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ミドルフェイズ 合流(1)

【ミドルフェイズ シーン①:合流(猫子、タルティエ、テレン)】


GM「ほい。では次は合流のシーンです。このシーンはですねー、猫子さんをシーンプレイヤー。いわばシーンの集約としまして、」

猫子「はい」

GM「神社を目指してパラリラパラリラ進んできたタルティエさんと、アンゼロット様にガシャンってやられて、落ちてきたテレンさんが、同じ目的を持っていると確認して、猫子さんと合流するシーンになります」




 最初に、『このシーンがどういう目的のシーンであるか』という説明をしてしまう。

 特にここにいるプレイヤーは5人中4人がTRPG初体験だ。みんなとにかくキャラが濃いので、あらかじめ目標をキチンと提示しておかないと、ロールプレイがとっ散らかってよくわかんなくなるような気がしていた。ぶっちゃけGMは、この時点で結構怯えていたのである!




GM「で、えーと、猫子さんの神社ですねー。猫子さんのところに、メガネクイッの巫女子さんが何枚も書類を持ってやってきます」

猫子「メチャクチャ使える奴だ」

GM(巫女子)「猫子さま、色々と調べてまいりましたが、どうにもこのトラックの正体だけが掴めません」

猫子「うん、目を通すのもダルいから要点だけ頼むにゃ……」

GM(巫女子)「(ややキレ気味に)トラックの正体が掴めません!!」

テレン「くっ……(笑」

猫子「うーん。トラックぶっ飛ばしたは良いけど、運転席はよく見てなかったにゃ。巫女子の調査力でも及ばないとなるとにゃあ……」

GM「そんな感じで話しているとですね。車道の方に、トラックは走ってこないんですけど、変な音が聞こえてきてですね……」




 パラリラパラリラ♪


 神社の縁側に座って話をしている2人の耳に、妙に時代錯誤な音が響いた。いまどきこの秋葉原に珍走団でもあるまいに、と思い、視線を向ける猫子と巫女子。そこにいていたのは、すらりとした出で立ちの一人の女性。

 腰まで伸びた真紅のストレートロング。黒真珠のような瞳。日本人離れした、きめ細やかな白い肌。ゴーグル付きの半ヘルを被り、フーセンガムを膨らませた女性が、日傘のついたビッグスクーターを駆り、境内に乗り入れてくるところだった。


 ああ、新しい信者になってくれるかもしれない!


 そう思った白黒猫子は、さっそく媚を売りに突撃をしかける。だが―――、




タルティエ「(トミカのスクーターを走らせながら)ああっ、バイクは急には止まれない! キキキーッ!」

猫子「にゃーっ!? ドーン!!」




 哀れ、猫子さんの身体は神社の境内をサッカーボールのように転がった!

 巫女子さんはメガネをクイクイやりながらその光景を冷静に観察していた!




