イントロダクション&キャラメイク
鰤/牙「はい! じゃあ改めて、録音開始でございます」
2014年8月某日。どっかのカラオケボックスに6人のなろう作家が集結していた。
今日はかねてより企画していた、TRPGオフの開催日である。TRPGやりたいよねって言った時に、『えっ、やったことない』って人が結構多かったので、無理やり人を集めてやることにした。そのゲームタイトルがナイトウィザードっていうのはGMの趣味だ!
集まったなろう作家は以下の通り。
・理不尽な孫の手:『無職転生~異世界行ったら本気出す~』
・桂かすが:『ニートだけどハロワいったら異世界連れてかれた』
・鼠色猫/長月達平:『Re:ゼロから始める異世界生活』。
・赤巻たると:『ディンの紋章~魔法師レジスの転生譚~』
・みかみてれん:『勇者イサギの魔王譚』、『恋したら死ぬとかつらたんです』
そして私“鰤/牙”である。この中で、TRPGのプレイ経験があるのは、ゲームマスターである僕を除くと、なんとてれんさんしかいない。そのてれんさんも、『クトゥルフ』をちょっと遊んだことがあるだけ! みんなほぼ初心者である。
だから、みんなにあらかじめルールブックを買ってもらって『キャラ作っといてね!』と頼むこともできない! 戦いはキャラメイクからはじまるのだ。
鰤/牙「よろしくおねがいしまーす」
一同『おー』(拍手
鰤/牙「というわけで、はい。TRPG“ナイトウィザード”を、これから始めさせていただきます。で、最初にお渡ししたこちらをまず見てくださーい」
と、僕は、最初に参加者全員に配ったプリントを掲げる。
鰤/牙「で、まぁ、このナイトウィザードがどういうゲームかというとですね……。『魔法使いになって悪い奴らをやっつける』という、非常にシンプルなお話しになります。
まぁ、セッション中ところどころ、わからないところがあれば、こっちの方に目を通していただければー、という感じなの、でぇ……。先ほど渡した、レコードシートとキャラクターシート、そして、プリントアウトした『キャラクター作成の手引き』を、見てください」
ナイトウィザードには、その世界観を反映する多種多様なクラスが存在する。
一般的なRPGにあるような、『戦士』『魔法使い』とは違っていて、『アイドル』『吸血鬼』『魔剣使い』など、フレーバー色に富むものが多いのが特徴だ。それだけに、組み合わせ次第によってはとっても『ヘンな感じ』になってしまうのだが、それもまた、NW3の醍醐味である。
かすが「おぉ……」
鼠色猫「すげぇな」
鰤/牙「まぁ、これだけではどんなキャラを作ればいいのかわかんないと思うんで、シナリオの方向性を示すために、『今回予告』というものを読み上げます!」
てれん「はい!」
鰤/牙「今回どういったシナリオをみんなに遊んでもらうかというのが、今回予告になります」
一同「はーい」
【今回予告】
トラックに轢かれれば異世界に行ける!
そんな与太話が、じんわりと世間に広がり始めていた。
噂の広がりと共に、認識されないまま
消滅していく人々の存在を、
一部のウィザード達だけが掴んでいた。
消えてしまった人々は、
果たして本当に異世界に行けたのだろうか?
ナイトウィザード The 3rd Edition
『転生者症候群』
紅き月が昇る時、異界の扉が開かれる
一同「(笑)」
てれん「かっこいい!!」
鰤/牙「という話になりまーす!」
鼠色猫「非常に、“らしい”じゃねーか」
孫の手「実に“なろうシンドローム”って感じだ」
鰤/牙「いろいろ考えた結果ですね! こんな感じになりました!」
鰤/牙「それでー、この『転生者症候群』なんですが。シナリオに合わせて、5人のキャラクターを作ってもらうので、“シナリオハンドアウト”というものをですね、5つ作ってあります!
