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相反する近親者

 非日常から日常に戻った久那スポを後にしたあたし達は……雛菊の提案で、何故だか東原さんの家に移動することになった。

 珍しく本人にも異論がない様子なので、彼女の住所を聞いてそれぞれが移動開始。

 あたしと先輩、椎葉は自転車で。

 東原さんと雛菊はタクシーで。

 ……異論なんかないよ、うん、ちっとも。

 今回の主犯(首謀者は別にいると雛菊が言うから)である二人は、今回の記憶等を完全に消し去った状態で、久那スポの隅っこに置いてきた。

 事情を聞いた方がいいではないかというあたしや先輩の意見に、雛菊が首を横に振ったからだ。

「この方も、ある意味では被害者です。そっとしておいてあげましょう」

 あたしもあまり関わりたくないタイプだったので、彼女の言葉に従うことにする。

 東原さんの自宅は、久那市の郊外、星霜学園近くの住宅街とのこと。正直、ここ(久那スポ)から自転車で30分はかかるけれど……しょうがない。諦めて3人で国道を北上する。

 自転車なので縦に並んで走行中。椎葉を先頭に、あたし、先輩と続く。

 休日なので車や人の通りも多い。そんな波をすり抜けて疾走すること10分、不意に椎葉が横道に入ったので、あたしも慌ててハンドルを切った。

 住宅が立ち並ぶ隙間の細道、あたしの知らない道を何の迷いもなく突き進む椎葉。

 車も来ていないので、あたしは少し力を入れてペダルを踏むと、彼の隣りに並び、

「椎葉、こっちでいいの?」

「おうよ。こっちの方が近いし信号も少ないし車も少ないんだってば」

 彼の横顔が自信満々なので、ひとまずついていこう。

 見慣れぬ風景の中で自転車をこぎながら、さっきの雛菊を思い出す。

 いつも飄々としていて、怪我とは無縁だと思っていたけれど……あそこまで傷を負っていたということは、相手がよっぽど彼女と実力差があるのか、雛菊を知り尽くしているのか。

 もしくは、その両方か。

「……なんといいますか、壮絶な姉妹喧嘩ね」

 ぽつりと呟いた言葉が聞こえたのか、後ろの先輩が「そうだな」と同意してくれた。


 あたしの試算で30分はかかると思っていたのだが……椎葉の的確なナビゲートによって、20分で目的地に到着した。

 閑静な住宅街の一角、重厚な門構えの前で自転車を止める椎葉。

「聞いた住所と表札ではここなんだけど……」

 あたしと先輩も足をついて自転車を止め……思わず息をのんだ。


 何だこの大きな家は。


 東原さんの家だというから豪邸だろうという予想はしていたけれど……実際にそれを目の当たりにすると、言葉を失ってしまうのが庶民というものだ。

 太い木でがっしり組まれた門は重厚で、今は固く扉を閉ざしている。脇には人がかがんで通れるだけの小さな出入り口も完備。こんなの、ドラマでしか見たことがないです!