GM「えー、はい……。そんな不幸な事故はありましたが、一命を取り留めた猫子さんと、トラックを追ってやってきたタルティエさんです」

タルティエ「トラックはこのあたりにはもうないみたいなので、近くを通る人に情報収集をして回りたいですね」

GM「(猫子さんのフィギュアを指して)近くの人!!(笑」

猫子「てめー今轢いた相手のこと覚えてねーのかにゃ! 神だぞコルァ!!」(一同笑

タルティエ「あれ、なんか轢いたわね……と思って見てみると、なんとネコ耳の美少女が!」

猫子「やべぇ、こいつ轢きなれてる……(笑」

タルティエ「大丈夫ですか?」

GM「あ、そこは常識的なんだ」

タルティエ「ダメですよ? 急に飛び出してきちゃ」(一同笑

猫子「こいつ思いっきりヒトを撥ねといて説教してきたにゃ……(笑」

タルティエ「ところで、この辺に最近、変なトラックが走ってるって聞いたんだけど、あなた達何かしらない?」

猫子「あちしが消し飛ばしてやったにゃ」

タルティエ「えぇっ!?」

猫子「あのまま放っておいたらグロ画像だったからやむを得なかったにゃ。まぁどの道グロ画像だったけど」(一同笑

タルティエ「グロ画像? ってことは、トラックに轢かれている人を見たの?」

猫子「いや、トラックに轢かれる前に助けることはできたんだけど、そいつはなんかフラフラっと車の前に飛び出して行ったから、日射病かと思って家に帰してやったにゃ」

GM「(ジョゼフィーヌのフィギュアをひっつかんで)アタシのこと、呼んだかしらァン?」(一同笑

猫子「ジョゼーフ!!」

タルティエ「えっ、誰よこの人」

猫子「こいつが、さっき言ってたトラックの前に飛び出した……男? 男にゃ」

タルティエ「え、えぇと……。あなたはなんでトラックの前に飛び出したりしたの?」

GM(ジョゼフィーヌ)「それはね。オカマの世界に行きたかったの」

タルティエ「……なんだこのオッサン」(一同笑

猫子「……だから家に帰したって言ったにゃ(笑」




 妙な連帯感が生まれてしまった。




猫子「とりあえず、ジョゼフィーヌ。その話はあちしの方からしとくからにゃ」

タルティエ「やはり、これは何かあるわね……」

猫子「ん? というか、そもそもあんたはあのトラックをなんで探しているのにゃ?」

タルティエ「身内がそのトラックに轢かれてしまったの」

猫子「あちしもおまえに轢かれたにゃ?」(一同笑

タルティエ「私、過去は振り返らない主義なの」




 タルティエは、猫子に今まで起こったことを説明した。妹のヴィクトリエがトラックに轢かれて、姿を消してしまったこと、そのトラックを追い掛け、グーグルアースを使って秋葉原までやってきたこと。そして、そのトラック達が惜しくも灰に返ってしまったこと……。

 だが、肝心のトラックの行方がわからなくなってしまい、現在は埒が明かない状況だ。

 猫子も、トラックには何か怪しいものがあると感じ始めていた。やはり、トラックを探すしかない。2人が同じ考えに至ろうとしていた、その時である。


 茂みの中から突然、頭をチリチリにした一人の女性が飛び出してきた!!




テレン「話は聞かせてもらいました!!」

猫子「にゃあっ!?」

天太郎「どこから出てきた(笑」

猫子「このあちしに気配を悟らせないなんてタダモノじゃないにゃ……!」

タルティエ「これは数百年前、私の半身を吹き飛ばした聖職者に雰囲気がよく似ているわ」

テレン「(やや食い気味に)わかりました。それはエミュレイターの仕業です!」

猫子「………」

タルティエ「………」

テレン「消えた人はどこに行ったのか!? そもそもそのトラックはなんなのか!? その2通りの点から調査していきましょう!!」

猫子「そもそもおまえ誰にゃ」(一同笑

GM「自己紹介は大事ですね」

テレン「おっと、失礼しました。わたし、こういうものです。と、名刺を取り出します」

猫子「おお、これはこれは御丁寧に」

テレン「そちらの方も」

タルティエ「あ、どうもどうも」




 名刺にはこのように書かれていた。

『超時空多次元機甲特務武装黄金天翼神聖魔法騎士団ロンギヌス 特殊捜査官

 エリート騎士(14歳)

 テレン=サン』




猫子「覚えきれない! おまえ確実に名刺に名前負けしてるにゃ!(笑」

タルティエ「じゃあ、私の名刺も渡すわ」

猫子「名刺持ってんだ!?」




 名刺にはこのように書かれていた。

『群馬吸血鬼連合総長 タルティエ=レッドロール』




GM「群馬吸血鬼連合!?(爆笑」

猫子「なにそれ、そういうチーマーなの?(笑」

テレン「え、えー。わたしは聖職者ですが、ひとまず吸血鬼ということは置いておきましょう。良いですか? まずエリュ……エリミ……」(事前に配った用語集を確認しながら)

GM「エミュレイター」

テレン「エミュレイターというのは、常識を超えた超常的な力を駆使し、世界結界を脅かす存在のことです。ウィザードの敵であります」

猫子「なんでそんなカチコチした喋り方なんだにゃ?」

テレン「“機械的”だから……(笑」

猫子「あちしは名刺ないから、奉納されてるあちしのウルトラレアカードでガマンしてほしいにゃ。あちし今アキバでこんな風に擬人化されて流行ってるにゃ」

テレン「あ、持ってます!」(カードを取り出す仕草

GM「ともあれ、そのロンギヌスでも、このトラックの正体を追っていると……(笑」

猫子「美少女が三人そろって、追っているものが同じとなれば……」

タルティエ「じゃあ、私の妹が消えたのもその……変な名前の奴らの仕業だっていうの?」

テレン「そう……。エリミネイターです」

タルティエ「エリミネイター……!!」

GM「エミュレイターね」

テレン「その、エリミュレイターを探すために、この秋葉原の街で、電子的な奴を駆使して調査していきましょう!」




 GMは、この時テレンさんのロールプレイをするてれんさんが『生真面目に見えて結構残念なエリート戦士』をロールしているのか、『生真面目なエリート戦士』をロールしようとして結果的に残念になってしまっているのか、割と判断しかねるものがあった。