このハンドアウトがどういうものかっていうとですね。そのシナリオに参加するキャラクターの、簡単な設定の“一部”です」
鼠色猫「おぉ。はいはいはいはい」
鰤/牙「その設定の一部を、5人全員に振り分けて、それに沿ってキャラクターを作ってもらう、という形になります」
鼠色猫「はいはいはいはい、なるほど」
鰤/牙「で、ハンドアウトには推奨クラスっていうのがあります。そのキャラをやる上で、まぁ、このクラスが合うんじゃないかなー、って感じですね。一部はバランス調整のための推奨クラスもあります」
かすが「(ぼそっと)従わない奴はおるんやろなぁ……」
鼠色猫「はっはっはっはっは!」
鰤/牙「……いや、まぁね! 別に推奨クラスは絶対じゃないから! シナリオに支障はないのでね! ……多分」
鰤/牙「では、シナリオハンドアウトを読み上げます!」
『PC1 推奨クラス:なし
君は、輝明学園高校に通いながら、日夜ひそかに闘う正統派学生ウィザードだ。
君の幼馴染である(名称未定ヒロイン)は、ウェブ小説を読むのが趣味であり、どこか妄想癖と現実逃避癖のある娘だった。ある日、いつもよりも元気そうに登校してきた彼女は、非常に上機嫌な様子で『異世界に行く方法がわかった』と呟いた。彼女が姿を眩ませたのは、その翌日のことであった。』
てれん「ほう……」
鼠色猫「結構めんどくせーヒロインだな……」
てれん「これはトラックにやられたね……!」
鼠色猫「なかなか、アレだな……」
てれん「すごいねぇ」
鰤/牙「はい。では2番。これが今回のネタ枠なんですがー」
『PC2 推奨クラス:なし
君は、某ウェブ小説投稿サイトで連載を続けているアマチュア作家だ。
一同「(笑)」
てれん「あっはっはっはっは!(笑」
近頃、君の作品のお気に入り登録者数が急激な減少を見せている。これは由々しき事態だ。
一同「(大爆笑)」
孫の手「な、なんだってぇ!」
てれん「ゆ、由々しい……!」
鼠色猫「これ読者が消えてることじゃねぇの?(笑」
作品の出来に問題があるのか、あるいは何かしらの外的要因か。よくよく調べてみると、君の作品をお気に入り登録していたアカウントが、ごっそり消滅しているのがわかる。そしてとうとうある日、作品のお気に入り登録者数が、2人になってしまった。』
てれん「2人……!? 何人から2人になったの!?」
鰤/牙「それはまぁ勝手に決めてもらって大丈夫です」
たると「じゃあ2万人からにしよう」
孫の手「俺だったら5、6万人から……」
てれん「5万人! 累計1位から!」
鼠色猫「5万から2人は嫌だなぁ!」
鰤/牙「じゃあ3つめー」
『PC3 推奨クラス:大いなる者、陰陽師、聖職者、落とし子
君は、都内にある寂れた神社の神主、巫女、あるいは御神体そのものだ。
最近、君の神社の前の歩道で、やたらと車道に飛び出す迷惑な輩が数を増している。ある日君は、すんでのところでトラックに轢かれそうな女性を救出することに成功した。話を聞くと、神社の前でトラックに轢かれると、神様が異世界に転生させてくれるという阿呆な噂が広まっているらしい。どうやら、その噂の元を絶たない限り、自殺志願者は減らなそうだ。』
鼠色猫「御神体そのもの!」
てれん「大いなる者(=神の力を持つウィザードであることを示すクラス)だね」
孫の手「しかしなんて迷惑な!」
てれん「ホントだよねぇ」
鰤/牙「4つ目。これは人外系ですねー」
『PC4 推奨クラス:人狼、吸血鬼
君は、人間とは違うルーツを持つ、誇り高き夜の一族の末裔だ。
君は本来人里離れた場所でのんびりと過ごしているのだが、どうにもここ数十年、人間の生活圏の拡大によって、やたらとうるさい乗り物が行き来することも増えた。わずらわしく思っていた矢先、君は、君の眷属のひとりがその乗り物に轢かれ〝消滅〟するところを目撃してしまう。しかも妙なことに、その乗り物には、人の姿が見られなかった。』
鰤/牙「で、5つ目ですね」
『PC5 推奨クラス:なし
君は、超時空多次元機甲特務武装黄金天翼神聖魔法騎士団ロンギヌスのエリート戦士だ。
一同「……!?」
てれん「なにそれ(笑」
たると「覚えられない……(笑」
孫の手「略称は!?」
鼠色猫「ロンギヌス」
鰤/牙「ロンギヌスだな……。一応、公式の組織です」
てれん「そう呼ぼうよみんな……」
