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悪夢のヒロイン作成チャート

「これで作成終わり?」

「あーいや、あと防具がある」

「あ、そっか! 防具か!」

「もう裸で良いんじゃない?」

「いや、俺文化人だからね!」

「武器と防具以外で所持金なんか使うん?」

「あとはねー、ポーションとか使いますね」

「この一般特技の《イクイップリミット》ってさぁ……」

「やばい、これ【回避】5だ……」

「お金40万余ってるなぁ」

「じゃあゴールデンチョッパーにスロット3つあいてるんだからさ、オプション買おうよ」

「なにこれ、“かっこいいパーツセット”!? “変形”システム!? これ買おっと!」




 なんといってもみんな初心者だ。『キャラクター作成の手引き』を用意し、それにしたがって作ってもらっているとは言っても、質問は尽きない。GMはてんてこ舞いだ。

 ちなみにこのセッションを開催したのは、「NW3」の発売からそう遠くない日のことであり、既に仲間内で何度か遊んでいたとはいえ、GM自身結構データを把握しかねている部分があった。なので、一部運用に間違いがあります。ゴメンね!


 能力値などの数値的なデータを決めた後、“パーソナルデータ”というものを決めることになる。

 これはいわゆる数値に関わらない“キャラ設定”、フレーバーの部分だ。自由に決められる部分もあるが、既に決められた表の中から、ダイスを振って決めることができる部分も存在する。それが「出自」「目的」「印象」などの“ライフパス”だ。

 データのみを運用してプレイする分にはまったく必要ない。だが、これをダイスで振ってワイワイ決めるのが、結構楽しかったりするのだ。“出自”、“目的”、“印象”など、そのキャラのイメージを定めるのに重要なキーワードがランダムで決まる、恐ろしいものでもある。もちろん、予め考えた設定に合わせて、自分で選んでも良い。




鰤/牙「じゃあ、孫さん振ってみてー」

孫の手「おー」(ダイスを振る

鰤/牙「“炎のサダメ”」(一同笑

てれん「炎のサダメ!?(笑」

孫の手「なにそれ、むせる!(笑」

鰤/牙「『あなたは戦場で生まれ育った。戦かうことは日常であった』……(笑」

孫の手「学生なのに!?(笑」

鰤/牙「いや、そういうね? ワケのわからない設定の整合性をとらせるのが、小説家の力量じゃないですか!」




 このあたりになると、みんな相当緊張もほぐれ、箸が転がるだけで大爆笑するようになっていた。

 個人的には、TRPGをプレイするにはこれくらいの空気がやりやすい。良い傾向である。




鼠色猫「炎のサダメかっこよすぎるだろ……」

鰤/牙「で、キーワードが“戦場生まれ”」

孫の手「戦場生まれね」

てれん「これは1人1人じっくり見たいね……」

鰤/牙「桂さんも是非」

かすが「ふんふん……」(ダイスを振る

鰤/牙「リビングレジェンド!」

孫の手「living legend!」

鼠色猫「生きる伝説!」

鰤/牙「『あなたはウィザードの中で生ける伝説として知られている』」(一同笑

孫の手「ウェブ小説家なのに……!(笑」

鼠色猫「ウェブ小説どうしたんだよ!(笑」

てれん「きっともう疲れたんだね(笑」

孫の手「次は目的だな」(ダイスを振る

鰤/牙「“100人の友達”。『友達100人作りたい。100人よりもっと作りたい』」

てれん「戦場生まれの男が! 友達100人作りたい!」

鰤/牙「かすがさんはー?」

かすが「45やな」

鰤/牙「45……ぶふっ(笑)。世界征服……!」(一同爆笑

てれん「世界征服!?」

鰤/牙「嫌なら振りなおしても良いけど(笑」

かすが「これはちょっとねぇだろ……(笑」(ダイスを振る

鰤/牙「お、“忌むべき力”。良いじゃん! 自分の力を忌まわしいものだと思っている!」

かすが「良いな。こういうのだよ!」

たると「出自が“不良上等”になった……(笑」

てれん「なにそれ(笑」

たると「目的が“友達100人”」

てれん「おまえもかー!」

鰤/牙「吸血鬼でありながら!」

たると「吸血鬼でありながら、不良上等で友達100人作りたい!」

てれん「わたしは出自が“精密機械”で、印象が“常夏のカラダ”になったよ」

鰤/牙「いやらしいアイドルだなぁ……。『あなたは季節に関係なく薄着を好んで着用している』」

てれん「わたし聖職者なのに……。いや、でも精密機械だからそんなこと気にしないのかな?」

鰤/牙「いやあ、酷いもんだろ? でも楽しいだろ?(笑」




 そんなこんなで、みんなが徐々にキャラクターデータを完成させつつある中、PC1を務める孫の手さんの手が空く。

 ここでいよいよ、今回のシナリオを進める上で重要な“PC1のヒロイン(名称未定)”を決めることになった。


 もちろん、セッション本番にシナリオを決めるなんてことは普通ないのだが、基本的な設定さえできていれば、あとの記号をすべてダイスで自動作成してくれる素晴らしいツールが、ナイトウィザードシリーズには存在する。




