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16.報告(1)

 勇輝たちは魔法学園に帰ってきた。

 王都に着き城門をくぐった時、勇輝達は数奇な目で見られていた。それもそのはずである。魔法学園の生徒数名が王国騎士隊に連れられて歩いていたからだ。

 何も知らない者からすれば、それは連行されている姿に見えるだろう。

 魔法学園についてからもそうである。学園の教師達がその姿を見たとき、事務棟から一斉に出てきて何事かと騎士1番隊序列5位ヴェルダンディ=ダン=ダスクに問いかけた。

 そんな騒ぎを聞きつけ学園に残っていた2~3学年の生徒、又は先に学園に戻ってきた一部の1学年も校舎の窓から顔を覗かす。

 

 「こ、ここここれはどういうことでしょうか。我が学園の生徒が何かしたのでしょうか」


 教師の中でも結構な地位に位置するのであろう。一人の教師が第一声を発する。ただし、ビビリまくりである。


 「我が王国騎士隊と戦闘中の魔物と、そちらの学園の生徒が巻き込まれてしまってな。それで安全を考慮しこちらまで護衛してきたのだ」


 「そ、そそそそうでありましたか。それは有難うございます」


 ペコペコしまくりである。勇輝は取引先に頭を下げるサラリーマンのイメージを思い浮かべた。

 

 「では、確かに送り届けた。失礼するぞ」


 ヴェルダンディはそう言い、分隊と共に学園から出ていった。 


 「君たち、災難だったようだね。とりあえず、校舎に入り休みなさい。それと、同行していた先生方は事務棟で事の経緯を説明してもらいます。今は学園長が不在なので判断は後程に」


 何人かの生徒は相当疲れていたのだろう、言われた通りに校舎へと歩いていく。その場にはルシア、セシル、ミリア、グレン、ジョディが残っていた。

 

 「さてと、俺はどうすっかな。とりあえず、エールでも飲んでくるか!」


 グレンが職員寮の食堂へ向かおうとすると、ジョディにガシッと首根っこを掴まれる。


 「あんた、ポーションで腕の骨折が治ったからって、それはないでしょう。とりあえず、念の為に医務室に行きなさい。ほら、付いて行ってあげるから来なさい」


 「マジっすか!ジョディさん!そんなに俺のことが心配で!?」


 「グレン、あんた頭の中身も見てもらったほうがいいわね」


 そう言いつつ、ジョディはグレンを首根っこを掴んだまま引きずっていく。グレンは「ツンツンなジョディさんも素敵だ」と悶えていた。

 ジョディは思い出したかのように止まり、勇輝の方へ振り向く。


 「あ、そだ。アオイ君、後でセバス様の所に報告しに行くから、部屋で待っていてちょうだい」


 「わかりました」

 

 ジョディは再度グレンを引きずりながら歩いて行った。


 (あれどう見てもグレンの生傷増やしてるだろう……しかし、それでもグレン嬉しそうだな。あいつは実はドMなんじゃないか)


 そんなグレンを生暖かく見守るのであった。

 

 「あの、アオイさ――きゃっ」


 「セシルゥー、あたしもう疲れたー! 部屋まで連れて行ってー」


 「ちょ、ちょっとミリアさん!? きゃっ」


 「ほらほら~♪」

 

 ミリアはセシルの背中に寄りかかると、そのまま寮まで押していくのであった。

 ルシアにしか見えないようにウインクをしながら。

 そんなミリアの応援にルシアは決意を改める。


 「あいつら仲いいなー。んじゃ、俺も迎えが来るまで部屋で待機してるかな」

 

 そう言うと左袖を掴まれる。ルシアを見ると袖を摘みながら上目使いでこちらを見ていた。


 「わ、私も勇輝の部屋に……い、行っていいですか……?」


 ルシアの頬がほんのりと赤く染まっていた。

 勇輝は一瞬何事かと思った。女の子が男の部屋に来たいと言ってきたのだ。

 しかも、

   頬 を 染 め な が ら 。

 勇輝は焦る。え? いいの? と。女の子からそのようなことを言われたら、男は淡い期待を持つだろう。

 いや、むしろ絶対そう思う。


 (いや、しかしまだわからない。ルシアのことだからただ純粋に部屋に遊びに来たいって言ってるだけかもしれないし)


 勇輝は持ち前の理性をフル動員させ、一呼吸し努めて声が上ずらないように返事をする。


 「あ、ああ……。何もない部屋だけど」


 「う、うん……」


 きゅっと摘まれた袖に力が強まる。

 

 (か、可愛い……いや、いかんいかん! 理性を保て俺!)

