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オープニングフェイズ(テレン・カスガ・天太郎)

【オープニングフェイズ:シーン③ テレン=サン】


GM「はい、次はテレンさんのシーンです……(笑」

テレン「はーい」




 タルティエのオープニングの、あまりにも笑撃的な展開の数々を引きずりながら、GMは笑いを堪えて次のOPを開始した。

 テレンはナイトウィザード公式のウィザード組織、ロンギヌスのメンバーだ。NWに触れるのがほとんど初めてというプレイヤーばっかりで、NWらしさがあまりないオープニングばかりだが、テレンの導入部だけは異なる。ロンギヌスの指導者で、NWの顔のひとつである、あるNPCが登場するからだ。




GM「はい、テレンさんはですねー。まぁ、アンゼロットですね。上司に呼ばれました!」

テレン「はいはい」

GM「アンゼロットはこう、紅茶を片手にですね。『よく来てくれました、テレンさん』と……」




 次元の狭間に浮かぶアンゼロット宮殿。そのやけにだだっ広い間に、ロンギヌスのアイドルクレリック・テレン=サンは呼ばれた。小さな机の上にティーセットを並べ、彼女を待ち受けていたのはわずか13、4歳ばかりに見まごう少女人形のような人物。

 月光を思わせる白銀の髪と、雪花石膏のような肌(本人談)。彼女こそ、世界の守護者にして超時空多次元(略)ロンギヌスを束ねる“真昼の月”アンゼロットである。




テレン「はい」

GM(アンゼロット)「……ここは、テレンさん。『お呼びになりましたか、アンゼロット様』と言っていただけなければ、困りますわ」(一同笑

天太郎「言ってくれ(笑」

テレン「(めっちゃ困惑した様子で)お呼びになりましたか? アンゼロット様……?」

GM(アンゼロット)「(にこりと笑って)よくできました」(一同笑

テレン「なんなのこいつ!? もう完全にアイドルのわたしをからかってるでしょ!」

GM(アンゼロット)「テレンさん、あなたには、アイドルとしての気品と美しさが備わっていますが、わたくしの部下としての心構えが若干足りないのではないかと思っておりまして……」

テレン「いつもこうやって押し付けられてるんだ……」

GM(アンゼロット)「では、今から言うわたくしのお願いに、『はい』か『イエス』でお答えください」

テレン「は、はい……。(ぼそっと)こんなキャラなんだ」

GM「はい。こんなキャラです。アンゼロット様は」




 多少、GMの趣味によるバイアスがかかってないとも言い切れないが、基本的にこんなキャラである。

 無垢な少女の顔をしているが前世ではボンテージファッションの女王様であった。




GM(アンゼロット)「あなたは、ここ最近東京で発生している、連続行方不明事件についてご存知ですか?」

テレン「あぁ、はい。Yahooニュースで見ました」(一同爆笑

GM「やってるんだ!?(笑」

テレン「トピックに載ってました。トラックに轢かれて消滅しちゃう奴」

GM「ま、まぁ……トラックに轢かれて、消滅していくんですけど……(アンゼロットに戻って)……その消滅していった人々が、どうやら“プラーナ”ごと消滅してるらしい、ということを、わたくし達は突き止めまして……」

テレン「ほう!」




 プラーナというのは、“存在する力”のことである。イノセントは保有量が少ないが、ウィザードは多い。人間に限らず万物に宿っている力ではあるが、プラーナが失われてしまうと、その存在は世界の記憶から抹消され、存在したという形跡すらすべて消されてしまう。

 なので、ウィザードであるアンゼロット達がなんらかの手段でその事実を突き詰めていたとしても、Yahooニュースにその事件が載ることは設定上ありえないのだが、グーグルがエミュレイターを突き止めることができるくらいだから、きっとYahooもその辺なんとかしたのだろう。


 なお、ゲーム的な意味合いとしては、このプラーナを消費することでダイス目を増やしたり操作したりすることができる。




テレン「そうなんですね!?」

GM(アンゼロット)「そうなんです……。(いきなり強調して)そうなんです!!」

テレン「凄いですね!」(一同笑

GM(アンゼロット)「確かに凄いですが……言葉を慎みなさいテレンさん」

テレン「は、はい……。完全に上からの圧力が凄い……」

GM「だってテレンさんが若干アホの子になってるんだもん!(笑」

テレン「今度は何を言わされるんだろう……」

GM(アンゼロット)「それで、イノセントのプラーナを狙っているエミュレイターが、トラックの形をもって彼らを連れ去っているのではないか、とわたくし達は考えました。そこで、あなたに調査を命じたいと、そう思っております」