鰤/牙「この“萌えヒロイン作成ルール”を使ってなぁ!」

てれん「孫の手さんのヒロインが!」

孫の手「孫の手さんのヒロインが生まれるよ!」




 キャラクターの口調や性格、PCに対して抱いている感情、ヒロインとしてのキャラ属性などがすべてランダムで決まる。あまりにも整合性が取れず、しかも比較的無理のある口調などを結構な確率で引き当てるため、とんでもない地雷ヒロインが完成する可能性がある。

 だが、せっかくだし、面白そうなので採用することにした。ここにいるのは皆、書籍化作家。累計300位圏内に己の作品を叩き込んだ猛者オブ猛者である。多少無茶なヒロインでもきっとうまく対応してくれるだろう! という期待もあった!




孫の手「とても面白いヒロインが生まれると良いな!」




 PC1からしてこの反応である。累計1位の貫禄であった。




鰤/牙「ほい、ここでシナリオヒロインシート!」

てれん「シナリオヒロインシート!?」

孫の手「まずは名前から?」

鰤/牙「名前は後にしよう」

てれん「で、萌えヒロイン作成ルールかぁ……」

鰤/牙「まずはヒロイン属性! すげぇ多いなこれ! 66×3だろ? 198個あるぞこれ!」

孫の手「ダイス振ってー……」

鰤/牙「はい、第一属性は『無垢』!」

孫の手「無垢!」

てれん「かわいい!」

孫の手「(強調するかのような口調で)MUKU!」

鰤/牙「無垢なヒロインです!」

鼠色猫「良いじゃん!」

鰤/牙「まぁ、異世界行きたいとか言ってるくらいだからね……」

孫の手「そうとう電波だけどね!」

鰤/牙「はい次は第二属性」(ダイスを振る

鼠色猫「かわいい!」

鰤/牙「無垢かつ無口! かわいいな!」

てれん「きっとジト目だね!」

孫の手「そんな子が、異世界行きたいって?」

鰤/牙「……はい(笑)。次は髪型表を決めます」




 そのまま髪型、髪の色、瞳の色を決める。

 それぞれ、ミディアム、漆黒、黒という実に無難な外見に落ち着いた。一同がホッと胸をなでおろす中、更にルールに則って孫の手さんのための可愛い萌えヒロインが作られていく!




鰤/牙「次は一人称決めまーす。そろそろ地雷埋まってきそうだなぁ(笑」

鼠色猫「一人称“ミー”とかあるぞこれ(笑」

鰤/牙「9!」

孫の手「『自分』! ……自分かぁ!」

鼠色猫「自分かぁー……!」

孫の手「ん、んー! な、なくはない、か……?」

鰤/牙「はい、二人称いきます! ……(コロコロ)…… 『あなた』!」

鼠色猫「まともだ! 良かった!」

鰤/牙「サクサク行くよ! 次は口調変化表。特定のシチュエーションで口調が変わることを決める表ですね」

鼠色猫「男の前だとこうだけど女の前ではー、みたいな感じね」

孫の手(ダイスを振る

鰤/牙「『感情が高ぶっている時』!」

鼠色猫「おお! 良いじゃないですか、可愛いですよ!」

孫の手「感情が高ぶっていると? “ミー”とかになるのかな」(一同笑

鼠色猫「でも良いじゃないですか。超マトモなヒロインですよ!」

鰤/牙「はい。では皆さん、その下の“口調表”を見てください」



 一同はルールブックに目を落とし、一拍置いて大爆笑する。

 そこに書かれていたのは、「~でヤンス」「~ですぞぉ」「~にゅ」など、とうていマトモとは思えないような(褒め言葉)語尾の羅列であったのだ!