 

 「じゃ、じゃあ行くか」


 「ぅ、うん……」


 勇輝は左右の手足が同時に出ないよう、緊張したまま歩く。掴んだ袖は離さず、顔を伏せながらルシアは勇輝の横を付いて行った。



 ◇

 


 「どうぞ」


 「お、お邪魔します……」


 「適当にその辺にでも座ってよ。今、水を入れてくるか」

 

 ルシアは職員寮に案内され、勇輝の部屋へと入っていった。部屋の中には簡易ベット、タンス、小さな机と椅子が置かれてる。

 椅子に腰掛けようとしたら躓いてしまい、ルシアは顔からベットに突っ込んだ。

 

 「へぶっ!」


 「はは、ルシア大丈夫か――――ブフゥッ!!!」


 勇輝は水にグラスに注ぎルシアの方へ振り向くと其処には、ベットに突っ伏したまま短いスカートが捲れ、純白なパンツと可愛いお尻が顕になっていたのである。

 眼をつむり顔を横に逸らしながら勇輝はルシアにスカートが捲れていることを伝える。


 「ル、ルシア! スカート! スカート捲れてる!」


 「え? ……きゃっ!!」

 

 ルシアは急いでスカートを正し、上目遣いで勇輝を見る。


 「…………ユウキの……えっち」


 「ぐはっ!!」


 ベットの上で足を崩して座っているルシアの太ももが、勇輝の理性を狂わす。

 勇輝の脳内で天使と悪魔がせめぎ合っていた。



 悪魔『襲っちまえ勇輝! 女が男の部屋に来てパンツまで見せるってことはOKなんだよ!』


 天使『ダメです! 男として欲望のままに女性を襲ってはいけません! 紳士的に対応すべきです!』


 悪魔『うるせぇ! 快楽に身を任しちまえばいいんだよ! この女だってお前を求めてるんだ!』


 天使『だからダメです! 勘違いだったらどうするのです! 婦女暴行で貴方はこの世界で生きていけなくなりますよ!』


 などと脳内で天使と悪魔のやり取りを聞いていると、ルシアの声で我にかえる。


 「あの……ね、ユウキ。……今日は助けてくれて有難う。私……凄く嬉しかったんだ……」


 「ルシア……」


 「ユウキは、落ちこぼれの私を支えてくれるし……その……」


 勇輝はルシアの隣に座る。真剣にお礼を言ってくるルシアに、不埒な考えを抱いていた自分を情けなく思った。


 この子は、純粋なんだと。


 「……どうしてもお礼を言いたかったの……有難うユウキ……」

 

 ルシアは眼を潤ませながら勇輝の顔を見つめていた。勇輝もルシアの顔を見つめる。

 

 「………ルシア」


 「………ユウキ」


 そしてそのまま二人の顔が近づき、唇が触れようとした時――――。


 コンコンッ!


 「アオイ君いる? セバス様の所に報告しに行くわよ」


 勇輝とルシアは飛び跳ねるようにお互いの距離を取る。そして勇輝はそのままドアの方へと向かいドアを開ける。


 「セバス様の所に行くわよって、どうしたの? 顔真っ赤だけど………ん?」


 ジョディが勇輝の異常に気づき、ドアの空いた隙間からチラリと覗いてみると、顔を真っ赤にしたルシアがベットに座っていた。

 直ぐ様状況を悟り、ジョディはニヤニヤし始めた。


 「邪魔しちゃって悪かったわね」


 「な、なななんのことですか?」


 勇輝はとぼけて見たが、ジョディのニヤニヤは止まらない。しかもルシアは恥ずかしさMAXなのか顔を真っ赤にし何も言わないので、どうしようもない状況だった。


 「話を戻すけど、セバス様の所に報告しに行くわよ」


 「あ、はい。直ぐ出れます。ルシア、ごめん。俺このまま行くから、しばらくの間この部屋で休んでいていいから」


 そして勇輝はジョディに連れられて部屋を出て行った。

 ルシアは拗ねた声で呟く。


 「もうちょっとでキス……できたのにな……」


 ベットに転がり勇輝の枕に顔を埋めるルシア。


 「えへへ……ユウキの匂いがする♪」


 この場に本人がいたら鼻血ものだった。


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