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ミドルフェイズ 合流(2)

【ミドルフェイズ シーン②:合流(カスガ、天太郎)】


GM「次は、天太郎のシーンです」

天太郎「はいはい」

GM「消えてしまった蓮華のことを、誰も覚えてはいない。スマートフォンには、蓮華の元に送られてきた謎の男からのメッセージ」

天太郎「男ってわかるんだ」

GM「多分男でしょう。送信したユーザーの名前が“ライゾウ”だからね」

天太郎「おお……」

テレン「ライゾウ……!」





 ライゾウ。それは奇しくも、事件発生と同時期に消息を絶ったロンギヌスのエージェント、英雷蔵と同じ名前であったが、当然のごとく天太郎は知らない。





GM「あとは、ライゾウのユーザーアカウントで唯一お気に入りに公開されている“異世界忍者戦記”。蓮華が読んでいたのと同じものですね」

天太郎「私も読んでいます。文句を言いながら」(一同笑

GM「この2つが手がかりですね。……これ一応、天太郎的にも蓮華を探す流れで良いんだよね?(笑」

天太郎「はい。蓮華を探す流れです」

GM「不安になってしまうほど君が薄情だったから……」

天太郎「大丈夫です! 蓮華を探しましょう!(笑」

GM「はい。良かった(笑)。このシーンは一応ですね、天太郎が蓮華の手がかりの片方である、異世界忍者戦記の作者とですね、コンタクトをとってもらうシーンになります。『読者が消えていておかしい』と……」

天太郎「(めっちゃシリアスな顔で)おかしい……」

カスガ「うん、おかしい。俺の読者が……」

GM「狙ってたわけじゃないんですが、男と女でキレーに分かれましたね」

猫子「これ、急いで全員合流しないと危ないな!」(一同笑

GM「そうだねぇ。カスガのケツが危ないんで……(笑」

カスガ「(特に根拠もなさそうに)大丈夫だよ」

天太郎「それじゃあですねー。異世界忍者戦記の作者さんとライゾウさんの両方に、メッセージを送ります。自分の方ではなく、蓮華のアカウントで」

GM「お、了解です」





 ここでGMが嬉しかったのは、天太郎がGMの出した情報を元に、自発的に行動を選択してくれたことだ。

 何度か言っているように、今回の参加者は全員がほぼ初プレイと言える。基本、物語解決に必要な情報や行動を、GMが誘導するという場面がいくらかあった。右も左もわからないので、ごくごく当然のことと言える。ただ、キャラクターの主体性は若干犠牲になるなぁと、歯がゆい思いがあったのは事実だ。


 この時、孫の手さんは“孫野天太郎”というキャラクターのモチベーションと行動原理を理解し、GMの持って行きたい展開と擦り合わせ、与えられた情報を元に“両者にメッセージを送る”という行動を選択したのである。

 そしてこの瞬間から、孫の手先生のTRPGプレイヤーとしての素質が開花していくのだ!





GM「どんな感じのメッセージを送りますか?」

天太郎「そうですねー。まず、蓮華に成りすまして、『ファンです』みたいな内容のを、異世界忍者戦記の作者さんに。ライゾウの方には『異世界に行けなかったんですけど』って送ります」

猫子「ほう!」

テレン「おおー!」

GM「上手いね!」

テレン「頭回るなこいつ……!」

猫子「炎のサダメだからな。異世界を救ってきているくらいだし」

GM「こっちのチームは“リビングレジェンド”と“炎のサダメ”なので、凄い頼もしいね」

テレン「それに比べてこっちのヘッポコ3人組は……」(一同笑

猫子「オカマとピグモンがいなかったらまともに進んでいなかったな!(笑」





 ピグモンというのは巫女子の人形である。大量にある指人形から適当にチョイスした。





タルティエ(←何かがツボに入ったのかすごい笑っている)

GM「神と吸血鬼とプロフェッショナルなんだけどね。オカマとピグモンがいないと……(笑」

テレン「話、話進めて(笑」

GM「はい。えーと、ではメッセージを送りました。(ちらりとカスガを見て)カスガの方に、天太郎――アカウントネームは蓮華ちゃんのものですが、『ファンです』っていうメールが届きます」