てれん「なにひとつとしてマトモなのがないんだけど、これ!(笑」

鰤/牙「振らなくても良いんだけど……。振ります?(笑」

孫の手「俺は振るよ! 俺のヒロインだからね!」

鰤/牙「そうだよねー! じゃあ、感情たかぶる前振りまーす(笑」

鼠色猫「辛うじて『~です/~ます』がまともだ!」

鰤/牙「はい、ダイスを振ってー……『はわ~』」

てれん「『はわ~』!?」

孫の手「言わねーよ無口な奴がよぉ!(笑」



 ちなみに、『はわ~』は、ナイトウィザードの慣れ親しんだ者にとっては、比較的感慨深い口調である。GMはこれを引き当てた時ちょっぴり嬉しかった。



鰤/牙「この中ではマシな方だろ?(笑」

鼠色猫「超マシ! 超マシだよ! これか16くらいだよ!」

鰤/牙「問題はこれがどうなるかだよ! 感情が高ぶった時にな!?」

鼠色猫「これが感情高ぶって『~ござる』になったら目も当てられねぇ!」

孫の手「いや、『~ござる』だったらかえって『一人称:自分』と合ってるよ!(笑」

鰤/牙「どれどれ。えーと、ダイスを振ってー……『~にゃ』」(一同大爆笑

鼠色猫「にゃ!(笑」

鰤/牙「(笑いを堪えながら)い、いや……。これは、うん。無難にまとまったよ……」

鼠色猫「まぁまともな方だな……(笑」

孫の手「もうこいつだけで小説書けるな……(笑」



 与太話の最中に濃いキャラが出来ると『これで小説書けるな』というのは、ウェブ作家の基本的な生態である。



孫の手「星座も決められるんだ」

鰤/牙「決められますね。どれ……。キャンサー。蟹座! デスマスクかい!」

孫の手「蟹座のデスマスク!」

鰤/牙「あとPCとの関係ですね。PC1である孫の手さんにどういう感情を抱いているか」

孫の手「幼馴染のヒロインが!」

鰤/牙「(コロコロ)……『劣等感』(笑」

鼠色猫「おぉ~……」

鰤/牙「まぁそりゃそうだよねぇ。異世界行きたい子だもんねぇ!」

鼠色猫「異世界行きたがってる子がこんな属性兼ね備えてる奴ウィザード見たらそりゃあ劣等感抱くわ!」

孫の手「クラスは結局魔剣使い/勇者になったからね! 異世界行きたい奴の幼馴染が、魔剣使いで勇者。しかも戦場生まれ(笑」

鼠色猫「『あなたは彼といるといつも自分が劣っているような気がしてならない』(笑」

孫の手「でしょうねえ!(笑」

鰤/牙「間違いないわ(笑」

鼠色猫「そりゃあ『無口』で『自分』にもなるわ」

鰤/牙「いやあ、まとまったねぇ(笑」



 その後、名前もランダムチャートを振り、『蓮華=F=フラメル』に決定された。


 こうして、孫の手さんのヒロイン『蓮華=F=フラメル』が完成したのである。

 無口で無垢。一人称は『自分』。主人公に対する劣等感にまみれた、夢見がちな異世界志向の女の子! 蓮華ちゃんは果たしてシナリオにどんな爪痕を遺すのか!