GM「まぁ、調査を開始しようとするわけだ。電子機器とかを使って」

テレン「そう! 電子機器とかを……パソコンとかを使って!」

タルティエ「そう言えば舎弟から変な板|(タブレットPC)を渡されたんだけど何に使うのかしらこれ。ていうかパソコンって何?」

猫子「巫女子! 巫女子ぉー!」

GM(巫女子)「お任せください猫子さま」

猫子「うちの巫女子は現代技術とかにハンパなく精通してる神社のブレインだから(即興設定)、その変な板っきれもバッチリ使いこなしてるにゃ!」

タルティエ「そうなの。じゃあ任せたわ。舎弟の遺品なの」

テレン「あ、じゃあちょっとその前に、ジョゼフィーヌから話を聞いておきたい」

GM「はいはい」

テレン「あなたは、どこでそのトラックのことを知ったの?」

GM(ジョゼフィーヌ)「アタシ? アタシはね。ウェブ小説を読むのがシュミなの」

猫子「意外な趣味……」

テレン「現実のことを忘れられるから……」

GM(ジョゼフィーヌ)「そうよ! 最近読んでいるのはね、異世界忍者戦記って言うの!」

猫子「ごった煮すぎるタイトルだにゃ」

GM(ジョゼフィーヌ)「しかも転生モノよ! アタシはこれを読んで悟ったわ。これを書いているのは――――すッッッごく、イイオトコだってね♪」(一同笑

天太郎「(顔を輝かせてカスガを見る)」

カスガ「(すごい引きつった笑みを浮かべている)」

GM(ジョゼフィーヌ)「(恍惚とした語り口で)それもただのイイオトコではないわ。きっとこれを書いているのは―――猛者、そう。歴戦の勇士、“リビングレジェンド”と言っても過言ではないわ! しかも忍者よ。間違いないわね」

猫子「ジョゼフィーヌの勘ハンパないにゃ(笑」

テレン「そこから、ウィザードの香りを感じ取ることはできる?」

GM「いやぁ、どうだろうそれは(笑」

テレン「話の流れからというか……」

GM(ジョゼフィーヌ)「ひとまず、読んでみると良いわ! 気になったら、コンタクトを取って見れば良いんじゃないかしら」

猫子「メッセージとか送れるらしい。……でも、アカウント登録がめんどくさいにゃ」

GM(ジョゼフィーヌ)「アタシのアカウント、貸してあげるわ♪」

テレン「なんでそこまでしてくれる!?」

猫子「それ良いのかしら!」




 ダメです。


 劇中の投稿サイトは実在のものとは一切関係ありませんが、とりあえずダメです。




GM(ジョゼフィーヌ)「気にしないで! あなた達は仲間よ! そしてアタシはオカマ」(一同爆笑

テレン「凄い友情が芽生えてる! 良い奴だ!」

猫子「さっきの今で、ここまで……(笑」

テレン「一応、連絡先を交換しておこう」

GM「オッケー。オカマの連絡先を手に入れた」

テレン「では、そのアカウントでログインして、メッセージを送ってみようかな」

GM「じゃあひとまず、そのあたりで一回、シーンを切りましょう」




 かくして、貧乏神社の御神体・白黒猫子、群馬吸血鬼レディースの総長・タルティエ=レッドロール、そしてロンギヌスの誇るエリート戦士(?)テレン=サンの3人は、秋葉原を騒がせている謎のトラックと、その背後にあるエミュレイターの影を追って調査を開始した!

 まずは、異世界忍者戦記の作者にコンタクトだ!


 だがGMはまたもうっかりしていた! この時、テレンさんの『あなたはどうしてトラックのことを知ったの?』という質問に答えるのを忘れていたのである! このおかげで、この後の5人全員の合流が面倒くさいことになってしまうのであった!

 そもそも、何故、ウェブ小説のことを話しただけで3人はその作者とコンタクトを取る気になったのか? ジョゼフィーヌの『気になったらとってみれば良いんじゃないかしら』という言霊にあてられたのは間違いない。げに恐ろしき、オカマの魔力であった!

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