君の主人であり、ロンギヌスの長でもある〝世界の守護者〟アンゼロットは今、東京都内で頻発している人体消滅事件に興味を示していた。なんでも、トラックに轢かれた瞬間、その人物がプラーナごと消滅してしまうというのだ。十中八九、エミュレイターが絡んでいる。アンゼロットは、君に調査を命じた。』
てれん「ほぉーう!」
鰤/牙「まぁ、5番は結構プロフェッショナルな感じですね」
鼠色猫「エージェントかぁ」
鰤/牙「まぁ、そう。アンゼロットっていうのは、公式のNPCですね。(ルールブックを開いて)はい、この人」
てれん「超えらい人だね」
鼠色猫「アンゼロットだけはねー。なんかぼんやりと知ってる。アニメちょっと見てた」
ナイトウィザードは、2007年10月2日から12月25日まで深夜枠でアニメ放送されている。
世界観を知る上では非常にわかりやすく、シナリオもきちんとまとまっていて面白いです。
鰤/牙「レベル:∞。外見年齢14歳」
孫の手「インフィニティ……!」
鼠色猫「女神様みたいな感じだな」
鰤/牙「はい、ではこの5つをみなさんに担当してもらいます。何か希望あります?」
てれん「わたし5番やりたい!」
鰤/牙「5番!?」
鼠色猫「2番じゃないの?」
鰤/牙「2番じゃないの!? みんなてれんさん2番だと思ってたよ!」(一同笑
てれん「いやいやいや! そうなの!? ……そうなの!? じゃあ2番やるよ!」
鰤/牙「いや、5番やりたいならそれで良いよ……(笑」
鼠色猫「他にやりたい人がいないなら、だな」
鰤/牙「他に5番やりたい人いるー?」
てれん「わたしウェブ作家やろうか……」
孫の手「えっ、今更?(笑」
鰤/牙「今更変えるのぉ?(笑」
鼠色猫「5番やりたいんだろ! やりたいことをやりなよ!(笑」
孫の手「うん、まぁ最初にパッと決めたのが一番だよ」
てれん「5番やりたい人いないんだ。じゃあ、わたし5番やる!」
鼠色猫「まぁ惹かれるところはあるけど……。てれんさんがやりたいって言うなら……」(ちらちら
てれん「はい! じゃあいただきまーす!」
鰤/牙「はーい。じゃあてれんさんが5番でー」
鼠色猫「で、他のハンドアウトか……。1番が王道でしょ? で、2番がネタ枠。3番が神様でも良いし、巫女でも良いし……」
鰤/牙「まぁ、3番が一番部外者なんで、気楽なポジションではありますね」
てれん「で、4番が孤高の夜の血族だね」
鰤/牙「うん。まぁ、干渉されてしまったので、他人事じゃなくなって対応するかって感じだね。眷属の一人がいなくなって、その眷属の一人っていうのが、キャラにとって親しい人間でも良いし、本当に部下の一人って扱いでも良い」
てれん「あ、それも自分で決めて良いんだ」
たると「へぇー……!」
鰤/牙「こっちが指定する設定はここに書いてあるだけだからね。矛盾しない限りならどんな設定にしても良い」
鼠色猫「うーん。どうすっかなぁ……」
たると「あー、じゃあ4番やって良いっすかねぇ」
鰤/牙「4番!」
鼠色猫「意外だな。3番かと思った」
鰤/牙「まぁ、たるとちゃんは3番か4番だと思った」
一同「(笑)」
鼠色猫「じゃあ、俺は3番で」
鰤/牙「はい、猫さんは3番で!」
鼠色猫「おい、ウェブ作家残ってるぞ!」(一同笑
鰤/牙「ウェブ作家と主人公っぽいのが残ってます!」
孫の手「………(笑」
かすが「………どうする?(笑」
孫の手「かすがさんに任せます」
かすが「じゃあ、ランダムで」
鼠色猫「ランダム!」
鰤/牙「じゃあ、ダイスを1個振って、奇数が出たらかすがさん、偶数が出たら孫の手さんがウェブ作家ね! とうっ……(コロコロ)……はい、かすがさんウェブ作家です!」
かすが「おぉ……」
鰤/牙「で、主人公が累計1位の人ね」
孫の手「やったあ! 主人公だよぉ~!(笑」
鰤/牙「はい。では、だいたいこう……ハンドアウトを見た時点で、まあ『こんなクラスかな』っていうのが、浮かべばいいんですけど、浮かばない人はいると思います」
鼠色猫「まぁ、俺やたるとちゃんなんかはねぇ。わかりやすいけど……」
鰤/牙「例えば“電脳使い”とか“アイドル”とか、ウェブ小説家っぽいよね」
てれん「アイドルだったらブクマ数稼ぎ放題じゃん!」
鰤/牙「逆にまったく関係ない“魔剣使い”とかにして、主人公に自分を投影してるとか、そういう痛々しい設定でも大丈夫!」
てれん「うーん、何やろうかなぁ……」
孫の手「俺は高校生だからなぁ……」