 ちょうどそのタイミングで、参加者の一人、PC4役の赤巻たるとちゃんもデータを完成させていた。



たると「これ、追加装甲板の防御力はどこに計上すればいいんでしょう?」

鰤/牙「あー、それはね。装備品欄に書いておいて」

たると「はいはい」

鰤/牙「で、たるとちゃんどうする? ハンドアウトにあった、たるとちゃんの消えちゃった眷属なんだけどさ。どういう関係にする?」

鼠色猫「部下とか家族とか……」

たると「それはもう……。妹で良いんじゃないですか?」

鰤/牙「妹!」

孫の手「妹、消えちゃったかあ!」

鼠色猫「(萌えヒロイン作成ルールを掲げて)じゃあ振らないとな!」(一同笑

鰤/牙「そうだな! じゃあ振らないとな!」

孫の手「振らないとなぁ!」

たると「振りましょう!」

鰤/牙「苗字はあるんだっけ?」

鼠色猫「赤巻レッドロールじゃねぇの?」(一同笑

鰤/牙「レッドロールかぁ!」

たると「じゃあ、レッドロールにしましょう」

てれん「すごい吸血鬼っぽい(笑」

鼠色猫「うん。なんか吸血鬼にいそうじゃん。レッドロール(笑」

鰤/牙「名前はダイスで……(コロコロ)。ヴィクトリエ・レッドロール」

孫の手「ちょっと面白くねぇなぁ! もっとネタっぽいのにしようよ!」

鰤/牙「まぁまぁ! (萌えヒロイン作成ルールを掲げて)こんなに爆弾が残ってるんだから!」

鼠色猫「それもそうだな!」

てれん「『~ござる』が来るかもしれないよ!」

鰤/牙「蓮華がまともだった分、何が起こるかわからないからな!」

たると「ようし、じゃあここは自分で振ります。2群の43!」

鰤/牙「『機械的』! まぁ悪くないか?」

孫の手「ちょっと蓮華と被ってんなぁ(笑」

鼠色猫「お姉ちゃんたるとちゃんのキャラの性格次第なところはあるな」

たると「第二属性……『メイド』!」

鰤/牙「いや、なんか……良いじゃん? 機械的なメイドの吸血鬼。すごい忠誠心高そう……」(←メイド好き

てれん「でもたるとちゃんにどういう感情を抱いてるかで違うよ!」

たると「そうですね。表情の裏で何を考えているか(笑」

鼠色猫「『劣等感』かもしれないからな!(笑」


 次に妹ヴィクトリエの外見設定を振っていく。髪型:エクステ、髪の色:赤(エクステ亜麻色)、瞳の色:黒と、比較的無難な形に決まっていった。


たると「次は一人称! 『まろ』はやめて!」(一同笑

孫の手「かわいいじゃん『まろ』(笑」

鰤/牙「えーと、『ワタシ』ですね。二人称は……『あなた』か(笑」

鼠色猫「普通だな! 面白くねぇな!(笑」

鰤/牙「これ、ダイス2個振った合計の期待値が7だから、7の『わたし』『あなた』が一番出やすいんだよね」

孫の手「あー、だから髪とかも7が黒なんだ」

鼠色猫「はい。次は口調変化表! 機械的なメイドなんだけどぉ、口調が変わるタイミングは……?」

たると「……(コロコロ)……。『感情が高ぶっている時』」(一同笑

孫の手「蓮華と同じじゃねーか!(笑」

てれん「同一人物じゃないの?(笑」

鰤/牙「はい、えー、では感情が高ぶる前の口調はー?」

たると「……(コロコロ)……。出ました、『~じゃん』」(一同笑

鼠色猫「『~じゃん』!?」

鰤/牙「チータスじゃん(笑」

孫の手「機械的なのに?(笑」

鰤/牙「『ワタシ、機械的じゃん?』(笑」

鼠色猫「いや、そんな明るい感じじゃなくてさ……(笑」

たると「では感情が高ぶると……(コロコロ)……。『~です/~ます』。普通だ!?」

鼠色猫「これ逆じゃねぇの!?(笑」

孫の手「素が出るのかも。キャラ作ってる。機械的なメイドはキャラを作っている!」

鼠色猫「で、次は、お姉ちゃんへの感情表?」

てれん「大事だよこれ!」

たると「大事ですね! ダイス2つですよね」(ダイスを振る

鰤/牙「『憎悪』」

一同「『憎悪』!?(笑」

鼠色猫「『あなたは彼のことが嫌いである。いっそ憎んでいると言っても良い』(笑」

てれん「お姉ちゃん恨まれてる!」

鼠色猫「いや、でも、お姉ちゃんは妹のことを探しに行ったんだろ?(笑」

たると「これは悲しいドラマが生まれますね!」

孫の手「絶対これお姉ちゃんにメイドやらされてるだろ!」

たると「『~じゃん』を義務付けられていて、でも感情が高ぶったときは『~じゃん』なんて言ってられっか! となる(笑」

鼠色猫「『~じゃん』もお姉ちゃんにやらされてるんだ!」

鰤/牙「ひでぇ姉ちゃんだな……(笑」

鼠色猫「メイドやらされてて『~じゃん』言わされてて、でもお姉ちゃんは特に悪気はないんだろ?(笑」

てれん「妹はいっそ異世界に行って幸せかもしれないね……(笑」



 こうして、PC4赤巻たるとのヒロイン、妹吸血鬼のヴィクトリエ=レッドロールが完成した!

 機械的なメイド。口調は『~じゃん』。お姉ちゃんに嫌がらせとしか思われないような仕打ちを受けている!


 ほぼランダムで作成した『蓮華=F=フラメル』と『ヴィクトリエ=レッドロール』。

 彼女たちの活躍もお楽しみに!


 次回はいよいよ、プレイヤーキャラクターの紹介になります!

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