ネコの首に鈴
壁の隅っこにちょこんと空いた小さな穴、その向こうの壁の裏側の小さな部屋に四匹のネズミたちが輪になって座っていた。
名前はマーニー、ミニー、マイキーにミッチー。
輪になったネズミたちの真ん中には大きな鈴が置いてあった。
「とにかく鈴をつけなけりゃ」
マーニーが言った。
「今ならできるわ」
ミニーが言った。
「あのいまいましいネコ野郎の首に」
マイキーが言った。
「キャロットに鈴をつけなきゃ」
ミッチーが言った。
「今なら飼い主は旅行に行っちゃっていないし」
ミニーが続けた。
「今夜、キャロットが眠ってる間なら」
「だがどうする」
マーニーだ。
「鈴の音でチャロットが起きてしまってはどうにもならない」
「それは・・・」
ミニーがは口ごもった。
「なにかいい方法はないのか」
マイキーがイライラしたようにいった。
「あのネコ野郎を起こさずにすむ方法がよ」
ネズミたちは静かになった。みんな考え込むがいい方法は浮かばない。
「そうだわ」
しばらくの沈黙の後、突然ミッチーが口を開いた。
「オレンジよ」
「オレンジぃ」
マイキーが素っ頓狂な声を上げた。
「そう、オレンジよ」
ミッチーが続ける。
「鈴をオレンジの皮で何重にも包むの。きっと音は小さくなるはずだわ」
「そうか」
マーニーは合点がいったようだ。
「待っててくれ、今取ってくる」
「私も手伝うわ」
そう言ってマーニーとミニーは姿を消した。
しばらくすると、どこからかたくさんのオレンジの皮を引きずってあらわれた。
四匹は試しに鈴をオレンジの皮で包んで揺さぶってみた。
「おっ、音が小さくなった」
と感心したようにマーニー。
「でしょう」
と得意げにミッチー。
「これなら大丈夫ね」
と安心したようにミニー。
「よし、俺がつけてきてやるぜ」
と気合を入れてマイキー。
かくして、ネズミたちはネコの首に鈴をつけることができた。
「これで大丈夫だ」
ネズミたちは鈴の音がするといっせいに逃げ出すようになった。
ネコが動くと鈴が鳴る。
高い音と、低い音のふたつ。
高い音はネズミたちのつけた鈴。
低い音は飼い主のつけていた鈴。
ネコが動くと鈴が鳴る。
危険をおかし、知恵を絞って鈴をつけたネズミたちは、鈴の音がするといっせいに逃げ出した。