テレン「はい! わかりました!」

GM(アンゼロット)「……受けていただけますね?」

テレン「はい!」

GM(アンゼロット)「……わたくしが、『受けていただけますね?』と言うまで、お返事をしては、いけません」

テレン「………」

GM(アンゼロット)「よろしいですね、テレンさん。受けていただけますね?」

テレン「はい!!」

GM「と言って、アンゼロット様が、宮殿の天井から伸びている蛍光灯のヒモのようなものを引っ張ると、テレンさんの足元の床がパカッと開いてですね」(一同笑

テレン「えええええ! そうなのお!?」

GM「そうなんです! アンゼロット宮殿の出撃シークエンスはいつもこうです!」




 風評被害である。


 毎回こういう仕打ちにあっているウィザードもいるにはいたが、普通の出撃シーンもなくはない。

 でもテレンさんにはこっちの方が似合っていると思ったし、アンゼロット様のことをよく知る読者の方はおそらくある程度期待していたと思うので、このやり方で出発してもらうことにした。




GM「ヒュウウウウウウウ……」

テレン「うわー! まただー!!」

GM(アンゼロット)「秋葉原直行便ですわよー!!」

猫子「そこまで!?(笑」

テレン「アンゼロット様のばかー!!」

GM「……言ったな?」(一同笑

テレン「ええええ、それもダメなのお!?」

GM(アンゼロット)「ばっちり聞こえましたわよー。査定に響きますわよー!」

テレン「ひどい……」

GM「……あ、しまった! 大事なことを言い忘れた」

テレン「あら」

GM「大事なことを言い忘れたので、こう、紙飛行機とかで……」

テレン「電話かなんかでいいじゃん!!」

GM「ヒュ~、こつん!」

テレン「あいた」

GM「はい、えーと。神社前のトラックによる人間消滅事件と前後して、ロンギヌスの凄腕エージェントが、また一人行方不明になっていると」

テレン「ほうほう」

GM「関連性があるかどうかはわからないけど、調べておいてほしい」

テレン「そのロンギヌスのエージェントの名前と、能力は?」

GM「英雷蔵はなぶさ・らいぞう。電脳使いですねー」

テレン「わたしはその雷蔵さんについて知ってるの?」

GM「一応知ってる。ロンギヌスの、超☆凄腕エージェント」

猫子「超凄腕なんだ!」

テレン「その超凄腕エージェントが失踪した事件に、なんでわたしなんかが任命されたんだろう……(笑」

GM(アンゼロット)「わたくしへの忠誠心を試すためですわ」

テレン「うっわー! 行きたくないなぁ!(笑」




天太郎「なお、この手紙は?」

GM「自動的に?」

猫子「消去されます」

テレン「……手動的にだよね?」




 ―――このままでは手紙は爆発する! テレンは、受け取った手紙をビリビリに破り捨てる。

 だが、破り捨てた手紙は、それ一つ一つが細かく爆発し、ポップコーンのようにはじけ飛んだ。


 かくして、ロンギヌスのアイドルクレリック・テレン=サンは、頭をチリチリにしながら、秋葉原めがけて落下していくのであった。





【オープニングフェイズ:シーン④ カスガ】


GM「ほーい、ではカスガさんのシーンです」

カスガ「はい」

GM「カスガさんは……忍者の仕事から帰ってくるのかな。忍者の仕事は続けてるの?」

カスガ「いやもう、一線からは退いてる」

天太郎「事務作業とか、後進の育成とかしてるんだろうね」

GM「じゃあ、キミはもうその力を振るうことは、ほとんどないわけだ」

カスガ「忌むべき力だからね」




 リビングレジェンド忍者、カスガの元には、毎日のように依頼のメールが舞い込む。

 『リビングレジェンドのカスガさん! 助けてください!』

 だが、カスガはもはや一線を退いた身。忌むべき力を振るうことはないのである。送られてきたメール一通一通に『ごめんね♪』と返信し、今も現役を続けている仲間たちの連絡先などを添えてやる。今のカスガは、たった一人のウェブ小説作家なのだ。


