彼と歩いていると…
今日は学校の事情で。午前授業だけだったので、私は彼は学校を後にした。
「うわ、暑いね」
太陽の眩しさに目を細め、サングラスが欲しいなと思う、
太陽までの距離は長いはずなのに、何でこんなにも陽が伸びているんだと、不思議だった。
「何か飲み物でも買おうぜ」
彼ははりつく髪を払い、私を優しげに見つめてくる。
この顔は私だけが見られるものだと、贅沢に思っていた。
「何、買う?」
「うーん、サイダー系がいいな」
「私はグレープ味がいいかも。ぶどうが好きだから」
そう言うと、彼がぷっと笑う。
「もう、何!?」
私が腰に手を当て、怒ったふりをすると、彼は手を上げ、「悪い、悪い」と言ってくる。
「うさぎさんはぶどうよりも、人参じゃないのか?」
「人参!? もう何でうさぎなの!? 可愛いけどさ…」
頰を赤くし、私はぷうと頰を膨らませる。
「じゃあ、ライオンさんは、どうなの? サイダー系って、何かワイルドな感じがするんだけど」
「俺はいいの。百獣の王だから」
「何それ」
2人でわけの分からないやり取りをしていると、前からバイクがやって来た。
「あれ。郵便局だ」
特徴のある赤いバイク。
乗っているのは、30代くらいだろうか。
ヒョウのように顔が整っており、もてそうな感じの男性だった。
バイクを停めると、家のポストに入れていく。
「かっこいい!!」
「え…。お前、俺は…」
「もちろん、かっこいいわよ。そうじゃなくて、身のこなしというか、慣れた感じがいいのよね」
私はそう言うと、「あ」と声を上げる。
「うちのところにも、手紙が届いているかもしれない」
「デザイン切手か?」
「そう!! そろそろ返って来てもいいんだけど。来るか来ないかの時期が、待ち遠しいのよね」
私の力説に、彼は「ふうん」と合いの手を入れる。
男性がバイクにまたがったので、私は勇気を出して声をかける。
「あの!!」
「はい?」
何で声をけけたんだろうと思いつつ、一生懸命、言葉を探す。
「手紙を出したんですけど、返ってくるのが楽しみで…。その、いつも届けてくれて、ありがとうございます」
自分の家に届ける人は別だと思ったが、男性はにこやかに対応してくれる。
「それはありがとうございます。良かったら、これからも手紙を出してくださいね」
「は、はい!! 憧れの職業なんです!」
つい口が滑ってしまったが、男性ははにかむ。
「頑張って。期待しているよ」
そう言うと、彼を見て、目を細める。
「こっちは彼氏?」
「そうです!!」
ライオン対ヒョウの戦いに、私は興奮する。
しかしライオンは普通であり、質問する。
「どんな時が嬉しくて、どんな時が苦労しますか?」
「そうだな…」
男性は腕を組むと、
「郵便物を待ってくれて、礼を言われる時が嬉しくて、辛いのは雨や雪の時かな。天気が悪くても、俺達は休めないから」
「なるほど。ありがとうございます」
「どうも」
ライオンとヒョウは互いに頭を下げると、バイクのエンジンをかける。
「将来、何になりたいか、よく考えるといいよ。俺も散々、悩んだし。青春、たくさんしなよ」
そう言うと、手を上げ、行ってしまう。
私は「ああ」と残念がったが、引き止める理由がないので、ふうと息を吐く。
「お前、あの人がいなくなって淋しいのか?」
「え? どういうこと」
「別に」
ふんと顔をそらした彼は、つまらなさそうに石を蹴る。
私は鈍感なところがあるので、彼の言葉が意味不明だった。
頭がパーマになりそうなくらい、陽を浴びているので、私はハンカチで頭を隠す。
「行こう!! 涼しいところなら、どこでもいい」
「そうだな、行くか」
彼の手を握ると、機嫌が直ったらしく、2人は駆け出したのだった。