 右上に「東原」という表札と、ここだけ違和感、カメラ付きのインターホンがある。

 門の左右から伸びている石壁は、高さが大体2メートルくらい。それぞれ50メートルくらい(目視だけど)先まで続いている。

 門に近いので中がどうなっているのか見えないけれど……これで西洋風のお城が出てきたらどうしよう。その辺の期待は裏切らないでほしいものだ。

 ひとまず先輩が代表としてチャイムを押す。

 数秒後、

「お疲れ様でした。空いていますのでお入りくださいませ」

 東原さんの声が聞こえて、あたし達を中へ誘う。

 こ、この門を開けというのか……緊張するぜ。

 あたしが門に手を置いて、ゆっくり押すと……ぎぎぎ、と、木がきしむ音を立てながら、門が左右に開いていく。

 そこから玄関まで続く飛び石、左右には松やつつじが植えられて、足音を立てないように進まなければいけない気がした。何となくだけど。

 木々のせいで、庭等がどうなっているのか見えないけれど、あまりキョロキョロするのも失礼なので、玄関を真っすぐ目指すことにする。

 気がつけばあたしが先頭になり、玄関の引き戸前へ到着。そこにあるシンプルな呼び鈴を押すと、すぐに中から足音が聞こえた。

 扉が開くと、先ほどと変わらないスタイルの東原さんが出迎えてくれた……の、だが。

 何故か彼女は玄関にある自分の靴を履いて、あたしの横から外へすり出てしまう。

「あ、あれ? 東原さん?」

 驚くあたしに振りかえった東原さんは、玄関脇にあった小道を指さし、

「こちらへ。離れでお話しましょう」

 離れってなんですか!?

 そんな質問も許してくれず、スタスタと歩く彼女についていくしかない。

 秘密通路のように木々に囲まれた小道を抜けると、小さな家が見えた。

 木造りの壁に黒い瓦屋根。丸い窓が可愛い。

 こういう場所があるから、東原さんの家を提案したんだろう。前は彼女の家に居候してたって話だし。

 入口のところで靴を脱ぎ、扉を抜けると……6畳ほどの畳の間、その中央に雛菊が正座していた。

「お疲れ様でした。ご足労、ありがとうございます」

 静かに頭を下げる様は、普段の彼女とは違う迫力がある。

「どうぞ、お座りください」

 促されるまま、円になるよう座った。

 雛菊の右隣にあたし、左隣に先輩、その隣に椎葉、その隣……要するにあたしの右隣は東原さんである。

 正座していると足が痛くなるので、あたしを含め、男性陣も最初から足を崩していた。

 それを咎めるわけでもなく……東原さんはすぐに座らず、入口の靴を整えてから、

「お飲み物は熱いものと冷たいもの、どちらがよろしいですか?」

 あたし達に聞いてくれる。

 自転車をこいでてきたので、全員迷わず……冷たいものを頼んだ。


 東原さんが出してくれた氷入りの麦茶が、恐ろしく美味しい。単純に疲れているだけじゃない、これはきっと……茶葉的なものが違うんだろうなぁ。聞いたら教えてくれるだろうか。

 換気のために、入口と窓が半分ほどあけられているので、抜けていく風が気持ちいい。

 そんなことを思っていると、先輩が雛菊に話を切り出した。

「雛菊さん、その怪我は……大丈夫なんですか?」

「はい、もう大丈夫です。明日には傷口も消えますから」

 あたし達から見れば驚異の回復力だが、雛菊にしてみれば普通なのだろうか。

 雛菊は熱い緑茶を飲んでいた。本当に好きなんだなーとしみじみ思う。

「さて皆さん、ひとまず……私が確認したこの事態の一端を、お聞きいただけますでしょうか」

 この言葉に、あたしは緊張して背筋を正した。

「先日から起こっている『繁栄者』である方々の突然変異といいますか、奇妙な事態なんですけれど……主に関わっている一人が、蓮華という『監督者』ということを確認しました。既にご存知だと思いますが、私の……私の、双子の姉でしたので、顔がよく似ています」

 少しためらいながらも、最後まで言い切った雛菊は……全員の視線を集めながら話を続ける。

「ここで皆さんに、『監督者』がどのような存在なのかお話します。何となく察していらっしゃるかとは思いますが、私も元は『繁栄者』でした。『監督者』は、この世界で徳をなした者――世界の繁栄に繋がる功績を出した存在に与えられる役職です。普通は肉体の死後、皆さんが魂と呼んでいる存在は拠り所をなくして消滅します。ただし、『監督者』になれば残り、次の転生の際も少しだけ自分の意思を刷り込ませることが出来る……まぁ、平たく言えば、『繁栄者』として善人だった人を、死んでしまった後も生前の記憶を残してこき使おうってことです」