猫子「小説情報見ながらF5連打してたら届いたんだね」

テレン「増えろ! 増えろ! ブクマ増えろ!」

GM「今となっては3人残ったファンのうちの……」

テレン「あっ、3人になった! よしっ!」

GM「その中の一人が、あなたにファンですっていうメールを送ってきます」

カスガ「嬉しいよね。お返事に『ありがとう』って書いて送ります」

GM「送ります。はい!」(天太郎にパスする

天太郎「何度かメッセージをやり取りして、自然な話の流れで、『最近、身近なところで、変なことありませんでしたか?』って、探るような感じで送ります」

カスガ「『……実は最近、ブクマしていたアカウントがゴッソリ減っていて』」(一同笑

猫子「ごっそり!(笑」

GM「哀しい……!」

テレン「読者に言って良いような話じゃない気がするなぁ(笑」

GM「でも、カスガさんの知り合いはみんなアカウントごと消滅してるし……」

カスガ「そう。他に相談できる奴がおらんし。とりあえず、なんか知ってそうなメッセージやったからな。事情を説明する」

天太郎「じゃあ、こちらからも身近な人間が一人いなくなったことを伝えます」

カスガ「こっちも知り合いが消えたと送ります」

天太郎「色々情報交換をしたいんですが、メッセージだけだと埒が明かないんで、どっかで直接会ってお話ししますか、と」

GM「オフ会だ! しかも蓮華ちゃんのアカウントで! ネカマじゃねーか!」(一同笑





 作中の小説投稿サイトは実在のものとは一切関係がない。

 関係ないが、『小説家になろう』では、面識のない異性との出会いを目的にしたメッセージを送信するような行為を禁止事項としている。天太郎(蓮華)とカスガのやり取りは出会い自体を目的にしているわけではないが、危険なことには変わりないのでみなさん気をつけましょう。





天太郎「蓮華ちゃんも、きっと女性っぽくない、厨二っぽいアカウントネームにしてるから大丈夫」

GM「どんなんだろう」

猫子「(ぼそっと)……漆黒の花嫁」(一同笑

GM「花嫁じゃねーか! 結局ネカマだよ!」

天太郎「じゃあ“漆黒天使”で」





 そのような感じで、天太郎とカスガは出会うことになった! このシーンはGMはほぼ聞き手、ツッコミ役に回り、完全に天太郎の主導でシーンが動いていた。実にすばらしいことと言える。TRPGに遊び慣れている人でも、スムーズな立ち回りができないことが多い中、GMは『こいつ本当に初プレイか……!?』と、内心驚愕していた。


 さて、場面が切り替わるが、継続して天太郎とカスガのシーンだ。喫茶店で、2人は落ち合った。





天太郎「(うっとりした声で)イイオトコ……」(一同笑

カスガ「あ、どうも」

天太郎「どうも、ファンです!!」

GM「あんなに貶してたくせに!(笑」

天太郎「めちゃくちゃ読み込んでます!」

GM「それは間違いない!」

テレン「すごい読んでるからね。批判するために……」

カスガ「うん、ありがとう(笑」

天太郎「まあ、それは置いておいて! えーと、最近、僕の知り合いの蓮華っていう女の子がいなくなってしまったんですけど」

カスガ「ほうほうほう」

天太郎「その子が、最後に読んでいた作品が“異世界忍者戦記”なんです」

カスガ「こっちもな……。2万人くらい」(一同爆笑

天太郎「何か、あったんですかねぇ」

カスガ「探らなければならないな。……これ、互いがウィザードだってわかるの?」

GM「わかるよ。だから踏み込んだ話をしても大丈夫」

天太郎「じゃあ“奴ら”の仕業かもしれない、と(笑」

GM「蓮華が消えたことに誰も気づいていない中、天太郎はそれを認識できるしね」

猫子「他のごっそり消えたアカウントのことも、カスガ以外は誰も気づいていないのかもしれない」

カスガ「異常事態だ」

天太郎「そう言えば、蓮華は異世界に行きたいと言っていました」

カスガ「なんと……」

猫子「行けるかもしれないっつてったな!(笑」

天太郎「で、こんなメッセージが送られてきていました。と、ライゾウからのメッセージを見せます」





 『異世界に行ってみませんか? そこで待っているのは、本当の“私”』


 ライゾウから送られてきたメッセージは、それだけの簡素なものだった。

 さらに2人は、ライゾウが公開ブックマークをしている作品が“異世界忍者戦記”だけであるということに気付く。つまり、現在ブックマークしている3人のうちの、1人だ。漆黒天使、天太郎、ライゾウ。その3人である。


