表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

ぷろろーぐ


ぷろろーぐです。


最近、どら焼きよりシュークリームが好きになりました。


カスタード派です。


本作品は2作目です。どうぞ。



「―――分からないか?君は捨てられたんだ」


『......?良く分かんないや』



少年は、そう答えた。










時間は少し遡る。



ある病院の隔離所。エア・コントロールの無菌室にある少年が入った。少年の病状は悪く、死ぬのは高確率だと思われる。そして、その少年の両親。病状を院長が告げた時泣いていたのだが、どこかうそ臭かった。



私はこの病院の人間ではない。研究者、斉藤綾音。私は新しく作られた医療機器を使い、少年を治療して良いか。という交渉をしにきた人間だ。



表向きは最新の医療機器という事になっているが、実質は人体実験と変わらないだろう。なにせ"最新"なのだから。不慮の事故などが発生する危険性も高い。それに、まだ試作段階であって、完全では無い。



そう思考に浸っている私を、現実に引き戻したのは少年の両親が発した言葉―――。



「料金はどうなるんですか!?」



料金。自分の家族が死ぬと告げられたのに、金の心配―――。



「無菌室なんて使ったら馬鹿高いのでは!?」



少年の病状を考えるに、無菌室でなければ確実に死ぬはずなのだ。この親達は、無菌室を使わず何処を使えと?



「貴方が言っていた事を考えれば!息子の病状を伸ばして我々の金を取るつもりなのでしょう!?」



金。金。金。そういえば、院長が最初にした問答『なにでこの病院まで来ましたか?』で、両親の返答は『タクシーで来ました』父親、『家から遠かったから高かったわねぇ』母親。料金の心配。



「......くさッってるッ」


「......?」


「?」



......。

この親達はくさってる。私の様な子供もできない体質ではないだけ羨ましいのに、こいつ等は息子をどうとも思っていない。



「奥様方。息子さんの医療の件なのですが...」


「――ですから、金はッ!」


「いえ、最新医療機器を使用しようと思っているのです。それにあたって、入院などの料金は全て此方がもちますので。奥様方の了承があれば......」


「あら、料金免除ですってあなた」


「――むぅ、分かりました。それでお願いします」


「ッ」



免除があると分かった途端、了承した。普通の親なら悩むと思う。最新の医療機器。響きだけは良いが、危険も高いのは分かるだろう。そしてこの両親は、『息子が辛くなると思うから無菌室を取り消せ』という意味合いにも聞こえていた先程の言葉を『無菌室は金がかかるから嫌だ』という言葉に完全に変換した。



「ですが、院長。最新医療機器とは、人体実験とは変わらないのでは?」


「――ッ」



院長のほくほく笑顔から余裕が消えた。それもそうだろう。本当に人体実験と変わらないのだから。



「ですので、息子を人体実験に使うにあたっての交渉です」


......。

私は、その言葉をしばらく理解できないでいた。否、理解したのは、時間にしてみれば一瞬だったかもしれないが、私にはその一瞬が長く思えた。そして、理解したと同時に私の思考は停止した。



「―――」


「―――――」



院長と少年の両親が会話をしている。だが、私は『危険だから聞くな』という指令が脳を支配した。そして、ここにいれば私もこうなってしまうのではないか?という感情がうまれた。








「ということで、交渉成立ですね」


「ええ、今後ともよろしくお願いします」



両者とも微笑みながら握手を交わし、そして少年の両親は帰っていった。

















「少年――朝倉直也?」


『そーだよ、お姉さん。よろしくね』



真っ白い無菌室の部屋。数枚の分厚いガラス越しでの会話。少年は無邪気な笑顔を私に向けながら、全ての問答に答え、付き合ってくれる。



「......」


『...?どしたのお姉さん』



――本当に、この少年は。



「―――分からないか?君は捨てられたんだ」


『......?良く分かんないや』



少年は、そう答えた。

少年の顔を良くみると、泣いた跡が目の下にあった。多分――現状を理解しているのだろう。


それでも少年は、私が部屋をでるまで笑顔を見せ続けてくれるのだろう。そんな少年に一つの約束をし、私は部屋を後にした。



―――約束。



「君が死んだら、生き返らせてあげるよ」


と。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