 何だか最後、割とざっくりした説明だったけれど……。

「要するに、雛菊は『繁栄者』だった頃に善人だったってこと?」

 あたしの質問に……なぜか、彼女はゆっくりと指を横に振り、

「私は……以前、久那市で『干渉者』をしておりました。『干渉者』であることはこちら側の事情も知っているので、ほぼ自動的に『監督者』になります。だから……いずれ、皆様の中の誰かが、この久那市の『監督者』になっているかもしれませんね」

 彼女の言葉に、東原さん以外の3人が息をもらす。

「雛菊が『干渉者』!? ど、どの剣を持っていたの……?」

 あたしの質問に、雛菊はちらりと東原さんを見やり、

「今は絢芽さんが使っている『雫』です。絢芽さんの方が私よりお上手ですけれどね」

 視線を向けられた東原さんは、ゆっくり指を横に振った。

「そのようなことはありませんわ。私なんて、まだまだ若輩者ですもの」

「じゃあ、その……蓮華さん、だっけ。その人も『干渉者』だったの?」

 立て続けに質問してしまうあたし。

 その質問に、雛菊は一度頷き、続ける。

「そうです。私たちは二人でそれぞれの剣を持ち、戦っていました」

 姉妹で『干渉者』、そういう運命なんて……奇遇というか、奇跡というか。

 もともとは、同じ目標を持っていたはずなのに。

 どこで別れてしまったのだろう。どうして……こんなことになってしまったんだろう。

 そこまでいきなり切りこむ勇気がないので、聞きやすいことから聞いてみたつもりだったのだが、

「ちなみに、蓮華さんは何を使っていたの?」

 あたしの質問に、雛菊は一度呼吸を整えて、

「……『暦』です」

「へ?」

 

 『暦』

 それは、誰も知らない剣の名前。


「皆さんが使っている剣とは別に、『暦』という名前の剣が存在します。蓮華が以前使っていたものです」

「『暦』……」

 あたしは口の中で繰り返す。イメージとしてはカレンダーとか季節とか、そういうものを想像してしまう。

 と、先輩が軽く右手をあげて、

「その剣の能力は何ですか? それに、そういう剣があるということは……俺達のような『干渉者』がもう一人いるということでしょうか?」

 その質問に、雛菊はお茶を一口すすってから、

「『暦』の能力は……斬ったものの時間を進めたり、戻したりすることが出来ます。止めることも出来ます。どうするのかは、それを使う『干渉者』が決めることです。そう、悠樹さんのおっしゃるように……もう一人、『干渉者』が存在します」

 あたし達以外にも、もう一人いる。

 その事実だけで、背筋が寒くなった。

 だってそれは……雛菊の元にいない『干渉者』だ。

 あたし達の味方だとは限らない。

 そんなあたしの不安を裏付けるような言葉を紡ぐ雛菊。

「その『干渉者』が誰なのか、まだ私にも分かりません。蓮華が隠している様子なのです。だから私は先ほど、彼女に直接聞きに行きました。蓮華の気配は日に日にはっきりしている……もう、私に姿を隠す必要がないと思ってのことでしょう。その結果がこの怪我です。無様ですね」

 自分を嘲笑するように、雛菊は苦笑いを浮かべた。

「けれど、おかげで確信が持てたことがあります。皆さんが対処してくださった、手から火を出したり氷を出したりする『繁栄者』……あれは、蓮華と『干渉者』が『暦』を使って行っていることです」

「使うって、どうやって?」

 『暦』は、時間を操るものなのだから……『繁栄者』を超能力者に変えるような能力はなさそうだけど……。

 そう思っているあたしの隣で、何かに気がついた東原さんが息をのんだ。

「ま、さか……まさか、『暦』を使って、その方の時間を……!?」

 何も思い当たらないあたしは、横を向いて尋ねる。

「時間? 時間をどうするの?」

「よくお考えくださいませ。『暦』は、使用者の意思に応じて対象の時間を操作することが出来るのでしょう? でしたら……その方の時間を止めて、その方を……その、仮死状態にしてから、そこに『堕落者』を入れ込んでいる、そういうことでしょうか?」