 そんな時、カスガのアカウントに新たなメッセージが届く。


 差出人は、“オカマ”。





カスガ「オカマ……(笑」

GM「えーと。これはテレンさん達が送ったメッセージですね。どんなのを送った?」

テレン「えー、『超法規的組織のものですけど』」(一同爆笑

天太郎「あはははははは!(笑」

GM「クッソ怪しいじゃねーか! 大丈夫か!(笑」

猫子「大丈夫なのかにゃ……。イマドキの流行りなのかにゃ」

タルティエ「さあ。わからないわ……」

天太郎「で、超法規的組織が? なんだって?(笑」

テレン「……『一度話がありますので』って……(笑」

GM「怪しいよ! かえって警戒心露わにしちゃうよ!」

カスガ「……まあ、怪しいけど、行ってみないことにはね」

天太郎「いや、落ち着いてください。まずここは僕が先に会ってみて、あなたはそれを別の場所から覗くような感じにしてみてください」

GM「忍者だからね」

猫子「天太郎が囮になって作者を名乗る形か」

タルティエ「男を見せた!」

猫子「本当に頭まわるなあいつ」

GM「いやホント。初めてとは思えない……(笑」

天太郎「まあ任せてください。勇者ですからね!」

テレン「会う前に確認しておきたいんだけど、ロンギヌスの名前は基本みんな知らないんだよね? 謎の組織?」

GM「ロンギヌスはねー。一部のウィザードの間に、そういう凄い組織があるってことは知られている……。原則としては、雲の雲の上の存在っていう設定なんだけど、ただ、公式でもやたら安っぽい扱いを受けるというか……(笑」





 強敵を前にロンギヌスの精鋭集団が出現し、突撃しては『うわーだめだー』と散って行くなど日常茶飯事である。

 これは、ナイトウィザードの姉妹作、セブン=フォートレスにおける“神聖騎士団”にも言えることだ。





GM「一応、設定上は、一般のウィザードにとって雲の上の組織です」

テレン「まあ、普通に生きていたら知らないかもしれないのね」

GM「天太郎やカスガが知っていたことにしたかったら、知っていたことにしてもいいです。まぁ、テレンさんは“超法規的組織”としか名乗ってないけど……(笑」

天太郎「だいぶ、怪しいからね! ここは警戒をしていきたいです」

猫子「今までオカマが書いていた感想とだいぶ雰囲気が違うだろうしな……」(一同笑

GM「なり切り方が下手だなぁ(笑」

テレン「そうなんだよ。この子はそういう不器用な子なんだよ」

GM「猫子さん達の方でもね、巫女子さんがタブレットを差し出して『メッセージが返ってきました』って言ってきます」

猫子「いま思えば、送ったメッセージも巫女子に添削させればよかったにゃ(笑」

GM(巫女子)「まぁ、これはこれで味があっていいんじゃないですか」





 さて、次はいよいよ全員の合流だ!

 今回GMとして嬉しかったのは、やはり合流のきっかけをプレイヤーの方から積極的に作って行こうとしてくれたことだろう。孫の手さんの初心者離れしたプレイングはもちろんのことだが、要所要所でぽんこつっぷりを発揮したてれんさんも、『オカマのアカウントを使ってメッセージを送る』という機転を利かせてくれたおかげで、独自の合流展開になってきたと言える。


 次回はいよいよ5人全員が一同に会する! 非常にスムーズな流れの中、微かに生まれた猜疑心と、前回GMがやらかしたうっかりのおかげで、微妙な惨事が展開されちゃったりするのだが、それは乞うご期待!

 プレイヤー全員のロールプレイにも脂がのってきて、かなり楽しくなってきたぞ!

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