまま門を通っていく。門番の兵士は女の子に対して敬礼をしていた。

 

 「立ち止まってどうされたのですか?こちらですのでどうぞお通りください」

 

 (どうぞって言われてもなー……敷地内に入って大丈夫なのか? さっきは門番に求人募集の件で中に入れてもらったが)


 門番の方を向くと、ちらりとこちらに視線を向けられるが特に何も言われることなく、敷地内に入れた。

 そして校舎の中へと入っていく。

 通された部屋は数々の調度品が並べられており、部屋の真ん中には重厚なアンティークテーブルと黒いフカフカしたソファーが並べられていた。

 いわゆる応接室といったところだろうか。


 「どうぞお座りになってお待ちください」


 「あ、ああ……。なんか高そうなソファーだね。俺なんかが座っていいのかな」


 「ふふふ。椅子は座るためにあるのですよ?」


 口元に手を当てて女の子は笑う。


 言われるがままにソファーに座る。高級品なのだろう、座るとソファーが深く沈んでいく。このフカフカ感は初めての体験であった。


 女の子が出て行ってから十数分経った頃、ドアがノックされ先ほどの女の子が戻ってくる。


 「お待たせしました。どうぞこちらへいらしてください」


 「ああ、わかった」


 また別の部屋へ案内されるのだろうか。廊下を歩いてくと、一つの重厚な扉の前で女の子は立ち止まった。


 「お連れ致しました。お父様」


 部屋の中から「入りたまへ」という声が聞こえてくる。

 中に入ると高級そうな紳士服をきた髭の生えたダンディーな男が椅子に座っていた。

 大きなアンティーク机に背もたれの大きな椅子に座っていた男性がこちらを見ると、席から立ち上がり近づいてくる。


 「この度は娘が大変お世話になったようで。私はこの学園で学園長を務めるダリル=アーク=ブレアだ」


 「申し遅れました。わたくしセシル=アーク=ブレアといいます」


 勇輝は目が点になる。仕事先を求めて来た学園の学園長の娘らしい。ダリルは立ち上がった椅子に再度座り直す。


 「娘の杖は、私の妻が生前使っていた物でね。セシルにとっては大事なものだったんだ。だからそれを盗人から取り戻してくれたことに改めて礼を言う」


 両手の肘を机につけて、手を軽く握りながら学園長はこちら見ている。


 「ところで、君は何処に住んでいるのかな? 後日改めてお礼の品を届けたいのだが」


 セシルはニコニコとこちらを見ている。


 「あー、実はこの国にきたのはつい先日で、外の国から来たんです。(嘘は要ってない)だから定住している場所というのは無い……かな。生活費を稼ぐのに仕事先を探してたら、偶々娘さんを助けただけであってお礼をされる必要もないですよ」


 「おお、そうであったのか。見たところ、珍しい服装に黒髪黒眼なんて初めて見たものでな。ではどうかね、仕事先を探していると言ったがこの学園で働いてみないかね? 雑用だが使用人を募集しているところだったのだ。勿論、住む場所も提供するぞ」


 学園長が両手を広げて提案してくる。 

 それは勇輝にとっても渡りに船であった。まさかこんな形で一度諦めてたことがすんなり通るとは、世の中分からないものである。


 「それは有難いです。こちらとしてもお願いします」


 「では決まりだ。おお、そういえば君の名前を聞いていなかったな」


 思い出したかのように学園長は聞いてきた。


 「青井勇輝です。ダリル学園長」


 隣で大人しくしていたセシルが勇輝の名前を小声で何度も呟く。


 「アオイ・ユウキか。ではアオイ、職員の者に手続きを済まさせるから、先程までいた部屋で待っていてくれ。その後、使用人に仕事の内容を確認しておいてくれ。セシル、そろそろ授業が始まる時間だぞ。お前はもう戻りなさい」


 「はい、わかりました」

 

 ダリル学園長は話はこれで終わりだとばかりに、椅子の背もたれに深く持たれる。

 勇輝とセシルは部屋を出て先ほどの応接室の前まで戻ってくる。




 「まさかアオイ様がこの学園で働くことになるとは思いもしませんでした」


 「ああ、俺もまさかこんな展開になるとは思っても見なかったよ。逆にこっちがセシルに大きな借りができちゃったね。お仕事頑張らせていただきますよ、お嬢様」


 「まぁ、お嬢様だなんて」


 セシルがくすくすと笑う。


 「ああ、それと雇い主のお嬢様なんだから俺のことは様なんてつけるのはやめてくれ。他の人かみたら何事だと思われるよ」


 「いいえ、ダメです。アオイ様はわたくしの大切な物を取り戻してくれた恩人なのですから。本当に、大切な物なのです……」


 母の形見だという杖を大事そうに抱き抱えるセシル。本当に大切な物なのだろう。

 

 「それと、わたくしのことはそのままセシルと読んでくださいませ。お嬢様だなんて嫌ですよ?」


 「セシルがそれでいいんだったらそうするよ」


 「ええ。そうして下さいませ。ではわたくしは教室に戻りますね。また後ほど会いましょう」


 品のあるお辞儀して、セシルは自分の教室へと戻っていった。セシルの姿が見えなくなるまで勇輝は後ろ姿を見ていた。

 応接室でソファーで腰掛けながら一時間くらいぼーっとして待っていると、メイド服を来た女性が入ってきた。


 「入るわよー。君がアオイ君だね。手続きは済んだから次は仕事用の服を支給するわ。こちらに来てちょうだい」


 「わかりました」


 20代中半だろうか。身長170cmくらいで紫髪ロングヘア、しかも大人の色香を醸し出すような見事なスタイルだった。


 着替え室に向かう途中で女性が自己紹介を始める。


 「暫く君の教育係になったジョディ=ゴーンよ。ビシバシ仕事を教えていくからね新人くん」


 振り向き、肩をポン!と叩いてきながらウインクをするジョディ。

 色香を醸し出す女性がボディタッチなんてしたら、男なんてコロッと勘違いしてしまいそうだなと勇輝は思った。

 実際、既に勘違いして恋してる人もいるのかもしれない。


 「死なない程度によろしくお願いします!」


 「ちょっと、それじゃ私が鬼教官みたいに聞こえるじゃないー」


 ジョディは頬を膨らませる。ちょっと可愛いと思った。


 「すみません」


 「まぁ、いいわ。上から話は聞いてるから。こういう仕事は慣れてないかと思うけど、ゆっくり仕事を覚えていけばいいわ」


 そう言ってる間に着替え室の前に到着する。


 「じゃー、この着替え室の中に君の仕事着を出してあるから着替えてきてね」


 こくりと頷き、部屋の中に入る。そしてテーブルの上にそれは置いてあった。

 それを広げて見ると勇輝は驚愕する。


 「え”…これを着ろというのか」


 暫くし、着替え終わると鏡の前で勇輝はどうしたものかと思っていた。


 「まさかなとは思ったけど、燕尾服を着させられるとは……。そういえば仕事内容まだ聞いてなかったな」


 うまく仕事をこなせていけるかなと不安に思う勇輝であった。

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