 いつもの小説投稿サイトに、カスガはログインした。




GM「それでカスガさんは、いつも投稿している……タイトルは何にしますか?」

カスガ「そうだなぁ……」

GM「……忍者ハロワ?」(一同笑

天太郎「忍者だけどハロワ行ったら異世界連れて行かれた?」

カスガ「異世界忍者……かな? 異世界忍者戦記!」

GM「戦記! 戦記なんだ! しかも転生モノだからね! 異世界転生で忍者で戦記!」

テレン「要素がいっぱいあるね!」

猫子「異世界忍者戦記……(笑」

テレン「めっちゃ人気出そう」

猫子「きっと忍戦忍戦言われてる」

GM「異世界忍者戦記はですね。昨日めでたく、お気に入り登録者数2万を、突破しました!」

カスガ「おぉ~……!」

テレン「文字数13万字で」(一同笑

天太郎「もうちょっと長くやってるだろ!(笑」

GM「はい、ではその異世界忍者戦記。昨日2万突破。今日何人に増えたかなーと思って、楽しみにクリックしてみたらですね……(ぼそっと)2人ですよ」(一同笑

カスガ「おい、いきなりか!?(笑」

GM「いや、ごめん。いきなりじゃないね! ハンドアウトに『徐々に減少』って書いてあった!(笑」

カスガ「そうそう、徐々にな……(笑」

GM「そう、昨日2万で、今日1万くらいかな」

テレン「それでも結構ザックリいったね!?」

猫子「まぁ、異常に感じるくらい減ってないとね……」

天太郎「それポイントの減りとかヤバいよね。累計順位がガクッと……」(一同爆笑

カスガ「まぁショックを受けるよね。流石におかしいだろ、と……」




 カスガは奇妙に思い、手がかりを辿るが知人のユーザーアカウントを探すが、それも見つからない。退会していたとか、アカウントを消されたとかではなく、そのアカウントが存在していた形跡そのものが消えてしまっているのだ。

 知り合いの作者さんにも聞いてみたが、『おかしいよね、どうしてだろうね』という話になるばかりで、手がかりは一向に得られない。


 そしてその翌日、




GM「その作者さんのアカウントも消えていた……」

一同「怖えぇー!(笑」

テレン「ツイッターのアカウントも!」

GM「ツイッターのアカウントも消えている……。どうやら、消えてしまった人々の間には、“異世界転生モノが好き”という共通点があったようですが、それ以上のことはわからないですね」

カスガ「これは調べないと……!」




 そしてある日、とうとう『異世界忍者戦記』のお気に入り登録者数は2人になってしまう。

 消えてしまった1万9998人の読者は、一体どこに行ってしまったのか!? 読者とポイントを取り戻さなければならない。リビングレジェンド忍者のカスガは、自らの忌むべき力の封印を解き、謎を解決するために立ち上がる決意をした!

 すべては、失われた評価ポイントを取り戻すために!




GM「……一人だけホラーになってしまった」

天太郎「俺たちにとってはね……(笑」

テレン「身近すぎるホラーだ……」





【オープニングフェイズ:シーン⑤ 孫野天太郎】


テレン「最後、主人公だ!」

GM「はーい、主人公! 孫野天太郎さん!」

天太郎「主人公でーす」

GM「えー、キミは、輝明学園に通うごく普通のウィザードですが、ホモです」(一同笑

天太郎「はい、普通です」

テレン「普通要素が微塵もない……」

GM「蓮華ちゃんには目もくれません」

テレン「でも優しいんだよね……?」

天太郎「一応、異性には“尽くすタイプ”だよ! 同性には“衝動的”だけど!」(一同笑

猫子「ははははははは!」

テレン「これカスガさんヤバいね……」

GM「プレイヤーキャラに同性一人しかいないからね!」

カスガ「(ひきつった笑みを浮かべている)」

GM「でー、まぁ、いつものように学校に登校しているとですね、夢見がちなクラスメイト、劣等感を抱いているクラスメイトの蓮華ちゃんがいますが……。こいつ“属性:無口”だからどうなんだろう……(笑」

天太郎「口調は『はわ~』だからね」

GM(蓮華)「はわ~、おはよう……」

テレン「挨拶が『はわ~』で良いじゃん」




 天太郎が教室に入ると、先に投稿していた幼馴染に蓮華=F=フラメルが、彼の隣の席に座っていた。

 夢見がちな性格の彼女は、しばらくの間スマートフォンをいじり、ネット小説の閲覧に夢中になっていたが、天太郎が席までやってくると、顔をあげ、控えめな笑顔を向けてこう言った。