レジュメに書かれたクラス一覧を眺める一同。
てれん「箒のアリナシっていうのもあるんだね」
鰤/牙「うん。箒っていうのはNWを象徴するガジェットのひとつなんだけど、クラスごとの自動取得でとれるクラスととれないクラスがある」
NWにおける“箒”とは、ウィザードの魔法科学で作られた特殊なガジェット全般のことを指す。
戦士にとっての剣であったり、銃であったり、魔法使いにとっての杖であったりする。魔剣使いのクラスが持つ“魔剣”もこの箒だ。服の形をしたものや、バイクの形をしたもの、巨大ロボットみたいなものまで存在する。
箒を弄って自分好みにカスタマイズしていくのがナイトウィザードシリーズの醍醐味のひとつだ。箒の魅力は語り始めるので止まらないので、この辺にしておく。
鰤/牙「メイキング時点で2つクラスを取れるんですが、箒を取ると簡単に戦力アップができるので、数値的な強さを求めるのであれば、どっちか片方は箒持ちのクラスにしとくのがオススメですかねー」
鼠色猫「ほうほう」
てれん「このレジュメに、魔法攻撃向けとか物理攻撃向けとかあるけど、同じ適正のあるクラスを2つ取った方が良い?」
鰤/牙「まぁそうだねぇ。数値的な強さを求めるなら、時代はやっぱり極振りですからね」
てれん「そうですねぇー……」
かすが「同じ方向でまとめた方がええっちゅうことか」
鰤/牙「そんな感じになりますね」
てれん「じゃあ、もうクラス決めていいんだね」
鰤/牙「うん。他の人と相談してクラス被らないようにしても良いし、まぁ、被り上等でやってもらっても、良いんですけど……」
孫の手「どれも結構面白そうな気がするなー……」
鼠色猫「これ、クラスは1つでも2つでも良いの?」
鰤/牙「うん。クラスは2つ取得するんだけど、同じものを被せても良い」
てれん「あ、そうなんだ! なるほど!」
かすが「へぇー……」
鼠色猫「大いなる者/大いなる者 でもいいわけか」
鰤/牙「うん。単なる神ですね」
鼠色猫「……(笑」
てれん「へぇー! 面白い面白い!」
孫の手「とりあえず筋力の欄だけを見て……」
鰤/牙「筋力バカを増やす!?」
てれん「わたしはね、アイドルにするよ……!」
鰤/牙「アイドルにする!? てれんさんプロなのに! ロンギヌスのエリートなのに!」
孫の手「ロンギヌスのアイドル!」
てれん「もうひとつはね……」(ルールブックの1ページをじっと見つめる
一同「……(笑」
鰤/牙「強化人間アイドル……」
てれん「いや、魔銃使いとかすごい楽しそうだなって思ったけど、わたしヒーラーやるよ!」
鰤/牙「回復役やる? 回復してくれる?」
てれん「うん、すごいプロっぽい……」
鼠色猫「それでファンブル振るとかやめてくれよ……」
てれん「いや、そこはアイドルの【幸運】値が生きてくる!
ファンブルというのは、何かに挑戦した際にダイス目次第で発生しうる『致命的失敗』のことを指す。
他のゲームではそうでもないのだが、ナイトウィザードシリーズは、回復行為にもファンブルが発生する。その場合回復できずに相手にダメージを負わせる可能性があり、『回復魔法でダメージ』は、このゲーム特有の名物になっている。
鼠色猫「じゃあ完全に回復特化で作るのか……」
てれん「(自信に満ちた天使のような笑顔で)そうだよ。だからみんなはもう好きなのを作りなさい」
孫の手「じゃあここは、あえてみんなで被せに行くとか……」
てれん「なんで!?」
鰤/牙「みんなアイドルかぁ……」
孫の手「じゃあ俺は魔剣使い/アイドルだな」
鰤/牙「それは新しい! その組み合わせはなかった!」
てれん「学校で凄くモテてそう!」
鰤/牙「まったくかみ合ってない……! いや、良いよ! やれよ……!」
鼠色猫「じゃあ俺は御神体そのものだから……。大いなる者/アイドルだな!」
てれん「本当に!?」
鰤/牙「本当にみんなアイドルやんの……!?」
このような感じで、ワイワイとキャラクターメイクが始まった。
かれこれ2時間! ひたすらデータとにらめっこして、ああでもないこうでもないと言いながら、苦労してキャラクターを生み出したのである! 果たしてみんなはどんなキャラクターを作ったのか!? それは次回! ……ではなく、次回の次回。
次回は『悪夢のランダムヒロイン作成チャート』。ナイトウィザードは、なんとヒロインの設定がダイスで決めることができるのだ。始まる惨劇の第一歩をお楽しみに!!