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11.魔物討伐(3)

読んでくれる方がいることに喜びを感じます。

 魔法学園の生徒たちが王都から出発してから1時間程のこと。

 王都の城門を警備をしていた兵士が、馬に乗ったボロボロの兵士を発見する。


 「おい! どうした! 何があった!?」


 「ハァ……ハァ……私は騎士8番隊の者だ。序列5位ロードス殿と共に西の森で討伐命令を遂行していたのだが、突然、変異種のフォレストベアーに遭遇し9人犠牲になった。現在、ロードス殿が囮となって時間稼ぎをしてくれている。た、頼む……至急応援を……あの魔物は、強さが半端ではない……」


 「待っていろ! 今すぐに報告に向かわせる! おい! 王宮まで馬を走らせグランドマスターに報告しろ!」


 警備兵の一人が早馬に乗って王宮まで走り出す。


 「まずいな。魔法学園の生徒たちの一部のパーティーが西に向かっていったな……。どうか無事でいてくれ」


 警備兵は西の空を見て呟く。




 ◇




 「なに!? ロードスの隊が!? う~む、5メートルを超える変異種のフォレストベアーか。魔法学園の生徒も課外授業で出ていたという話だったな。まずいぞ、非常にまずい」


 騎士1番隊序列1位ゾルディ=クロス=ロードは白髭を摩りながら思案する。

 騎士隊は1番隊から10番隊まである。更に細分化すると、一つの隊の中に序列1~10位があり、強さによってランク分けされている。

 1番隊序列1位のゾルディは騎士隊の中で最強と歌われていて、総長グランドマスターと呼ばれている。


 「私が出よう。1番隊で今いるのは……うむ、序列3位~5位までか。では小隊を編成し私に続け。それと魔道士部隊からも分隊を出すように連絡をいれてくれ。」


 グランドマスターはマントを翻し出撃準備を始めた。




 ◇




 魔法学園一年生120名、計20組のパーティーは王国から東側、南側、西側でそれぞれ別れて実習をしている。

 ルシア達とセシル達のパーティーは西の森付近で課外授業を行っていた。

 他のパーティーの邪魔にならぬよう、お互いに離れて1km程の距離がある。


 「えー、ではこの草原辺りで実習授業を行うとする。討伐対象は『スピットラビット』だ。この課題の採点評価は個々の能力評価はもちろんだが、

チームワークも評価される。なお、ただ闇雲に討伐するだけでなく、もちろん魔石回収も評価対象とする。時間は2時間。ではパーティー内で取り決めしたら始めなさい。」


 魔道教師は課題内容を説明する。セシルたち生徒6名はそれぞれの役割を相談した後、対象となるスピットラビットを探し始める。

 スピットラビットは大人しい魔物で植物を餌とする魔物だ。


 こちらから攻撃しない限りは襲ってこない。だが、戦闘となった場合は注意が必要になる。

 脚力が強く、地面を蹴り上げながらの突進は結構な威力がある為だ。まともに受ければ肋骨は折れてしまう程である。


 草原の草は膝した半分までの高さなので、スピットラビットを見つけるには十分な見やすさだった。

 現に草をモグモグ食べながらお尻をこちらに向けているスピットラビットがいる。


 「外見だけ見るとでっかいウサギにしか見えないんだが、作物食い荒らすって言うし害獣なんだろうなー」


 セシル達はというと、別のスピットラビットを標的にしたらしく、攻撃を開始しようとしていた。

 

 「足止めをします! チェインバインド!!」


 一人の女子生徒がスピットラビットに魔法をかける。

 すると草を食べていたスピットラビットの周りに半透明の鎖が幾重にも現れ束縛をする。


 その瞬間に二人の男子学生が攻撃魔法を唱える。


 「「サンダーボルト!!」」


 魔法を唱えた瞬間、それぞれの杖から発射された紫電がスピットラビットを襲う。攻撃を受けた瞬間、半透明の鎖は消えてしまったが雷魔法の付加効果の影響だろう、スピットラビットは痙攣していた。どうやら麻痺したようだ。


 続けて、セシルと別の女子生徒が更に止めの攻撃魔法を唱える。


 「「ファイアーボール!!」」


 杖の先から現れた火炎が渦を巻きながら凝縮し、一つの火球へと変わる。ソフトボールくらいまでの大きさまで膨らみ、そしてスピットラビット目掛けて発射された。

 麻痺で動けない状態なので避けられることもなく、命中した。断末魔を上げスピットラビットは灰になる。そこへ最後の男子学生が近寄り、灰の中から光る石を取り出した。

 それは魔石であった。 

 

 生徒達は歓喜を上げながらハイタッチをしている。セシルは勇輝の方へ振り向き「アオイ様ー! やりましたー!」を声を上げて喜んでいた。

 そんなセシルに勇輝は手を振りながら答える


 「へー、皆凄いな」


 勇輝の傍にいた魔導教師が今の攻撃の流れを説明し始めた。


 「そうですね。効果は短いですが束縛魔法で動きを止めた後、速射性の攻撃魔法でダメージを与えさらに動きを止める。そして速射性は劣るが火力のある魔法で止めを刺す。

 ちゃんと魔法の特性を理解し、それをチームでカバーしている。初実践としては素晴らしい評価です」


 魔導教員は洋紙に評価ポイントを書いていた。


 「魔法の特性ですか?」


 「ええ、そもそも魔法は万能ではありません。一長一短なのですよ。強力な魔法であればある程、発動までに時間が掛かる。

 その間に近接戦闘を持ち込まれたらひとたまりもありませんね」


 「なるほど」


 それぞれの状況に合わせて魔法を使うことの難しさを知る勇輝であった。


 

 1時間ばかり狩りをし、セシル達は休憩を取る。

 勇輝はトランク型の魔導具から飲み物を人数分取り出し用意する。セシルたちが休憩している間、同行している兵士二人が周囲を警戒する。

 休憩している間、学生の皆は順調に課題をこなせていることに安堵しているようだった。


 「皆凄いね。それぞれ役割分担して魔物を倒しちゃうんだから。教師の人も褒めてたよ」


 勇輝は皆を褒める。


 「セシルさんの指示があったからここまでうまくいったんです」


 「確かに、セシルさんの的確な指示があったから上手くいってるようなもんだもんな」


 「ああ、俺だったらとりあえず攻撃ってくらいしか思いつかんわ」


 「それじゃ評価落ちちゃうじゃないー」


 皆それぞれセシルを褒めていた。 


 「い、いえ、そんなわたくしは」


 セシルは照れているのかモジモジしながら、勇輝の方へとちらりと見る。


 「はは。照れんなって。皆セシルのことを評価してるんだから、もっと自信持て。な?」


 勇輝はニカッっと笑いながら、そんなセシルの頭をワシャワシャと撫でる。


 「は、はい……」


 セシルは顔を真っ赤にしていた。

 休憩を終え狩りを始めようかとした矢先、突然森の方角から獣の大きな咆哮が聞こえた。



 『グオオオォォオ!』



 その辺りは、丁度ルシア達のパーティーが実習を行っていた場所であった。

 音のする方へとじっと見つめる。


 「まさか……」


 勇輝は嫌な胸騒ぎを覚え、荷物をそのままにして直ぐにその方角へと駆け出した。

 

 「い、今のは……。え? ア、アオイ様!? 危ないですわ! 待って!」


 そして突然駆け出した勇輝をセシルが追いかけていく。


 「君たち待ちたまへ!! 危険だ!おい!」


 魔導教師の静止の声を無視し、二人は駆け出していた。


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