「はわ~」




天太郎「『はわ~』って返します」

GM「おっ、ノリがいいね! 尽くしてるね!」

天太郎「友達欲しいからね! ノリがいいとこアピールしないと(笑」

GM「蓮華は、まぁ“無口”なんであまりしゃべらないんですが、『はぁ~、異世界行きたいはわ~』って言いますね」

猫子「語尾なんだ!」

天太郎「あぁ~、異世界ねぇ……。(自慢げな仕草を取って)ま、悪いトコロじゃないよ?」(一同笑

テレン「イヤな奴だー!!」

GM(蓮華)「やっぱそうなんだぁ~。はぁ~、行ってみたいはわ~」

天太郎「ウン、悪いところじゃあないよ?(笑」

テレン「ひけらかしてるよ! 落ち込んじゃうよ!(笑」

GM(蓮華)「羨ましいはわ~。どうせ自分じゃいけないはわ~」

天太郎「ま、そうだろうね(一同爆笑)。選ばれてないと行けないからねぇ~、異世界っていうのは」(一同大爆笑

GM「尽くすタイプはどこ行ったんだよ!(爆笑」

テレン「イヤな奴だ……!(笑」

猫子「そりゃ劣等感も抱くわ」

テレン「絶対他にもいろんな感情抱いてるよ……。それこそ“憎悪”とか」

猫子「“劣等感”で済んでる蓮華ちゃんが良い子すぎる」

テレン「ホントだよ(笑」

GM「そう、でも『劣等感』しか抱いていない蓮華ちゃんはね。そんなこと言われても『天太郎はさすがはわ~』とかしか、言わないわけですよ」

天太郎「さすがはわ~」

GM「『羨ましいはわ~』とかね……。全然無口じゃねぇな」(一同笑

天太郎「いやぁ、まぁ、異世界と言ってもねぇ。(それっぽい表情で頷きながら)行くのも難しいし、帰ってくるのも難しいからねぇ」

テレン「無口になったのコイツのせいじゃないの(笑」

GM(蓮華)「天太郎、異世界の話をしてほしいはわ~」

天太郎「(超嬉しそうに)しょうがねぇなぁ~!!(一同笑) 任しといてくれよ。俺、異世界のことなら何でも知ってっからさぁ!!」

GM「蓮華ちゃんはね、目を輝かせながらうんうんって、相槌を打ってるわけですよ。無垢で良い子だねぇ!!」(一同爆笑

天太郎「それに比べて天太郎は……」

GM「それに比べて天太郎はよぉ……(笑」




 友達がいないのも納得の性格の勇者・孫野天太郎。無垢な天使ともいえる幼馴染、蓮華ちゃんのおかげで、案外楽しい学校ライフを毎日のように送っていた。

 そんなある日、いつものように天太郎の先に席についていた蓮華は、やはりいつものようにウェブ小説を読んでいた。




GM「タイトルは『異世界忍者戦記』」

カスガ「(嬉しそうに)おっ」

GM(蓮華)「やっぱ転生モノは面白いはわ~。あっ、天太郎。おはわ~」

天太郎「俺はその小説のこと知ってる?」

GM「知ってる。お気に入り登録してても良いよ。その場合は、異世界忍者戦記のブクマ数が3になる」(一同笑

天太郎「じゃあしてることにしよう」

カスガ「お、やった!」

天太郎「でも実体験があるので、感想欄に『本当の異世界っていうのはこういうもんじゃないと思います』とか書いてる」(一同爆笑

GM「やっぱイヤな奴じゃねーか!(笑」

天太郎「本当の異世界はね、まぁね、ウン。ま、所詮、フィクションだからサ(笑」

テレン「こいつ絶対いろんなところで話題になってるよ……」

GM「はい、えーと、普段は『異世界行きたいはわ~』とか夢見がちなこと呟いてる蓮華ちゃんですが、今回ばかりは、いつもよりも目をキラキラと輝かせています。『天太郎聞いてはわ~』って言います」