 東原さんの言葉に、雛菊は一度だけ頷いた。


 室内に、通りぬける風の音が聞こえる。それくらいの静寂。

 全員が言葉を失う中で……あたしは、確認するように繰り返した。

「じゃ、じゃあ……言葉を選ばずに言うけど、『暦』を使ってその人の時間を止めて、そこに『堕落者』が入り込んで、今の騒ぎを起こしているってこと?」

 確かに以前、トカゲの死体に入り込んだ『堕落者』の相手をしたことがあるけれど……仮死状態だと無機物と同じで、その人が拒むこともできず、『堕落者』に入り込まれてしまうんだろうな。

 要するに……なんの関係もない人の時間を勝手に操って、利用しているってこと?

「雛菊、今までそうやって時間を止められた人は……大丈夫なの?」

「私も気になって経過を観察していますが、『堕落者』がいなくなったことで、その方本来の時間に戻っているようです。恐らく、そのように蓮華が仕組んでいるのでしょう」

「それならいいんだけど……」

「蓮華が恐らく『堕落者』まで選んでいると思います。だから、今までよりも『繁栄者』に近いのではないかと……」

 『堕落者』って選べるんだ……一体どれだけの力を持っているんだろう、蓮華さん。

「恐らくそれは、今後も続くと思われます。ただ……皆さんは、今すぐに蓮華へ立ち向かおうとはなさらいでください」

 雛菊の言葉に、椎葉が口をとがらせる。

「何だよ雛ちゃん、俺たちじゃ頼りないってこと?」

「申し訳ありませんがその通りです。それぞれの剣の力を全開放出来ていない皆様が立ち向かったとしても……返り討ちにされてしまうでしょう」

「全開放?」

 椎葉を含め、4人で首をひねる。

「皆さんが使っている剣の力は……まだ、3割程度です。その力を全て解放するための文言を剣から引き出さなければ、皆さんに蓮華と同じ舞台に立つ資格はありません」

 『颯』の力を、全て解放するための文言……。

 そんなこと言われても、当然だが今すぐには何も思い浮かばなくて。

 眉をしかめるあたしを、雛菊は笑顔で見つめる。

「香澄さんは……以前、偶然ですが使ったことがありますよね」

 何ですって!?

「えぇっ!? あたしが、いつ!?」

「ほら、椎葉さんとお二人で、大きなトカゲと戦った時ですよ」

 あたしより先に、椎葉がぽんと手を叩いて、

「おおっ! そういえばあの時の香澄ちゃん、すげー強かったよなー」

「そういえば……」

 言われると、確かにそうだった、ような……。

「でも雛菊……あたし、自分で何を言ったのか、全く覚えていないんだけど……」

「それらはいずれ、皆さんの剣が判断して、その資格があると認められた時に教えてくれるものです。蓮華の動きともう一人の『干渉者』は、私が引き続き調査と監視を続けますので……皆さんは今まで通り、『堕落者』の討伐をお願いいたします」

 そう言って、頭を下げる雛菊。

 要するに、あたし達にはレベル上げが必要で……そのためには、今まで通り、『堕落者』に立ち向かう必要がある。

「蓮華は恐らく、私が『境界』を設定しなくても事を実行するでしょう。後のことは私が全て責任を負いますので、もしも今後、今日や昨日と同じ状況になった場合でも、躊躇わずに剣を抜いてください」

