偽り
久しぶりの小説投稿です
おかしな点があればコメントにて
よろしくお願いします
「愛してるよ...芙美...」
「...私も」
そうして交わされる、甘いキス。
このまま時間が止まればいいのに。なんて...できるはずもないことをいつも願ってしまう。私は世界で1番馬鹿な女...。
小さい頃、私は水面に浮かぶ月を見て、月がふたつある。......そういった。
でも実際、もうひとつの月は実体なんかじゃなくて、ただの見かけの月。
私が今触れている彼も...それと同じ。
彼には婚約中の彼女がいる。
彼女は今、アメリカに留学中で、来週東京に帰ってくる。
そうしたらすぐに籍をいれるのだと、少し前に彼から告げられた。
この時間は彼女が帰ってくるまでの期間限定。
そう。私は彼女の代わりなの。
「このまま時間が止まればいいのに」
隣で彼がボソッと呟いた。
「えっ...?」
「加奈恵......」
彼の頬に伸ばそうとした手を慌てて下げる。
そうだよね...そんなわけないよね。
彼はさっき、随分とお酒を飲んでいた。
酔って彼女と私を間違えるのはいつものことなのに、なんだか今日は胸が痛い...。
「加奈恵...愛してるよ」
「私も...愛してるよ...裕太」
お願い...神様...
偽りでも、なんでもいいから
この甘くて残酷な時間を...もう少しだけ私に...。