天太郎「うん、なんだい?」

GM(蓮華)「異世界行く方法がわかったはわ~」

天太郎「マジでぇ!?」

GM(蓮華)「今度異世界行ってくるはわ~」

天太郎「いやいやいやいや! 一回行ったら、帰って来るまで大変だからさ! 一応ちゃんと、準備整えてからの方が良いんじゃないかね!?」

GM(蓮華)「どんな準備が必要はわ!?」

天太郎「えーと、まず、剣とか武器とか鎧とか……?」

GM(蓮華)「持ってくはわ!」(一同笑

天太郎「持ってくのかよぉ!」




 とは言え、天太郎の幼馴染である蓮華=F=フラメルは、妄想癖のある夢見がちな性格の女の子。天太郎も、いつものように冗談を言っているのだろうと思い、その時はあまり本気には捉えなかった。いつものように授業を受け、放課後を迎え、家路につく。

 だがその翌日、蓮華=F=フラメルは、学校にやってこなかった。




天太郎「あれ、風邪かしら……」

GM「すると、何故かとなりの席にですね……。(適当なロボットアニメのフィギュアを掴んで)何故か隣の席に、山田クアン太くんが座っています」(一同笑

天太郎「クアン太!!」

GM(クアン太)「よう、天太郎。おっはよー」

天太郎「え、う、うん。おはよう! 話すの初めてだね!」

GM(クアン太)「何言ってんだおまえ、俺の席はずっとここだったじゃないか」

天太郎「えっ? でも、えっ? でも、クアン太くんみたいなイイオトコだったら俺、忘れるはずがないし……」(一同笑

GM(クアン太)「おいおい、おまえ相変わらずだなぁ。ケツがむずかゆいぜ(笑」

天太郎「う、うん。俺もだいぶ、前の方がむずかゆくなってきてるけど……」

GM「蓮華ちゃんのこと思い出してあげて(笑」

天太郎「うん……。でも確かに、蓮華は昨日ここに座っていたよな……? うん、確かにいた。異世界の話をしてやった。相当聞きたがってたから話してやった。俺もだいぶ自慢げに話した」(一同爆笑

猫子「自覚あるんだ!(笑」

GM(クアン太)「天太郎……」

天太郎「ん、なに?」

GM(クアン太)「蓮華って、誰だ……?」

天太郎「蓮華って……、えっ。俺の、幼馴染なんだけど……」

GM(クアン太)「そんな奴いたんだ。今度紹介してくれよ」

天太郎「お、おう……?」




 困惑する天太郎。昨日まで確かに蓮華の座っていた席には、見知らぬイイオトコが座っており、他の生徒たちも、誰ひとりとして蓮華のことを覚えていないという。

 そんな中、天太郎の隣の席の山田クアン太は、机の中から一台のスマートフォンを取り出した。


「あれ……? こんなスマートフォンあったかなぁ」


 異世界風のデコレーションが施されたそのスマホに、天太郎は見覚えがある。

 それは確かに、天太郎の幼馴染、蓮華=F=フラメルのスマートフォンであったのだ。




天太郎「クアン太くん……! そのスマホ、どこで手に入れたの?」

GM(クアン太)「ああ、ここに入ってたぜ。おまえの? ずいぶんファンシーなの使ってんだな」

天太郎「う、うん。異世界をファンシーって表現する人初めて見たけど、それ、俺のじゃなくって、蓮華のなんだけど……」

GM(クアン太)「え、これ? どういうことだろ。わかんねぇな。とりあえず渡しとくから蓮華ちゃんって奴に返しといてよ」

天太郎「お、おうよ……」




 天太郎は、蓮華のスマートフォンを受け取る。どういうわけか蓮華がさっぱり消えてしまった今、このスマホだけが彼女の行方を探る手がかりなのだ。スイッチを押し、画面を開いてみると、そこは彼女が愛読している小説投稿サイトのユーザーページであった。

 開かれているのはメッセージ一覧。感想返信通知が並ぶメッセージの一番上に、不明な差出人からこんなメッセージが届いていた。




『異世界に行ってみませんか? そこで待っているのは、本当の“私”』








 以上で、5人のプレイヤーキャラクターの導入は終了となる。

 次回から各キャラクターが合流し、己の目的の為に力を合わせていくシーンとなるのだが、このシーンというのが中々に厄介だ。僕もGMをやることは多いが、このシーンで毎回頭を悩ませる。そのためにも使えそうなNPCをあえて出し、プレイヤーの誘導を行えるようにしたわけであるが。


 まぁ、どのようになるかは次回である。お楽しみに!!

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