 簡単なことじゃないけど、やるしかないのか。

 でも……あたしには、どうしても分からないことがある。

「ねえ雛菊、蓮華さんって……どうしてこんなことを?」

 そう、彼女の目的が全く見えてこない。単なる愉快犯なのだろうか。

 あたしの質問に、雛菊は顔を伏せて、

「正直……分かりません。蓮華は、変わってしまいましたから……」

 その目に涙が浮かんでいたことが、彼女が嘘を付いていない証拠のように思えた。


 ひとまずの話が終わってから……椎葉がぐるりと首を動かして周囲を見やり、

「しっかし……絢芽ちゃんは期待を裏切らないねー。こんな豪邸、初めて入ったよ」

 心底驚いている様子の椎葉に、東原さんは正座を崩さず、麦茶を一口すすってから、

「そうでしょうか。学園のご学友の皆様は、こんなものではございませんわよ」

「いや、星霜学園のお嬢様方と比較されてもねー……」

 まぁ、東原さんにしてみれば、学校の基準が自分の基準なのかもしれないけれど……。

「絢芽ちゃんには兄弟っているの?」

「年の離れた兄が一人いますわ。今は結婚して、この家にはいませんけれど」

「へー」

 思いのほか素直に答えてくれた東原さんに、椎葉は目を丸くして相槌をうつ。

 その反応が気に入らなかったのか、途端に彼女の目が鋭くなった。

「何か不都合でもありますか?」

「いいや、絢芽ちゃんが俺からの質問とはいえ、自分の話をしてくれるなんて珍しいなーと思っただけだよ。前に聞いたときは取りつく島もなかったのにさー」

「あら、そうでしたかしら?」

「そうだったって! まだ香澄ちゃんがいない頃、新入りの俺は頑張ってお近づきになろうと努力をしていたわけなのよ。その時に同じこと聞いたけど、あなたには関係ありませんってバッサリだったんだからさー……少しはハートブレイクだったってわけ」

「そうでしたかしら。ごめんなさい、全く覚えていませんわ」

 笑顔で切り捨てる東原さん。椎葉のむくれた表情など見ようともしていない。

 この二人は……というか、東原さんは相変わらずだな。

 綾小路さんがあんなに心配してくれていること、本当に知っているんだろうか。

 口を出したい衝動に駆られる自分を制した。これは……少なくとも、今のあたしが介入すると、東原さんはもっと心を閉ざしてしまう気がする。

 彼女は『干渉者』であることの責任感が誰よりも強い。学園内の評価に関わっても構わないほどに。

 それはそれでいいと思うけれど……うーむ、もう少し器用に出来そうな気がするんだけどな、東原さんなら。

 ただこれは、あたしが一方的にそう思うだけだ。あたしはまだ、彼女との距離が遠いから。

 だったら……近づく努力はしなきゃ。何もしないままで決めつけるのは良くない! そうに決まってる!

 あたしの中ではすぐにそのための行動が決まった。それは、

「よし決めた! あたしは今日から、東原さんのことを絢芽って呼ぶ!」

「はい?」

 いきなりの宣言に、隣の東原さん――もとい絢芽が、非常に冷たい視線を向ける。

 負けられない! 冷笑さえ浮かべる彼女に、あたしは右手を握りしめて、

「だって、学年も同じだし、こうやってちょくちょく顔を合わせてるんだから……もうちょっと親しげな感じで呼んでもいいじゃない!」

「はあ……理由がよく分かりませんが……」

「いいの! あたしの自己満足なんだし……絢芽は今まで通りでいいよ! 勿論下の名前でもいいけど!」

 期待を込めるあたしへ、彼女は瞬時に綺麗な笑顔に変えて、

「分かりました。勝手になさってください、樋口さん」

 ……はーい。

 やはり、彼女はそう簡単に心の扉を開いてくれないけれど……そんなやり取りを見ていた雛菊が笑っていたから、今はそれでいいと思った。


 蓮華さんの目的も、もう一人の『干渉者』が誰なのかも分からないけれど……今、あたし達がやらなければならないことがはっきりした。

 『颯』の力を完全に引き出すための文言を手に入れること。

 そのためには、もうしばらく……非日常を日常に戻す手伝いをしようと思う。

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